洋包丁を片刃にすると

  

洋包丁の刃付け

和包丁と洋包丁はどちらが研ぎやすいのかな。
そう聞かれることがあります。



和包丁は硬い鋼と軟鉄を組んで造る片刃がメインです。諸刃もありますがほとんどは片刃。片刃は切り口が鋭くなります。

洋包丁は鋼板をプレスで型抜して造ります。鍔は溶接しますがほぼ一体成型。 中子が柄の奥まできてますので、機能的です。

鋼板は炭素鋼の鋼もありますが、殆どはステンレス鋼。12%前後のクロムが入った特殊合金鋼ですね。炭素の加減によって切れ味が違ってきます。

炭素鋼を抜いた洋包丁は切れるのですが、錆が嫌われるので今はステンレスに席巻されてあまり見なくなって来ました。

洋包丁は油で焼入れしますので弾力性があります。いくらか柔らかめに仕上がります。そして、一枚抜きなので当然というか、和包丁より薄めになっています。

こうした特徴だけ考えますと「洋包丁の方が研ぎが楽」
そういうことになります。

スチール棒でこするだけで簡単に刃が出ますからね。

しかし洋包丁も砥石を使用したほうが良いです。刃の持ちがまるで違ってきます。

段刃にする意味

研ぎで重要な事は「厚み」です。

刃物は基本的に薄いほど鋭く切れます。
だが薄い刃は脆くて堅い材料は無理だし、切れなくなるのも早い。

出刃と薄刃。
柳葉と河豚曳き。
違いはブレードが厚いか薄いかです。

包丁に種類が沢山あるのは、目的によって厚みを変える必要があるからです。 それは洋包丁もまったく同じ。

しかし材料ごとに包丁を持ち変えるのも大変な話でね、あるていどの「万能性」を求められるのが自然です。そんなこともあり、最近は牛刀を使う人が増えました。

一般的に牛刀(洋包丁)は6:4か5:5の角度の両刃になっています。自然にこの角度に合わせて研いでいますと「薄め」になってきます。

自然に6:4研いだ洋包丁

薄くなると切れ味は良いが、「身離れが悪くなる」「長切れしない」というネガティブ面が出てきます。

これを調整するには意識的に「段刃」にするといいですね。

洋包丁にも「シノギ」があります。
6:4や5:5で素直に研いでますとこのシノギは徐々に消えて行くのです。普通はこれでかまいません。ブレード本体が薄くなって切れ味が良くなっていくからです。

ですが、できれば『刃先だけ薄く本体は厚い』にしたい。

こうすると厚み薄みの良い面だけ引き出し欠点を相殺できますから。なので、シノギをわざと作り出すのです。

シノギの線を出し、そこから刃先に向けて薄くする。早い話が「片刃化」ですな。「切刃」の面を持たせるわけです。

自分の仕事内容に合わせてこのシノギの位置を決めればよい。上にもってくると魚でも捌ける出刃みたいになるし、極端に下におさえれば剥き物や打物にも使えるという具合です。

問題はこの『切刃』の水平。
ここをベタに研いでいれば薄くなり総体として元と同じになってしまう。

これを解決するのが『ハマグリ刃』だという事になります。
シノギ線から刃先にかけた切刃面を切断して横から見ると『かまぼこ』のような丸みをもっている。そういう断面イメージです。これもシノギの位置はやはり各人のお好み次第。

もちろん肉眼レベルでそれがはっきり見えるほど丸ければ、全然切れない仕事にならない包丁になってしまいますから、これは微妙な曲でなければいけません。

ハマグリにするには、まず切刃中央にもう一本シノギ線を入れる感じで「二段刃」にして、そこをローリングしながら丸めていく方法が簡単です。

しかし繰り返しますが眼に見えるほどにしてはいけません。指でなぞるようにしながら切刃の曲面を確かめます。中砥を使ってジリジリと進めたほうが無難です。

刃先には注意します。ここまでローリングしては刃がなくなります。この部分を研ぐときは裏を押さえる指に気をつけて。

裏押しと併用しつつ刃先を薄くします。その薄さは自分の仕事内容と相談して決定します。3000くらいの石で仕上げに糸切り刃をつけるといいでしょう。

ハマグリの主な目的は身離れと長切れです。

で、まな板などで切れ味を試すと一瞬切れなくなった感が出ます。糸刃を入れると特にそういう感じがします。

しかし実際に材料を切ると、切れるようになっています。そしてその切れ味が通常よりも長持ちするのです。

万能性を維持するためにも、使い込んで短くなっても切っ先がコンコルドにならないように研ぎましょう。


今は水無月、今日は本格的な雨ですね。震災以降の政治等のあり方に失望や焦燥を感じてきました。できるだけ苛々を抑えるようにしてるつもりなんですが無理なようです。
最近の記事はいささか偏狭な感じが否めせんな。やれやれです。雨に濡れる紫陽花の花でもじっくり眺めるとしましょうかねぇ。


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