雛祭りですなぁ、もうすぐ。
凍える寒さも2月いっぱいでヤマを越えましょう。
はまぐり
ひな祭りと言えばハマグリ。
ハマグリの殻は昔から「貝合わせ」に使われてるように、二枚の殻がピタリと合わさりますが、ペア以外の殻とは重なりません。ようするに固く結ばれた関係であり、浮気はナシってこと。
このことから縁起を担いで結婚式の吸い物によく使われます。
女の子にとっての幸せはお嫁さん(昔はね。今は存じません(笑)
「よい伴侶と(合い)ますように」「固い絆で結ばれますように」
って願を掛けて、「ひな祭り」にもハマグリを食べさせるって訳。
さて、昔から日本人に親しまれてきたハマグリ。
今でもお店で買えますし、「ハマグリって何だ?」なんて事は考えたりもしないでしょう。ハマグリは、はまぐり。漢字で蛤。当然そうだと思っていなさるでしょうな。
実は「ハマグリ」っていう名称は何を指しているかよく分からないんです。本来は和名の「はまぐり」という二枚貝を指す言葉。ですがこの貝、日本ではほぼ絶滅しております。
(国内で生息しているのは2箇所だけだとされます)
マルスダレガイ科ハマグリ属の二枚貝は三種。
(1)ハマグリ
(2)チョウセンハマグリ
(3)シナハマグリ
この(1)がハマグリなんですが、これの在来種は先ほど書きましたように全滅状態で、瀬戸内と有明でかろうじて生息しているという「ウワサ」だけの生き物。
昔の東京湾にはこれがワンサといたのですが、1975年に絶滅。
生活排水などの環境汚染による「赤潮」。そこから派生する無酸素水塊である「青潮」。さらには生息地の干潟・砂浜の埋め立て。これによって死につくしたのです。
※無酸素水塊は干潟によってある程度防げます。なので東京湾周辺でも干潟の残る場所では生息可能。千葉産ハマグリが存在する理由です。(チョウセンハマグリは外海の砂浜が生息地なので汚染の被害を免れたという面もある)
では、現在「ハマグリ」として販売されてる貝は何か。
「地ハマ」と称される国産ハマグリは「チョウセンハマグリ」
安い輸入物は「シナハマグリ」
白ハマグリと称されるのは属が違う「ホンビノスガイ」
他にも◯◯ハマグリと名の付く貝がたくさんあります。
→蛤の見分け方
ハマグリのブランドである『鹿島もの』は鹿島灘産。
利根川河口近辺産で、国内流通の過半数を占めます。
非常に高価であり、味も良い。旬は春(実際に旨いのは5~8月)
これは「チョウセンハマグリ」です。
というか、千葉、熊本、桑名、などもほぼチョウセンハマグリ。
中には見境なく撒かれた(潮干狩り・蓄養のため)シナハマグリとの交雑種もいたりして何が何やら正体不明の奴も。
※チョウセンハマグリは輸入のシナハマグリと違い元々日本に生息してる国産。在来種。近年国内のチョウセンハマグリは減少している。
※輸入して日本の海浜に撒かれているのはシナハマグリだけではなく、様々な国からである。
「逃げ足」の早いハマグリ
二枚貝というのは貝殻の頂点部分に蝶番があり、ここに靭帯があります。これが貝殻を開く役割。閉じる機能は「閉殻筋」、つまり貝柱の役目です。
なので貝柱を切ると二枚貝は口を開くのです。
前後に合計二つの柱を持つ、ハマグリ、アサリ。
中央に太いのが一本だけの、ホタテ、タイラギ。
どちらにしても柱を切れば殻を開きます。
逆に靭帯を壊しておけば殻を開く機能を失います。
なので焼ハマグリが急に口を開けて中の汁を失なってしまうのを防止するために、この靭帯を切り落として焼くのです。
二枚貝が殻を開く理由は二つ。
「採餌、呼吸、生殖、排泄に使う水管を出すため」
「足を出すため」
二枚貝には「舌」ような形をした足があります。
これが貝の「足」であり筋肉の塊。
これが斧のような形をしているため二枚貝を「斧足類」とも言います。
主な用途は砂に潜るため。
ところで、ハマグリは干潟の一部を区切って蓄養されます。
ところが竹簀などで「囲い」をしないと逃亡するのです。
つまり、夜逃げ・トンズラ(笑)
ハマグリはけっこうな大きさ。重さもある。
あの図体でどうやって移動するのか。
潮の様子を伺い、下げ潮だとみるや水管から粘液を出す。カウボーイよろしくその液を投げ縄のごとく潮へ投げ、その縄に引かれてとっとこ移動。「分速1メートル」ものスピードでもって一晩で蓄養場から脱走するんです。これは若い個体に著しい特徴で、昔の人はこれを称して「蛤の蜃気楼」と呼んだそうです。
なんとも面白いというか、小面憎いというか、可愛いというか(笑)
逃げられた漁師は笑うに笑えないでしょうがね。
しったか ながらみ
やはり春遅く5月頃から美味くなる貝。貝類はだいたい春が旬ですが、こちらは少し様子が違う貝。海辺で拾ってくることが多い小さな巻貝です。磯遊びに行くと、夢中になって集めたもんですが、皆さんも同じでしょう。
