オクラのウンチク

  

夏野菜オクラ

オクラは広く普及している夏野菜ですので、和食においても馴染の深い食材だと思われがちなんですが、明治生まれくらいまでの和食料理人達には「新顔」の一種でしてね、そうですなぁ、今の我々にとってのモロヘイヤあたりに相当しましょうかね。「ケトミー」などと称して珍しがっておった様です。またフランス語でオクラを意味する「ゴンボ」と呼ぶ料理人もおりましたね。



だいたい幕末から明治初期、つまり文明開化に歩を合わせて渡来したとされております。中国から持ち込まれた様ですが、その中国でもオクラは新顔さんだったみたいですよ。

オクラ

オクラ/Okra 和名:アメリカネリ 通常は【陸蓮根】と表記する
アオイ科トロロアオイ属 一年草(熱帯では多年草)

漢名で【黄蜀葵】ですが、黄蜀葵はトロロアオイの事です。製紙用に使うノリ(ネリ)になるトロロアオイからの転用ですな。トロロアオイは和紙作りのほかに食用にもなる植物。オクラにそっくりな花を咲かせますし、ネバネバ具合もよく似て美味なんですが、一日花ですんで市場には出ません。これは逆に「花オクラ」と呼ばれます。

和名は「アメリカのネリ」となっておりますが、オクラの原産地はアフリカ北東部説が有力。古代エジプトで食用にしていた記録があります。野生種はインドに存在しております。

沖縄や伊豆諸島ではオクラをそのまま「ネリ」と呼びます。

南インドの「ヴェンダッカイ・タイール・パチャディ」は、炒めたオクラをヨーグルトで和え、さらに香辛料を加えて炒めるという珍しい料理。

アメリカではネバネバ嫌いの北部ではあまり食べられず。しかし南部では好まれています。先ほどのフランス語「ゴンボ」がアメリカで変化し、南部特有のオクラを入れたスープは「ガンボ・スープ」と呼ばれます。
ゴンボやボンボやガンボという各国の言葉は、もともとアフリカの主要言語でオクラを**ガンボと呼んでいたから。

南アジア、中東、西インド諸島、アフリカ諸国では、オクラに肉やトマトを加えて煮込み、それをご飯にかけて食べる料理がよくみられます。

オクラには2mを超す種もありますが、ハウス栽培が主流の現在は「心止まり」がほどんど。稜がくっきりしていて切断面が星型の五角形になる緑色の果実を結びます。なかには紫紅色になる紅系の「赤オクラ」もありますが、この赤色素は煮ると溶けだしてしまいます。

なんとなく和食に馴染の深いイメージがあるのは、納豆に似た粘りと、独特の青い香りに関係があるでしょう。日本人の好みにぴったり。

このネバネバは食物繊維でして、ガラクタン・ペクチン・アラピンというコレステロールを減らす成分。 それに、たんぱく質の他、ビタミンはA・B1・B2・C、またカルシウム、カリウムなどミネラルも豊富。ビタミン・ミネラルはピーマンのおよそ3倍。まさに夏の健康野菜。胃腸も整います。

食べ方は生食か加熱調理。
トロロのように生ですりおろしたり、軽く下茹でして使います。
いずれにしても、まず塩で揉んでさやのうぶ毛を取り除いてから。

生食もそれなりですが、少々青臭いと感じるかと思いますので、やはり軽く茹でてからの使用をおすすめします。 沸騰した湯に入れ、約2分が茹で時間です。それ以上加熱せぬのが和食の和食たるポイント。

天ぷらや汁の実にもよいですし、工夫次第でどんな料理に加えてもそれなりにアクセントをきかせる事ができる食材ですが、あまり妙なことはぜずに、できれば「冷たい料理」に仕上げましょう。
酢の物、和え物、サラダなどです。
鰹節削りや醤油との相性は抜群です。

上記の様に世界中で食べられている野菜ですから、乳製品などと合わせたり、ブイヨンとの相性も良いし、料理法は無限ですが、その多くは加熱調理。
日本料理のなんたるかは、お浸しや酢の物、和え物にありましょう。
これは野菜の食物繊維と健康成分を残らず摂取する理に適った調理法でもあるのです。
そんな合理性を持ち出す前にですな、なによりもほろ苦さを少し感じつつ緑の香りを堪能する。これですな。 おまけに粘り気が口内で余韻を楽しませてくれます。

友達のアメリカ人が、「よくそんな気持の悪い物を食べるなあ」
そんな事をぬかしておいらをカッとさせたもんですが、
「なにを、このモヤシヤロウ。これが分からねぇデコ助だからおめぇらはデリ欠なんだよ。小倉で炊いたユデダコみていなツラしやがって。おとといきやがれってんだデコピン太郎」(笑)
※小倉=小豆