アイナメ
アイナメは鮎並と書きますが、他に「相嘗」「愛魚女」の字もあてます。
呼び方も地方色が多くあり、北海道でのアブラコをはじめ、アブラメ・シジュウ・ネウオ等。獲れる場所によって色が変化するものの、味に変わりはありません。池波正太郎を読む方なら、鬼の平蔵こと長谷川平蔵(鬼平犯科帳)の好物としてご存知かもしれません。
非常に優秀な魚でして、栄養価が豊富ですから「病人食」としても昔から利用されますし、白身なのに脂がのっていて食味も抜群のうえ臭みもありません。しかも旬は春から夏ですが、他の季節も味が落ちないときてる。おまけに刺身、洗いを筆頭に、どんな料理でもOK。
どんな料理にせよ、活け締め(画像首筋の部分)の方が鮮度を保てますので、野締め(言わば自然死)より活け〆の方が良いです。
活け締めアイナメ
料理なんですが、皮目の旨い魚ですから刺身にせよ加熱調理にせよ皮付きをおすすめします。刺身の場合は湯引きにしましょう。少しゴワゴワした皮ですので、強く霜をするか、もしくは焼き霜がいいかも知れません。また、皮を引いてしまっても結構です。
上の節は皮を剥いてあります
ただ加熱調理の場合、身が縮まる性質がありますので、ハモのような「骨切り」が必要になりますけども。なに難しくはありません。やってみましょう。
今日は【椀物】や【汁物】にする場合の下処理【吉野打ち】を、骨切りも含めて紹介します。
吉野葛
吉野とは、葛、又は片栗の事です。
葛の代名詞が「吉野葛」だからこの名があります。
葛の代用品として使われる片栗粉も同じように呼ぶ場合も。
葛とは、マメ科でつる性の多年草で秋の七草の一つ。
漢方の葛根湯は葛の根を干したもの【葛根(かっこん)】が原料。
その根を晒して作るのが葛粉です。
馬鈴薯澱粉が混ざっていない葛粉のみの物が「本葛」で、和菓子や和食の高級食材になります。その代表的存在が「吉野葛」
本葛は高価なので、市販のほとんどは混ぜ物です。
代用に片栗を使ってもかまいません。
アイナメの吉野打ち
さて、まずはおろし方からですが、他の魚と変わりませんので、魚のさばき方を参照して下さい。
→魚のさばき方
五枚におろしたアイナメの節。
写真の様に数ミリ幅に皮との境界まで切り込んでいきます。
それを適当な大きさにカットして下さい。
ハケを使い、丁寧に葛または片栗を打ちます(叩くとも言う)
余分な粉は叩き落とす
それを湯にさっとくぐらせます。
切り口が開きましたらOK
皮目はこんな感じに
網杓子などですくい取りますと完成。
後は椀にしたり、餡を張るなり、ソースに浮かすなり、汁にするなり、アイデアと技巧で美しい料理にして下さい。
特にこのやり方は蒸し物の下処理によいです。もちろん魚はアイナメだけではなく、ほとんどの白身魚でも応用可能です。