細巻き寿司の作り方・巻き方・切り方

  

細巻の巻き方

細巻き寿司

細巻きのコツを詳細に説明します
細巻 基本の巻き方 ↓

失敗するポイント
細巻はなぜパンク(破裂)するのか ↓

いつでも巻きシンを中央にするコツ
細巻の具が中央にこない理由 鉄火巻で解説 ↓

ひも状の煮物を巻くコツ
カンピョウ巻を上手に巻くには ↓

柔らかい具を巻くコツ
ネギトロ巻とイクラ・ウニ・カニサラダの細巻き ↓



 細巻き寿司を巻くのはちょっと難しく感じるかも知れません。まず最初の段階ではすし飯が手のひらに引っ付いてしまうし、すし海苔に広げようとすればノリがズレたり破けたり、巻けたと思ったら裏側が破けている。どうにか形になったと思うと切ってみたら具が歪んでいたり破裂していたり。

細巻きがうまく巻けないのは、ちゃんと理由があるんですよ。

その理由とは決して難しいことではなく、単純なものです。それが分かれば細巻きを失敗なく誰でも巻けるようになります。

初めて挑戦する方にも、本職の寿司職人さんにも、できるだけ理解しやすいように分かりやすく説明して行きます。

細巻 基本の巻き方

(1)細巻用の海苔を用意する

巻物用の海苔は規格が決まっていまして、太巻きなどを巻く全型は横幅が180mmほどになっています。これを半分に切った、縦が100mmチョイ横が180mmの海苔が細巻用になっています。

この細巻海苔は、手巻き寿司にも使えますから最近はどこの店でも売られていて、ご近所のスーパーなどで手に入ります。もし無くても、普通の太巻き用海苔を半分にカットすれば大丈夫ですよ。

寿司海苔の話

巻き簾

細巻き専用の短いマキスもありますが、これは短く作られていますので慣れないと逆に使い難いです。普通のマキスで充分ですよ。

巻きスはツルツル側をむけて、編糸の結び目が上になるようにします。※1
マキスの置き方

マキスの上に半切の細巻海苔を置きます。海苔を下げてマキスの底辺とぴっちり合わせるのが基本ですが、

慣れない方は少し上にあげた方が巻きやすくなります。

海苔はザラザラした面が裏でツルツルしたツヤのある面が表です。※2
細巻きの海苔
巻き寿司を巻くときは、ザラザラした面を上に向けて、そこにすし飯をのせます。

(2)すし飯を海苔に広げる

まな板等の隣にすし飯を入れた容器を置き、まな板とすし飯容器の間に水を入れた小さな容器を置きましょう。(※これは「打ち水」と言って寿司を作るときの大切なアイテムになります。これに少し酢を入れて酢水にしたものを「手酢」といいます。)

流水でよく手を洗い、手のひらに湿り気を与え、同時に手の温度を下げましょう。

清潔なサラシか布巾を用意し、布巾と一緒に手を洗います。布巾を固く絞って手から余分な水気をふき取ります。これを数回繰り返すと手の温度が下がってすし飯をまとめやすくなります。海苔をつかみますから、手が濡れたままではいけませんので、布巾をうまく使ってください。

細巻き一本分のすし飯は約60gです。やや大き目だと80gくらい。すし飯の量が多いと失敗しやすいので、慣れないうちは少なめにするのがコツです。見当がつかない場合は最初に計量して感じをつかみましょう。80gを超えるとパンク(破裂)しやすいので、それ以下に。

① 両手を使ってすし飯を取り、円筒型に丸めて片方の手に移す

すし飯を取る前に「打ち水」に指先を入れて手を濡らすと、ご飯粒がべたべた付かないのでまとめやすくなります。濡れすぎたと感じたら布巾を使います。

② すし飯を横に伸ばす

上に1.5cmほどの空白を空けて(のりしろ)すし飯を置きます。

もう片方の指を上手に使って補助しましょう
(粘土細工のイメージです)