小さいバケツや空き瓶に入れて持ち帰ると、お袋や祖母が味噌汁や潮汁や煮物にしてくれて、磯の匂いがぷ~んと漂った。
あれはいったい何百年前のことなんでしょうか・・・(←
しかし、ああいった貝の名前はまったく憶えておりません。
その理由は、あまりにも種類が多いこと。
それに、覚えられない変な標準名がついていること。
なんだって学者さんは分かりよい名をつけないのかでしょうか。
料理屋で使うことはめったにありませんが、一般的な小型の巻貝としてまずまず知名度があるのは【尻高貝】と【ながらみ】
ナガラミの標準和名は「だんべいきさご」(團平喜佐古)
そして子供のおはじきにする「きしゃご」もナガラミ。
シッタカ(尻高)ときたら、これがアナタ、
「くぼがい」
「ばていら」
「ぎんたかはま」
「くまのこがい」
「おおこしだかがんがら」
覚えられるかってんだ(笑) もっと簡単な名前にしろっての。
いずれにしろ、こうした巻貝をざっくりボイルした奴を、針状のもので突いて身を引っ張り出して食べる。海辺の地方に旅する時の楽しみの一つですよね。陸の山菜とはまた違う、磯から漂う「春の匂い」がします。
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お魚さん、こんばんは。来月の料理教室は”ひな祭り”なのではまぐりの潮汁や五目ちらし寿司などをおだししようと思っています。はまぐりのお話とっても参考になりました。いつもいつも勉強させていただいております。蛤の蜃気楼。。。なぜか逃亡する蛤を応援したくなるのはなぜでしょう。逃げろー!!
ひとつむぎ あこ(^^)
Posted by あこ at 2012年02月24日 21:00
あこチャン、
おひさしぶり(~_~;ゞ (←バカ親父が嬉しくてデレデレ 笑)
ハマグリはターザンみたいにロープでひゅ~ん。
アオヤギは足でぴょんぴょん跳ねるカラ傘オバケ。
可愛いやら、憎たらしいやら(笑)
正直に言えば食材はみんな可愛いいです(^_^
だから不味い料理にしたくない。
あこちゃんは、どうも食材を「美人」にしておる様子。
自分が綺麗だからそうなるのでしょうか^^
あんまり「誘惑」してはいけません(笑)
Posted by 魚山人 at 2012年02月24日 21:45
早速お返事ありがとうございます。いつも陰ながらお魚さんの記事を拝読させていただいており、今日はこうしてお魚さんとお話できて無性に嬉しいです(^^) 私も食材にうっとりしてしまうことがしばしばあります。特に天然ものの魚介や無農薬の新鮮な野菜は本当に美しい。自然に敵う芸術家はいないな~なんて思ってしまいます。だからなるべくありのままのおいしさとか美しさを大切にしたい。そんな気持ちで日々お料理しています。お魚さんも食材を可愛いって思われるんですね。安心しました。
Posted by あこ at 2012年02月24日 23:10
こんばんは。
当方静岡在住ですが、潮干狩りが好きで5月~9月にかけて休日は毎週のように貝かご持って海に居ます。
主に取れるのは駿河湾ではハマグリ、遠州灘ではナガラミとハタミです。
地物だと思っていたハマグリが日本古来の物ではないと知ってちとショックです。
ナガラミは自分が子供の頃よりあきらかに数が減ってると実感します。
値もずいぶんと高くなってます。
昔はナガラミは駄菓子屋でも売ってたという父親の話が信じられないです。
悲しいけどもう戻せないんでしょうね。
しかし春の味覚。春が来るのが楽しみです。
Posted by レトロピンテール at 2012年02月25日 19:32
こんちは、レトロピンテールさん。
春はもう来てますよ。「芽」ですけどね。
ま、足音ってやつです。
それを感じられるところが日本っていう国の魅力ですな。
その魅力に気付く日本人は減少傾向ですがね。
Posted by 魚山人 at 2012年02月26日 06:46
ッタク(;-_-+
消しやがったな(笑)
お疲れ様です。爺
春の貝
ようするに旬。
この旬があるのも この先僅か数百年ダロよ。
下手すりゃ数十年だ。
長く先見れば 地球の寿命もくるし 人間なんざ 瞬きほどの間に存在した生命体に過ぎネェからな。
俺ゎそんな瞬きほどの瞬間に 爺blogを見つけたことが奇跡と思うよ。
歴史ゎ繰り返す。
人間なんざ絶え またバクテリア時代ゎ来る。
俺らゎごくミヂカイ今を 有意義に過ごせる なんともはや 幸せ?な連中に他ならない。
だからと言って
未来の輩に 核廃棄物を残すのゎ最低だし。
Posted by 鯔次郎 at 2012年02月29日 01:31
自分が消せと言ったくせに(笑)
ま、あれだ。
かわいいお嬢ちゃんに蛤を食べさせてやっておくれ。
お疲れ様。
Posted by 魚山人 at 2012年02月29日 06:53