【唐辛子の効能】【抗酸化とは何か】

  

板前(料理人)までもが、「トウガラシは痩せますよ!」と言い出す風潮

唐辛子の辛味は、「カプサイシン」「ジヒドロカプサイシン」という物質によるものです。
カプサイシンはアルカロイドの一種。

トウガラシには抗菌、殺菌作用があり、虫除けなどにも使用されています。独特の香りと強烈な刺激で、胃液の分泌を促し消化促進や食欲増進にも貢献します。

しかし、現在当たり前のように言われている「肥満の予防」はどうでしょうか。アドレナリンの分泌を促し、熱エネルギー変換、新陳代謝が活性、それで脂肪の分解を促して痩せる、まあそういう理屈のようです。

「食欲を増進させながら肥満の予防にも役だつ」というわけですが、これは希望的観測にしかすぎないように思います。

食欲増進で肥満しないという事は、ないですね。
食べる分を運動で消費するなら分かりますが、そこはあまり言われない。

「食べて痩せる」という言葉はとても魅力的ですが、少し冷静に考えればありえないことです。

それでも、なぜだか料理人までもがお客に向かって、「トウガラシはダイエットに効果がありますから」とか言っているのをよく見かけます。

いちど尋ねてみたことがあります。
「その話ってどこで聞いたの?」

「常識じゃないですか」
「テレビでもいってますし、本にも書いてありますよ」
「テレビがウソなんて言わないでしょう」

やれやれですな。
どうしてテレビとかで知った話を、こういうところで確認しようとしないのか。
https://hfnet.nih.go.jp/
https://www.caa.go.jp/foods/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/index.html
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/nikkashi/-char/ja/
https://www.kokusen.go.jp/

そもそも、何かを食べることでダイエットできるという思考回路が分かりません。

食べれば肥るし、食べなければ痩せる。
これは動かせないでしょう。

食事を制限しないで痩せられる方法は2つだけ。
「外科手術でカラダの一部を摘出」
「悪いものを食べて消化器官を壊す」
なにかの病気になった人は最終的に食が細くなりますので除外して、この2つしかないと思いますが。

最新の研究によると、脂肪細胞を減らす働きがある食品が見つかったりしていますけども、だからと言ってこれをバクバク食べると痩せますということにはなりません。

それを摂取して安心し、肉やラーメンや甘いものを食ってりゃまったくの無意味。追いつくわけがなく、最終的に脂肪が勝るのは目に見えています。

そして、手術で胃や脂肪を切除しても、食べればすぐ元に戻りますように、そういう「痩せ薬の類」も、すぐに「自分独自のホメオスタシス」によって巻き戻されることになりましょう。確実にリバウンドします。

稀に、いくら食べても肥らない痩せた人がおりますが、こういう方は無酸症である場合が多く、ぺプシンがうまく機能しておらず、脂肪や炭水化物の多くが消化されていないから肥らないわけです。これは潰瘍を招く胃酸過多よりも危ないですね。潰瘍にはならないけれど、胃がんになる可能性が高いからです。

話は続きます。
ヤマイモのネバネバの成分は主に「ムチン」という粘液糖タンパク質によるもので、これは山芋だけでじゃなくあらゆる動植物にある粘性物の成分でもあります。

ムチンにかぎらずネバネバ成分の多くは食物繊維であるわけですから、カラダに好ましい影響を与えます。まぁ「ネバネバは良い」という俗説は外れていないということです。

しかし、ヤマイモのネバネバはムチンだけじゃなく【デオスコラン】というぬめり成分もあるという話です。

で、このデオスコランですが、血糖値を下げる働きがあるそうです。

これがもう常識のように当たり前に言われています。
嘘だと思うなら「デオスコラン」で検索してみてください。

どこもかしこも、本屋にある本にも、「デオスコランは血糖値を下げる効果があるといわれます」

しかしですな、「あるといわれます」はいいが、誰が言っているのか、それが分からないのです。

どこの研究機関の誰がそれを分離し、どんな実証研究をしたのか。血糖値含め、ヒト生体への実験報告はどこにあるのか。

欧米のサイトを検索してみても不明。
どうなっておるんでしょうか。

なぜ抗酸化物質が必要か

今ではもう「ポリフェノール 」という言葉を聞いたことがないという人はいないと思います。
もともとは赤ワインから発見された色素の成分ですけども、現在は数え切れないほどのポルフェノール類が見つかっています。

なぜ世の中はポリフェノール 、ポリフェノール と五月蝿いんでしょうか? 
それはポリフェノール に強い抗酸化作用があるからです。
体の中の悪い活性酸素を除去してくれますよ、というわけです。

