豆乳クリームで刺身ソース

  

刺身ソース

『豆乳クリーム』というのがけっこう前からあったんですが、かなり「無理矢理」な感じのする商品でして、一度試しに取り寄せてみたものの、それっきりで使ったことはありません。原料表示にある添加物の多さにウンザリしたからです。



大豆はミルクのように簡単にはいかんのでしょう。
「ヘルシー」とやらで豆乳に目をつけたのはいいが、分離がかなり難しい。なので様々な添加物を加えて「かっこう」をつけるしかないわけですな。本末転倒だなあ、そんな感想でした。まぁメインの用途は製菓ですし、「そういう商品」なのではあるのですけどね。

ところが、今年の春に『不二製油さん』がまったく新しいタイプの豆乳クリームを発表。高名な和食の先生も、開発段階からコレに関心をもっておられたようで、絶賛しておりますね。なんでも「ウルトラ・ソイ・セパレーション(USS製法)』とかいう新技術によるタマモノだとか。牛乳の遠心分離と似た方法らしく、豆乳を「豆乳クリーム」「低脂肪豆乳」「おから」に分離できるといいます。

本当なら、これってまさに「豆乳クリーム」でしょう。
やんわり言うと今までの奴が「ホイップクリーム」でこちらが「生クリーム」になりますな、うん。そう思いました。(真実はもっとべらんめぇ (笑)

最近は研究熱心な料理人が多くて、あっという間に予約が殺到。もとより不二製油は業務用食品を扱う会社でもあるし、なかなか現物が手に入りにくそう。

そこで大阪に居る友達に依頼しておきした。
「手に入れて送ってくんないか」

送られてきたのは牛乳の紙パックみたいなヤツでとてもシンプル。
『濃久里夢』の文字。これが商品名らしいですな。

早くもアチラコチラで様々な使われ方をしてるようで、なにしろ生クリームと同じように使えるので菓子屋さんも興味津々だし、洋食の料理人は「軽さ」を演出できるし、和食の料理人は「重さ」を加味して外国の料理に負けないリッチを出せるかも。

大豆というのは「肉の代わりがつとまる」珍しい食材。
日本的な豆腐もできる一方で、肉と脂の感覚まで出せる不思議さ。
その乳なので、かなり期待できましょう。

おいらが昔から考えているのは「向付」をフレンチやイタリアンの前菜として出すイメージです。たとえば外国の友人の店に手伝いに行きますとね、実際にそれに近いことをやっているわけですよ。

友人は板前が多いわけで、当然刺身や寿司はできるだけ「日本風」にして出すわけですが、外人さんというのは余程の日本通でもない限り、日本風であればあるほど食べづらいのです。

外人さんってのは、今でこそ和食はヘルシーだという意識を持っていますけども、本当は「日本の料理は前菜ばかりが次々に出てきてメインが無い」という感想が正直なところ。

おまけに「だしの旨味」がメインの味付けと、「動物性の脂が少ない素材」 肉が大好きな方々にとって「食べた気がしない料理」なんですよ。昔からね。

この数十年で、「肉ばかり食べて脂を摂り過ぎているのは不健康」という考えが広まったことが、海外で和食人気が定着した背景なのです。

これは反対からみますと「カルチャーによる和食であって、料理そのものの人気ではない」という見方もできるのです。たんなる流行かもしれない可能性もあるんです。

実際にはやはり「肉と脂」が大好きなんです、今でも。我々が「コメがなによりも旨い」と感じる遺伝子と同じことでしょうね。

ようするに、「刺身は前菜」にしかならないのです。
脂の薄い白身魚を造る「向付・酒肴」という概念を濃厚なチーズに代替させるのも難しい。ライスを使う寿司を「ごはん」として出すのも困難。どれもこれも「軽い前菜」にしかならない。

「ならば、刺身を前菜と割り切って出そう」
そう考えるようになる海外板前が出てきて当然です。

どう出すか
こりゃもう沢山の料理人が実際にやってるわけで、まさに百花繚乱。おいらもずいぶん作ってます。

問題はね「刺身醤油」です。
刺身はワサビ醤油がぴったり合うという観念をなかなか捨てられないのですよ我々は。

そういうこともあり、「豆乳クリーム」と聞いた途端に思い浮かんだのは「刺身ソース」でした。

上記のような理由で「和食を重くする為」に豆乳クリームを利用する方々は沢山いらっしゃることでしょうし、これから先とても面白い料理が考え出される筈です。

そのうち「和食は前菜ばかりで軽い」というガイジンさんの気持ちをひっくり返す料理も出てくる可能性もあり、とても楽しみに期待してます。

「メインの料理」の試行は若い料理人さん達に期待しつつ、ここは魚のブログでおいらは魚山人ですので、いつものようにやっぱり「刺身」です(笑)

相変わらず撮影は苦手で、モタモタしてる間に盛り付けが崩れてしまいましたが、まあどうせおいらが食べるモンですし(~_~;ゞ 勘弁してください。

豆乳クリームをアレして

ベースを作り、

ここから刺身醤油、と言うか刺身ソースですな。
それを作ります。
『濃久里夢』は生クリームと違ってマスキングが殆どありませんので、さまざま風味をつける加工が簡単です。それなりに乳化力もあり、ソースが作りやすいですね。

まろやかだし、大豆の旨味・風味もきちんと残っています。
本当にこれは幅広い使い方ができるでしょうね。

作ったソースは三種類。

赤色→南蛮(唐辛子)ソース
橙色→粉からすみソース
緑色→実山椒のソース

「つま」のわらび俵は、山椒を移香して透明と抹茶色の2色用意。
魚の肝や皮をゼラで固めた「凝らせ」などをツマにしても面白いですよ。


「お餅がツマになるの?」と思うかも知れませんが、もちろん砂糖味では刺身と合いません。ひねりのきいた香草系の香りをつけてキンキンに冷やしておきますと、刺身と交互に口に入れた時の食感に面白いものがあります。「凝らせ」も同じく口当たりが狙いですので、味をつけない方がいいでしょう。

上で添えているのは「谷中しょうが」です。
これもツマのひとつですね。
刺身のツマとは?

これはカツオのタタキ造り。


豆乳クリームを使った、
「ニンニク・タマネギの白いソース」
「ピリ辛モミジオロシの赤いソース」
「実山椒と葉葱の緑のソース」
ポン酢風味の醤油はゼラで固め、丸いプルプルの固形にしてあります。

この豆乳クリームはキリがないくらい色々と使えそうです。
そのうち一般的にも入手しやすくなると思いますので、皆さんも色々と試してみてくださいね(^^)


Comment