③すし飯を全面に広げる

下のような感じで左から右にすし飯を広げる






全体を整えましょう

(3)細巻きを巻く

① ワサビをつける

これはカッパ巻き(胡瓜巻き)ですのでワサビをつけます。ワサビがいらない場合はここを省略してください。

ワサビは中指の先で塗るようにつけます

右側からすし飯の中央を一直線に、中指をグルリと半回転させながら塗る




② 具を置く

巻きダネ(巻き芯)をワサビの上にのせる

※キュウリは縦から四等分に切り、種などを切り取ってあります。イボが鋭いキュウリでしたら、切る前に皮を塩で揉んでおきましょう。

③ マキスで巻き込む

下のように指で具を押さえて動かないようにします

中指などで具を押さえたまま、親指でマキスの下をめくるように持ち上げて、手前から巻き始めます。

※目線をすし飯の上【海苔の空白部分(のりしろ)とすし飯の上辺】に向けて、そこを狙って巻く





ギュッと押さえて形を作り、ここでいったん手を止めます

④ マキスを締めて細巻の形を作る

マキスの下を持ち、そのまま向こう側引っ張るようにして巻き寿司を転がして(半回転)ノリシロを閉じる

持ち上げるような感じで締めて四角形にする

裏側を見て、海苔の端が中央で閉じていれば成功です。閉じてなかったりパンクしていたりするのは、③のとき、閉じ目がノリシロの手前すぎるか向こうへオーバーしていて、いったん止める位置が間違っているからです。ここさえ正確なら、細巻きは上手に巻けますよ。

ここまでの流れです

細巻きの切り方

普通ネタの細巻き(鉄火・カッパなど)は、六個に切り分けます。これを「ロッカン落とし」と言います。煮物のカンピョウなどは四個にすることがありますが、これは汁気があるからで、折詰弁当に盛るときに寝かせていた名残です(カンピョウ巻きの章で説明します)。

今は大概6個に切りますね。まず中央を切って二つにして並べ、それを二度包丁して六等分にします。動画をご覧ください。

画像と解説だけでは分かりにくかった方は、ゆっくり巻いている動画が「カッパの花巻き」のページにありますのでご覧になってみて下さい。

カッパ巻きは、具にするキュウリが安定しているため細工巻きなどに応用しやすいものです。カッパの細巻きからでも、そのまますぐに出来る飾り巻きがあり、「花巻き」と言います。

花巻き 巻き方

細巻きの具が中央にこない理由

鉄火巻き

鉄火巻きの巻き方で、巻き物の具が中心に決まらないわけを説明します。

職業が板前でもありますし、よく寿司屋を回っています。寿司が好きなんでしょうね。寿司屋も数多くございますが、細巻きがきちんと巻けていない処が多いのが少々気になります。

芯(ネタ)がずれているのはまだ可愛いもんで、酷いのはパンクしたのを平気でお客に出しちまう。べつに落ちついて巻けばちゃんと出来るんでしょうが、気が急いたりすると上手くいかないのかも知れませんね。

でも食べる立場としては、ちゃんと代金を払ってるのだから、こんな寿司は遠慮なく突っ返すのが常道ですし、恥ずかしい仕事だってのを自覚させた方が良いと思いますね。ひいてはそれが職人の為にもなるってもんですよ。

お客様に出す商品なんですから、こんなのはちょっとアレでしょう。

鉄火の巻シンを中央に決める

なんで上手く巻けないか。それは下の算数を理解してないからだと思います。

具の一辺の幅=(すし飯の1/4)(均等な厚さ)

 

この要素の一つが崩れると失敗します。巻物は中心にした具をシャリで一周させて仕上げるものです。ですから具の四隅の幅を同一にするのは当たり前ですが、同時に厚みも同じにしなければ当然具が中心に来ません。

 

長さは下の図の様になります。
緑色の線の幅が同じでないといけません。すし飯の1/4。

長さだけじゃなく厚みも同じにします。

失敗の一番の原因はおそらく最初に「具をのせる部分をへこます」って教わるからじゃないでしょうか。たしかにこれは間違いではないんですが、上で書いた理屈から、これじゃ芯が中心にこないのがお分かりでしょう。へこませた部分は当然厚みが歪になるからです。