さて、ではその活性酸素がなんで悪いのか、それをご存知でしょうか。
活性酸素とかフリーラジカルっていったいナンでしょう。

ためしに幼なじみの友人である「ハゲ」に質問してみました。
「活性酸素って何か分かる?」

「あれだろ、カラダが錆びるヤツだろ」
「でもさ、なんでカラダがさびるの?」

ま、よくわかっておらんようです(笑)

ハゲと言っても有名大学を出て大手私鉄で幹部になっている男ですからバカではありません。体内活性酸素を知っている必要がある職業の人以外は、普通はだいたいこのような感じでしょうな。

これを詳しく説明するのは非常に面倒ですし、正直簡単に説明できるようなモノではありません。
それでもメチャクチャ簡単に説明すると以下のようになります。

・原子には電子がとりまいている
・電子は隣の電子と仲良くペアを組んでいる
・ところがペアを組めない仲間はずれの電子もいる
・独り者の電子はペアの相手を欲しがって焦っている
・この彼女欲しい電子君が「フリーラジカル」

・フリーラジカルの中には性格が悪く強盗になる者がいる
・人様(電子)の彼女を無理矢理にでも奪って彼女にしようとするタチの悪い強盗電子
・この強盗電子のほとんどが酸素から発生するので「酸素ラジカル」、つまり【活性酸素】

・何がタチが悪いかといって、チンピラみたいにそこら中の分子を襲って、襲った相手もフリーラジカルにしてしまう。マトリックスのエージェント・スミスですな

・このチンピラというかエージェント・スミスは、なぜか「不飽和脂肪酸」が大好きで、不飽和脂肪酸とばかりひっつきたがる

・とても大切な働きをしている良い不飽和脂肪酸ですが、スミスに襲われると悪いエージェントに変身してしまう。映画と同じですね

・どう悪くなるかというと、「過酸化脂質」になってしまうのです

・不飽和脂肪酸は必須脂肪酸でもありカラダのあちこちに存在し、とくに細胞の膜にたくさんいる

・過酸化脂質が伝染病のように広がるとどうなるか
(まぁこれがサビた状態と言えばいえるわけですけども)

・細胞の防衛機構が破壊され、体内をウロウロしている悪い連中が乗り込んでくるんですな。過酸化脂質が城壁を壊してくれた細胞の中に入ってくる

・タチの悪いエージェント・スミスは本丸、つまり細胞の核を攻撃してきます

・そこには遺伝子がいます

・ここをズタズタにされてしまうと、【ガン】になってしまうわけです

・それに、細胞の再生も阻害され、無駄に細胞が壊死することで老化が進行する

活性酸素がなぜ悪玉なのかお分かり頂けたでしょうか。
しかし活性酸素といいましても元は酸素ですから、あたりまえのようにカラダに入ってくるし、いくらかの活性酸素は必ず存在するわけです。

それでも多くの場合平気でいられるのは、カラダに強力な防衛機構があるからです。
その筆頭がSOD(Superoxide dismutase)という酵素。

これが活性酸素を撃退します。
エージェントを撃破するネオですな。

ところが、酵素というのは、ビタミンやミネラルがないと機能が落ちてしまいます。酵素を助けている補酵素というのが不足して守りが脆弱になるのです。

現代人は、アブラや砂糖などを摂り過ぎるあまりビタミン・ミネラルを不足させてしまう傾向があります。

SODだけでは活性酸素からカラダを守れない。
そこで抗酸化物質が注目されたわけです。

その代表選手がポリフェノール というあんばい。

記憶するのが不可能なほど沢山あるポリフェノール類ですが、抗酸化の力で注目されているのが「プロアントシアニジン」

プロアントシアニジンはブドウ種子エキスともいうんですが、スイスの会社が「フランス海岸松」から抽出した【ピクノジェノール】というエキスの主成分でもありますね。

ピクノジェノールが活性酸素を消去する能力が凄いと評判になり、医薬品として認可している国もあります。 日本ではどういうわけか美容系とかサプリメントとかでしか見かけませんで、しかも成分の割合がちょっとオカシイのが多いようです。

一説によれば、ピクノジェノールの抗酸化作用は、ビタミンのDとEとC、β-カロテン、これらの何十倍という話ですから、これが本当なら驚くべきものでしょう。

しかし、抗酸化作用のあるポリフェノールは、それこそ腐るほどありましてね、身近なところでミカンのヘスペリジンとかも強力だし、ポリフェノールではありませんが赤貝に含まれるグルタチオンなんて奴は、細胞の老化・ガン化防止の能力が認めれられ、医薬品の抗癌剤にまでなっています。
(アカガイの他、レバー、ブロッコリー、ほうれん草などにも含まれます。製剤は医薬品だけでサプリの販売は禁止)

ようするに、眼の色を変える必要はないのではないかと。
普通にいろいろな自然食材を食べていればポリフェノールがどうとかいう話なんぞ、どうでもいいんじゃないでしょうかねえ。

