茹で野菜は必ず水にさらす?
青菜類はどのような料理に使うときでも下茹でするケースが多くなります。
下茹でのポイントは以下のとおり。
・大量のお湯で
・塩をひとつかみ加え
・茎の部分を先に葉は後になるように入れ
・素早く湯がいて冷水にとり、流水でさらす
これに加えて大切なことは「鍋にフタをしない」です。
こうしたやり方は何を目的にしているのか?
それは野菜の緑色、つまり「クロロフィル」を安定させるためです。
・塩にはクロロフィルを安定させる作用がある(緑が出る)
・クロロフィルは「熱」と「酸」に弱い
・野菜は加熱で酸を出す性質がある
手早く茹でて取り出すのは、
「火を通すと同時に、火を通し過ぎない」のが狙いです。
なので、温度が下がらぬ様に大量の湯を使い
温度が上がり過ぎない様に、酸を揮発させるために、フタをしないのです。
冷水にとるのも、温度の上昇を防止しクロロフィルを安定させるため。
野菜のコシを折ってカサを減少させ柔らかくする(食べやすくする)
同時に鮮やかな緑色を安定させる(止めておく)
これによって目的の料理(汁の実や炒め物の具やお浸し、酢の物などなど)に使う時に、すぐに使え、色飛びをおさえるなど、不可欠な下処理なんですね。
もうひとつ、「アクの成分を排除する」というのも目的です。
ホウレン草などのアク(シュウ酸)は水にさらすと流れ去りますので。
以上のことから、「緑をいかしたい青野菜」は通常上記の下茹でをします。
これらの例外となる野菜は、次の二種類です
(1)アクがほとんど無い
(2)水にさらすと確実に旨味が流れてしまう
「水菜」とか「三ツ葉」は、青菜であってもアクがありませんので不要。
さや付き豆の「えだまめ」や「そらまめ」は旨味が流出するので不要。
この1と2は、茹でた後そのまま盆ザルなどに移して自然に冷まします。
これを、【陸上げ(おあかあげ)】とか【生(き)あげ】などといいます。
キヌサヤとかグリーンアスパラなどは、料理の目的によって使い分ける。
緑を使いたい「彩り」が目的なら水さらし、味わうなら陸上げ。
淡色野菜とか根菜類などは、アク抜きする必要がない限りにおいて、基本的に陸上げにします。ブロッコリーや白菜、キャベツ、ジャガイモその他は必ず陸上げです。
こうした「陸上げ組」の野菜も、アク抜き以外に例外があります。
「シャキシャキとさせたい場合」がそうですね。
これは「茹でる」作業なしで、「水さらし→水切り」が主体。
レタスや水菜を流水にさらしたりする作業です。
モヤシのように茹でてからさらすケースもあります(モヤシも基本は陸上げ)
※野菜の酵素
野菜の生長を促す酵素の一部は、栄養を消費してしまいます。
それによって鮮度を失い腐らせるのを早める、いわば「老化物質」
栄養を失うということは、旨味も落ちていくということ。
この酵素は80~90℃の加熱で破壊されます。
「大量の湯で素早く茹でる」と、野菜内部はちょうどこの温度帯に。
のんびり加熱を続けたり、フタをして蒸したりすれば沸点の100℃になり、
こうなれば今度は栄養素が壊れてしまい、酸で変色します。
昔の料理人はこの科学を知らなかったはずです。
やはり、「伝統」というのはそれなりの理由がきちんとあった訳ですね。
こうした事は料理の世界では非常に多いもの。
長い年月をかけて蓄積された「技」は、迷信ばかりではないんです。