こうして中心をへこませるか、

あるいは向こうを高い山にして手前に谷を作りそこに具をおく。

しかし、これでしっかり芯をきめるには高度なテクニックが必要になります。普通の職人ではまず無理があると思いますよ。だいたいは歪な細巻きになるだけですね。デコボコな鉄火です。

ではどうするかと言えば、最初に書いた「均一」を意識して巻けば良いんですよ。

シャリを均一に広げ厚みも均一に

これで巻きますとこうなります。

ついでに申し上げますと鉄火巻は締め過ぎても、ゆるくてもいけません。ふんわりと、しかしカッチリ巻きましょう。鮪のオチを使うもんってイメージでもって鉄火を一段下に考えちゃいけません。

それなりのお値段をちょうだいしているはずですし、これはこれで立派なピンの商品なんです。ケチケチせずにドーンと鮪を使ってあげましょうや。

お客様も喜びますよ。

かんぴょう巻きをキレイに巻く

干瓢巻きは、「のり巻き」とも言います。昔の人は「海苔巻きください」と注文し、それで職人は普通にカンピョウ巻きを出すわけです。

うどん屋でしたらカンピョウ巻は「素うどん」に相当するかも知れません。大昔の屋台店では蕎麦にしろウドンにしろ、具が載ってない「ス麺」が普通でした。だから「うどん頂戴」「蕎麦を一杯くれ」で済むわけです。油揚げや天ぷらなど具が欲しいなら別注しなきゃいけない。

これに近いものがあるでしょうね、海苔巻きは。「のり巻き巻いてくれ」と客が言えばカンピョウ巻きを出すんです。

さすがに具なしシャリだけ巻いた「ス巻き」は出来ませんから、安価なカンピョウを巻いたんでしょう。

ところがそんな「安っぽい」カンピョウ巻きも、巻く方にとってはこれほど難しい巻き物はないんですよ。

水気のある材料を芯に埋め込む料理は数えきれない程あります。菓子でなく普通の料理でも珍しくありません。その場合外殻に凝固作用のあるものを混ぜ込むのが前提です。これは当たり前ですな。水気同士では物の形にならないからです。

ところが寿司では凝固材など使えません。そしてカンピョウは煮物、つまり水物です。シャリが含む水分量から「水と水」と言っていい。

水気が多いだけでなく、カンピョウは紐のようなモンでキュウリなどのようにきちんとした形をしていません。こんな物を巻いてもサマにならないのが普通です。ですからキレイなカンピョウ巻きというのをなかなか見たことがありません。

皆さんはどうですか?よく見ないで食べているかも知れませんが、よく見ると「なんとなく・・」ではないでしょうか。(最近は細巻ロボットがありますので、なんとも言えませんが、人が巻くとキレイに仕上げるのは大変難しいですよ)

かんぴょう巻きを四個に切り分ける理由

出前やテイクアウトで寿司盛りを頼むと、かんぴょう巻きだけ四個切りにしている事に気づくかも知れません。

「鉄火やカッパは六個に切っているのに何故カンピョウだけ四個切りなの」

煮物は4ヶ切り、タネ物は6ヶ切り

これは折箱詰めに都合が良いからです。

鉄火巻きやきゅうり巻きは、縦に並べて切り口を見せますが(その方が彩り良い)、干瓢巻きは煮物であるカンピョウから汁がでますので立てることができません。

敷き笹と関所と化粧笹

八寸の折箱に巻物を詰める場合、敷笹を置いてその上に六切にした細巻を切断面を上に向けて詰め、その隣には切断面を横に向けて四切の海苔巻を詰めます。ここには笹敷は無しで、切断面に間笹(関所)を噛まします。笹はご飯粒に当てる様に用いる訳です。海苔には当てない。最後に化粧笹をのせる。

汁が出る煮物は当然ながら横向きの四切になります。
この折詰めの配置から、六切の鉄火巻や胡瓜巻は真四角に巻いてタネが見える様に、のりを見せる姿になる「干瓢巻」は四切で丸く巻くようになりました。つまり折詰めに都合の良い形に納まったという事です。

まあこれも「昔の名残り」のようなもので、今は多様化しましたから六個切りのカンピョウ巻きもよく見るようになりました。

お客さんの好みで二等分にして出すことも

しっかりキレイな干瓢巻きを作るコツ

干瓢巻をしっかり巻く寿司職人はまだまだ少ないです。紐の様に細いからシンを決めるのが難しいうえに水気ときちゃ難しいのは分りますが、それだからこそ職人として工夫して欲しい。

