薬と一緒に飲食してはいけないもの
働き盛りの五十代で亡くなってしまった知人がいました。 とてもパワフルで仕事ができる優秀な方でしたが、一方で根を詰める仕事人間であり、「いつ寝ているのか?」と心配するほどバリバリ働いていたのを思い出します。
この人は体力があり、頑健な体を持っていましたが、風邪を引きやすいというか、〈風邪などで仕事を休みたくない〉という意識が強かったからでしょうか、仕事場に「風邪薬と栄養ドリンク」をいつもセットで置いていました。
「その組み合わせは、あまり良くないですよ」と何度か注意しましたが、「薬局の人は奨めているんだ、素人のお前に何が分かる」とでも思っていたのでしょう、まったく耳を貸してくれませんでした。
こういう「頑固な思い込み」をしている人が世の中には数多く存在しています。
栄養剤にはアルコールやカフェイン・甘味料・香料・着色料など添加物が多く含まれておりますし、パワフルにする、滋養強壮になる、という類の宣伝文句にも、科学的根拠がまったくありません。作用としては「アメ玉1個」とほとんど何も変わりなく、アメ玉と同じく沢山とると糖分の摂り過ぎになるだけです。
少々の薬効成分があったところで、そんなものは肝臓によって完全に「無効化」され、ただの砂糖水になり、結果的にカロリー過剰になってしまうだけのことです。
ましてや、ガラパゴス的(アレにもコレにも効果がありますよ)に、色々な成分がごちゃ混ぜになっている市販の風邪薬と同時に飲むなど考えられない事です。
薬の成分というのは、基本的に「毒」ですが、毒性を発揮しないように量でコントロールしているだけのこと。毒性が強いほど効きめのある薬になります。
成分の種類が多いと、「何かと反応して毒に戻る可能性」が高まります。ですので、薬を服用するときは飲食しない方が基本的に安全なのです。食べ物にどのような微量成分が含まれているかは、たとえ処方した医者でさえも分からないからです。患者の食事内容まで予測することは出来ませんからね。
先ほど書いたように薬の成分は毒ですので、市販の風邪薬でも、量を間違えると死ぬことさえあります。極めて微量に制限していた毒性成分が過剰になった事で、本来の姿を発揮するからです。
量を厳守しても、「反応」というリスクもあります。 薬品の殆どは化学合成物ですので、特定の成分と化学反応を引き起こす可能性が常にあります。人にはDNAに従った各人各様の構造的・生理的個性がありますし、複雑な体内での代謝との関連性(反応)をすべて予想することはできません。ましてや「飲食物」を同時に体内に入れると、その複雑な反応は「神のみぞ知る」です。
自分は、「世の中には薬によって重篤な病、たとえばリウマチやガンなどになっている人がかなりいる筈だ」と思っています。そういう人の多くが「薬は体を良くするもの」と思い込んでいるというか、依存しているというか、ある種の宗教的な感覚で多用していて、それで安心感を得ているのではないかと思えるのです。こうなるとドリンカーに近いでしょう。
薬は基本的に飲まない方が安全であり、仕方なく飲む場合でも危険物を扱うような細やかな注意が必要。そういう捉え方が正しいのではないでしょうか。
現代の飲食物は添加物だらけですから、リスクを低減させようと思うなら、できるかぎり薬と食事はミックスさせない方がよいと思います。
食べ物はだいたい2時間くらい胃の中に残っています。消化しづらい食品はおよそ4時間ほど。この時間を目安にして、薬の服用時間を考えるとよろしいでしょう。