調味料と味付け→塩の役割

  

塩と料理

塩は料理と切り離せません。

塩が料理で果たす役割でもっとも重要なのは「浸透圧作用」
簡単に言えば食材から水分を引っ張り出す作用です。

この浸透圧を中心に以下のような効用があげられます。

・食材の不要な水分を吸い出す
・微生物を抑制し腐敗を防止
・たんぱく質を凝固させる
・食材のヌメリを落とす
・小麦粉グルテンの弾性と粘性を増す
・ビタミンCの酸化を防止
・クロロフィル(野菜の緑)を安定させる
・その他の植物色素(ポリフェノール)の変色を防止

「たんぱく質を凝固させる」は焼き魚やステーキなどで理解できましょう。
焼くと凝固する魚のたんぱく質「アルブミン」や「グロブリン」の凝固促進。
その前に浸透圧で魚の生臭み成分を排出させて身を引き締めます。

凝固させるだけではなく、反対の働きをするケースもあります。
例えば「湯豆腐」に"ス"が入るのはたんぱく質が凝固するからですが、
これを「ひとつまみの塩」が抑制します。
湯豆腐に塩を加えることで豆腐のスは防げるのですよ。

そうめん、うどん、パンなどは小麦粉の粘性と弾性を利用します。
水を加え、「グルテニン」と「グリアジン」を結合させる、
すると「グルテン」が出来ます。
この性質が強いのが「強力粉」、弱いのが「薄力粉」です。
そうめん、うどん、パンなどは弾力性が必要なので前者を使います。
このときに必ず加えるのが塩。
塩によって弾力性が増すからです。

植物の色素を安定させる
これは「緑の葉物」をゆがく時に塩を加える意味でもあります。

「青菜に塩」と云いますが、その効果は青菜に限らず。
それが漬物ですね。塩の浸透圧があればこそ。

漬物用の塩は並塩・粗塩でなくてはいけません。
精製塩にはニガリやカルシウムなどの雑味(ミネラル)がほとんどゼロ。
こうした雑味が野菜細胞のペクチンと反応して、シャキシャキ感を出すのです。

調味料としての塩

塩には調味料としての絶対的な効果があります。

味の対比効果

これは塩を加えたモノの味を際立てる効果のこと。
もともと持っている旨味をさらに引き立てるわけです。
だし汁に塩がその典型。

「元々もっている味」には甘味も含まれます。
なので、スイカやトマト、お汁粉や餡にも塩なのです。


味の抑制効果

これは一言で、「刺激をおさえこむ効果」のこと。
典型が酢の料理で、いたずらに刺激が強い酢を丸くします。
寿司のシャリの刺激臭をおさえてまろやかにしているのは砂糖ではなく塩。
酸味が強くて酸っぱい(あるいは苦い)果物や野菜も同様。
少々の塩で酸味や苦味を抑えてくれます。


・減塩意識よりも「減糖」と「減あぶら」

塩は人間の血液内でつねに0・9%の濃度を維持しています。
もし塩の摂取を止めた場合、真っ先に出る症状は「食欲不振」
消化液の分泌が減るからです。

いずれにしても塩を絶って生きることは出来ません。
断つと命を維持できないからです。
摂取しなくても死ぬことはない「砂糖」とは根本的に違うのです。

塩分過剰で高血圧になるとウルサイ程云われます。

>腎臓が耐えれる塩分量は一日10グラムである

しかし自分はこの説をまったく相手にしておりません。
人間の体内には「塩に対する防御力と制御力」があるからです。
砂糖のような「新顔」ではなく、塩はヒトがサルの頃からの付き合い。
人間のDNAには「塩との適性な関係」が刷り込まれているはずです。

砂糖のように「いくらでも食べられる」物質ではない。
「適量」は体が知っていて、それを超えると食べられなくなるのです。

高血圧も、悪性の脂肪酸と糖分の過剰が真の因子でしょうな。
この二つの物質は「人間の体が知らない」からです。
DNAに対応策もなく、したがって防衛する術もない。
「なすがまま」であり、それが生活習慣病を呼びこむのでしょう。