椀物と汁物
椀物とは何かと問われると、少し曖昧になってしまいます。狭義には日本料理のメインである『煮物椀』のことですし、広い意味では椀を使用する料理全体が椀物になりましょう。
椀には飯椀や盛椀、陶磁器の煮物碗や茶碗などがあります。
蒸し碗や湯呑み茶碗も、やはり碗です。
これらの料理全体を椀(碗)ものと呼ぶのが正しいでしょう。
しかし、日本料理の世界では椀盛り(煮物)がすなわち椀物であり、二次的には【汁椀】がそれに相当します。分かりにくいのは、椀盛り、つまり煮物椀が、関東ではあきらかに汁物料理であるにも関わらず、関西では煮物とされていることです。
(煮物椀は懐石の2菜目になる蓋付き椀で、別名{菜盛り椀}{椀盛り}と呼ぶ実沢山の{汁もの}です。会席でこれに相当する椀は汁の「吸い物」になり、煮物は中程で出される。このことが曖昧さを深めている側面もある)
「煮物か汁物か」
ここらへんに曖昧さが残りますが、一般的には【木地で出来た漆器のお椀で出す料理を椀物】と呼んでも差し支えないと思います。そもそも煮物と汁物を完全に分けること自体が難しいですし。
※単純に言えば仕立て汁を「張る」ものが汁椀、煮汁を「添える」ものが煮物。だが曖昧な料理も多い。
そうであるなら「椀」という器が、元来「汁」を入れる容器でありますので、椀物とは汁物であると解釈しても間違いはないと思います。
汁物
酒の菜として出されるものが「吸い物」
ご飯と対で出されるものが「汁物」です。
(これは狭義。一般的に両者ともに汁物だと考えてかまいません)
汁物は大きく下の二種類に分けられます。
・すまし汁
・濁り汁
すまし汁は透明な清汁で、吸い物と潮汁が代表。
吸い物
吸い物は一番だしを使う。
椀の構成
だしを薄味で調味した【吸い地】
椀の主役になる【椀種】
椀種に添えるあしらい【椀妻】
香りのアクセント【吸い口】
以上4つの要素で椀は成立します。
潮汁
潮汁はたんに「潮」とも呼び、だしは使わない。
魚貝を水から煮出し、昆布を加え酒と塩で調味する。
濁り汁
味噌汁や粕汁が代表。
文字通り、透明度がない汁。
二番だしや、かつお節を煮出した濃いだしを用いる。
味噌汁
だしに味噌を溶いて仕立てる汁。
だしは二番だしや煮干しだしなどコクのあるものを使う。
味噌を溶いたら沸騰させない。
濁り汁には、味噌仕立てのほか、粕汁やすり流しなどがあります。
煮物椀{椀盛り}{菜盛り椀}
代表的なのが「梅椀」という椀物です。
梅椀
梅人参(又は梅花)を中心に、椎茸・塩茹で海老・焼き鯛・鶏ささみ・里芋六方などから4種を選んで「5つの椀種」を使う。
吸い物よりも大きめに切り、別々に味付けをしておく。
熱い吸い地を張る。
青みを添えて口には柚子か木の芽。
吸い物が酒菜で、箸洗い(小吸物)は口直し。
それに対して椀盛りは、ご飯の菜という位置付けです。
なので、少し大ぶりの椀を使い実沢山。
椀種にする季節の魚貝や肉類や野菜、進丈などは大きめに。