「良薬は口に苦し」といいますが、「良薬は毒と隣り合わせ」というのも真理です。
効果が大きければ大きいほどリスクとの境目が薄くなる。
これは化学やっている人はみんなご存知ですよ。

「毒だから薬としての効果もある」ってことでね。

カネボウの美白ではありませんが、効能のウラには常にリスクがあるってことですよ。

美白がいいなら紫外線を避けて、ビタミンCをとればいい。
海で日焼けなんぞ自殺と同じことをして美肌もなにもないでしょうに。

カプサイシンもエキスだけを摂取すると危険があるんですよ。
どう危険かは調べればすぐに分かります。

おいらは、唐辛子についちゃ「メリット3のデメリット7」だと思っています。アレを口から体内に入れて、何らかの健康効果になるとか全然思えませんね。

料理としての伝統的な使い方は「香りをちょっと移してやる」でして、これが正しいと思っています。
直に口に入れるような食材じゃないでしょう、料理の常識からいって。

変なことになったのは、バカのような「激辛ブーム」あたりからじゃないでしょうか。
正常とは思えませんな。
それを「ダイエット効果がある」とか。

料理人たるもの、せめてその根拠を調べてから、お客さんに言うべきでしょう。

「朝鮮人はキムチを食べているから焼き肉文化でも痩せている」
これは、「沖縄の人が長寿なのは豚肉をよく食べるから」と同じような大間違いですな。

そりゃ確かに北朝鮮をみると皆痩せていますが、それは「食糧がないから」だってのはキム家独裁三世代のメタボ体系で分かるでしょうに。痩せてんのは、キム家以外の人達。韓国も同じでね、江南あたりの成金たちはメタボばかりですよ。

そして沖縄の長寿者(90歳越え)の方々が育ち盛りの頃、豚肉はほとんど食べていませんし(食事は殆ど甘藷と青野菜、海産物)、戦後になって豚肉・牛肉を食べるようになった世代は急速に平均寿命を下げています。

日本だってね、激辛ラーメン(笑)で痩せた人がいるっていうなら教えてください。
見たことも聞いたこともありませんので。
あれは逆に肥るはずですよ。

ほかのダイエットも同じですよ。
アブラギトギト食事・甘いもの大好きでは、何をやってもだめです。

大豆とか鳥とかの良質タンパク質を食べ、野菜を増やし、油っ気と砂糖を控え、少し運動していれば痩せます。

そういう面倒が嫌なら、三食をやめて二食か一食にするしかない。

きちんと三食とらないと良くないといわれますが、そんなもんは無視して結構。
栄養学的に正しくてもある種のキレイ事ですからね。現実を無視したペーパー理論。

まずは食から遠ざかり、胃を小さくして「大食い」に興味をなくして行かないと何も始まりません。

減食以外の方法でダイエットすれば、「絶対に」リバウンドします。

途切れることなくあれこれウルサイくらいダイエット法が出てきますけども、どんな方法であれ、成功させるには結局「食べるぶんを減らす」しかないのです。

「食べてないのに肥るんですけど」
これは定番のセリフですけども、
「食べてない」は100%ウソです(笑)
食事しなくても甘い飲み物や菓子を食べていたら意味がない、どころか、食事で肥るよりも悪い。

栄養学もヤヤコシイし、化学はもっと難しいもんです。
だから「正しい知識をもってフードファディズムに乗せられないようにしましょう」と言ってもなかなか大変です。

なにしろ正確なことは専門の学者でさえも分かっていないことが多いくらいですから、我々に白黒がハッキリ判別できるはずもない。

その隙間に、「白いものを黒い」と言って、商売しようとする輩が跋扈することになるわけで、こうしたことを見分けるのはなかなかに難しい。

そういう時のために公的な機関や消費者相談の窓口があるわけですし、もっと活用すべきでしょうね。

できれば自分自身を納得させられるまで調べるのがよい。
それでも騙されるなら、あきらめもつくかも知れませんしね。


料理人の場合はそれでは済まない。
店の看板背負ってお客さんと対峙しているという自覚が必要です。ウラでの仲間同士の内輪話なら、たいした問題ではないですが、お客と向かい合うときは緊張感というものを失くしてはいけません。

お客さんにヘタなことを言うと、料理人としての信頼性を失うし、店の信用まで台無しにしてしまうのです。

いまどきのテレビ番組やグルメコーナーに並ぶ本など、ウラも取っていないデタラメな内容が非常に多いのですよ。ましてやネット情報など大半はコピーしただけのシロモノ。

そんなモンを鵜呑みにする前に、信頼のできる情報源で確認する。そういう習慣をつけましょう。

お客さんを満足させるには、料理はもちろんですが、「誠実」を常に忘れてはいけないということだと思います。


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