工夫といっても非常に簡単なことです。

絞り上げる事で形が整い、しかも余分な汁を排除でき、芯が中心にも来るっていう一石三鳥のやり方です。

柔らかな具を細巻きする

「ネギトロ、ウニ、イクラ、それにカニサラダ」
共通点がありますね。普通は軍艦巻きにするネタであること、そして柔らかくて押さえたらすぐ潰れてしまう点です。これに納豆も加えていいでしょう。

こういう材料を巻きシンにして普通に細巻きにしましすと、具がペシャンコになってしまい、切り口を見ると一本の線というか、タネがシミのようになってしまうのです。これじゃなにを巻いてあるんだか分りもしませんね。

ネギトロ巻き

ふんわり巻いて具を潰さないようにしても、こんどは中央が決まらない。

シンが決まらないのは上の鉄火巻きで説明しましたように、すし飯を均一に広げることで解決します。シャリにネタの四倍の広がりを持たせ、厚みが四方同じになる様にすれば良いのです。

こういうネタの場合、できるだけ薄く広げます。

問題はこのシメの場面です。

他の細巻きと同じように〆てはいけません。豆腐を扱う様な感じでふんわりと巻き上げます。

無理に四角に巻くと必ずシンが潰れます。丸くてOK。角巻きにしてシミのような巻き物にするより断然マシです。

ネギトロがあまりにべちゃべちゃで水気が多いと、どう巻いてもサマになりませんが

こういうのは「凍ったままか、半解凍で」巻くと解決します。

イクラ巻き

イクラを細巻きにすればその意味がはっきりと分かります。イクラの粒は押せば当然ながら潰れてしまいます。通常の巻き方をすると、オレンジ色のシミになるだけです。

イクラの粒の形を完全に残して巻き上げましょう。

カニサラダ巻き

カニサラダはカニカマボコをほぐしてキュウリやだし巻き卵のみじん切りを加え、マヨネーズで和えて塩コショウしただけのものですが、若い人はこれが大好きみたいですね。回転寿司などの軍艦巻きの定番ネタ。

こういうのも上の要領で巻きます。

ウニ巻き

柔らかいタネと言えばウニ

ウニの細巻きの巻き方は極地でしょうね。イクラよりもさらに難しいです。と言うより、粒を残して寿司の細巻きにするのは不可能に近いです。

それは巻き寿司ではなくて和食の八寸の範疇になるでしょう。八寸なら粒の形を残したままの形成方法もあります。

ですが今は巻き寿司の話です。圧に耐えらないウニの粒なので潰れるのは仕方ないにしても、せめて貧弱にならぬ様にたっぷりのウニで芯を決めるようにしましょう。切断面が黄色いシミや線のようになったモンなど、何の巻き物か分かりませんので。


※1
このマキスの置き方は寿司職人の基本です
ですが、本職のこのやり方は巻き簀の自然な使い方とは言えず、無理があります。本来はマキスの構造から逆に向けるのが本当の使い方だと思います。

本職がツルツル平らな面で巻くのは角型に巻くことが多いからです。その方が直線に仕上がりますからね。
商売用はそれでいいでしょうけども、家庭向けでは明らかに反対の丸い面を上にして巻いたほうが良いです。そもそもマキスはそのように作られていますし、ノリが滑らないので非常にやりやすいのですよ。すし職人が角型に巻くのは「折箱詰め」や出前が主体だった名残りです。なので今も使いにくいツルツル面で巻くのですよ。

カドをきっちり決める必要はありませんし(多少丸く仕上がるのが普通)、家庭での巻き寿司は丸い面を上にしたマキス使いがおすすめです。
※2
大昔ですが、九州の海苔生産地を見学したおりに、生産者さんから聞いた話によりますと、ザラザラした面は本当は「表側」だそうです。これには驚きましたが、これは生産工程ではそうでも、料理に使う時はやはりザラザラ面が裏ですね。料理ではつるつる面を表にするものです。
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