エビの背ワタを取り、伸ばす
海老の外殻を剥き終えたら、まず「背ワタ」を除去します。
前のページでも書きましたように、海老という食材は傷みが早くあっという間に腐ってしまいます。しかも、腐っているのに気がつきにくいという、危ない材料でもあります。見かけのイメージとは裏腹に、食中毒を起こしやすい食べ物なのですよエビは。
そのエビの、最も傷みやすい箇所が「背ワタの周囲」になります。
(頭の部分も同様に足が早い)
ワタは雑菌が繁殖しやすく、冷凍エビの場合は、解凍した時点で「もう既に腐りかけている」と考えてもかまいません。
食べるなどは論外ですから、必ず調理前にワタを取り除きましょう。
エビ背ワタの取り方
① エビをまな板に置き、包丁で背の中央にス~っと切り込みを入れます
深さは3~5ミリくらい。エビの大きさで加減します。
この時に背ワタの真上ではなく、やや上の方を狙って包丁すると後で背ワタが出しやすくなります。
② 尾から頭側まで切り込みを入れましたら、包丁をグルッと回すような感じで使い、背ワタやその周辺の汚れをかき出します
③ 背ワタは2種類
エビは個体によって背ワタの状態が異なります。
このように黒く細いワタだけのもの
オレンジ色の大きなワタ
ワタが全然無い個体もあったりします。
これは種類が違うとかそういうことではなく、単なる個体差にすぎません。いずれにしましても、キレイに掃除しておきます。
エビチリ、グラタンなど尾を付けておく必要がない「エビを具として使う料理」の下処理はこれで終了です。
さっと水洗いして、水気をとって調理します。
塩揉みしてから洗うと丁寧ですし、臭みが気になる方は酒にしばらく浸けておくとよろしいでしょう(酒洗い)
完全に解凍されたエビは、カラをむく前(あるいは剥いた後)に指でつまんで簡単に背ワタを引っ張り出せます。ですがこの方法では大きなワタが抜けないし切れて内部に残ったりしますし、内部の汚れを除去できません。なのでプロは包丁を使います。ただし小エビなどは指だけで綺麗に抜けますので、使い分けると良いでしょう。 |
エビの伸ばし方
エビを真っ直ぐにして仕上げたい料理があります。その代表が「海老フライ」と「海老の天ぷら」ですね。
海老はその名前(漢字)のごとく、背が曲がっているのが特徴であり、少し加熱しただけで曲がった状態のまま固まってしまいます。
イカと同じように強力な繊維によってこうなるわけですから、やはりイカと同じように繊維を切っておけば、加熱しても曲がらなくなります。
そこで下のように、海老の腹の部分に包丁で切り込みを入れて繊維を切断しておきます。
尾の方から頭側へ。4~5本の切れ目を入れます。
(切り込み数は海老のサイズで加減)
切り込みの深さは1/3くらい。こんな感じです。
普通はこれで曲がらなくなる理屈ですけども、実際に料理を作ってみますと、「切り込み程度では曲がりを防げない」のが現実です。
それだけ「曲がろうとする海老の繊維が強力」だということですね。
これを真っ直ぐに揚げようと思うなら、下のように完全に筋を破壊して伸ばしてやる必要があります。
切り込んだ腹の方をまな板につけて、海老を伸ばしながら繊維を破壊します。
この作業は、注意しないとわざわざ残しておいた尾をちょん切ってしまう可能性があります。切り込みを入れた部分からエビが切れてしまうケースも多く見られます。
微妙な力加減で指先を巧く使い、ゆっくりと全体の筋を切ります。
慣れないうちは、繊維を切ったつもりでも揚げるとエビが曲がってしまうケースも多いようです。これは、筋を破壊した気でいたけど実は破壊しきれていないのが原因。
曲がってしまった失敗例
エビフライの作り方
完全に繊維を壊そうと(断ち切ろうと)すれば力が必要で、力を込めすぎるとエビをちょん切ってしまう。ここがエビ伸ばしの難しいところです。
料理人の見習い(あるいはベテランでも)がよくやってしまうミスでもあるんですよ。
曲がってしまうミスを防ぐため、伸ばしたら確認してみましょう。
伸ばしおえたエビの背中を下にして指にのせてみます。
柔らかなヒモのようにダラリとぶら下がればOKです。
繊維の殆どが切断されているということで、これなら加熱しても曲がりません。
伸ばし終えたら、後の作業が楽になるよう並べておきましょう
あとは衣をして揚げるだけです。
手で筋を切る
このように持って、手だけで筋を切ります。
このやり方は、少しでも海老自体の味覚(特に食感)を残したいという天ぷら専門店の職人がやる方法です。
見た目は簡単そうですが、この筋切りは非常に難しく、真似をしても海老を折ってしまうだけですね。
「手に覚えさせる以外の方法はない」という職人仕事の一つです。
したがって、このやり方の説明は省略します。
あくまでも参考までに。