揚げ物の基本
和食の揚げ物は大別して『素揚げ』と『衣揚げ』の二種があります。
そのポイントなどを説明いたします。
① 素揚げ
材料に何も付けず直接油で揚げるやり方です。
素材の色とか形を表現したい揚げ物料理に適しています。
主に野菜中心で、水分が多く柔らかい魚などには向いていません。
高温だと表面が焦げてしまいますので、油温は比較的低温の160度前後。硬いさつま芋などは170度。油との相性が良いナスは一度素揚げしてから調味する事が多い。下はみそ味(田楽や鳥味噌など)ではなく、ダシなどを吸わせる揚げ浸し。
ナス味噌などのように素揚げ後調味を加える他、あしらい的な使い方をする素揚げもあります。つまり飾り物ですが、もちろん食べられる飾りです。ソーメンや春雨やライスペーパーなど色々。
素揚げでもほんの少し粉を付けて揚げる場合もあります。
低温でじっくり魚の骨を揚げる「骨煎餅」など。
魚などは薄く粉をしてから揚げます。皮の方に必ず切れ目を入れてはじけないようにしましょう。身に水分が多いので危険だからですし、皮と身の間に気泡ができるからです。
② 衣揚げ
小麦粉、片栗粉、パン粉など「衣」を付けて揚げる調理法。
天ぷらやフライがその代表になります。
てんぷら
天ぷらは、カラリとさっくり軽めに揚げるのが理想です。
そのポイントは衣の粘り具合。
粘りが出てしまうとボテボテして厚ぼったい重い天ぷらになります。
(典型はアメリカンドッグとか沖縄テンプラなどの厚衣ですね。
江戸前(和)天ぷらは正反対になるのです)
粘りの原因は小麦粉のグルテン。
なので、グルテンの少ない「薄力粉」を使うのです。
これに加えて衣の温度を上昇させないこと。
衣の適温は14度くらいなので、夏場などは衣の材料(粉・卵・水)全部を冷蔵庫で冷やしておくといいでしょう。
さらに、衣を作るときに混ぜ過ぎると衣が粘ります。
卵を加えた(卵なしでも可)冷水に薄力粉を振るい入れて、太い箸でザックリとダマが残るくらいに軽く混ぜるだけでいいのです(泡立て器でも良いが手早く)
左の衣は温度が上昇して、やや粘りが出ています。
右のように白い粉が少し残る程度の衣にしましょう。
新鮮なエビや貝や穴子やキスなどは、衣を薄めにして高温で手早く揚げるのが美味しい天ぷらのコツ。火の入りやすい材料、薄い材料も同じです。
少し鮮度が落ちる魚介や、クセのある赤身の魚(青魚など)、そして身の厚い材料は身に水分が多いので衣を厚く(もしくは下粉を多くして)、時間をかけて揚げます。
※下粉とは衣に付ける寸前に衣の吸着をよくする目的でつける薄力粉です
※サックリ揚げる裏技
・衣にコーンスターチを加える
・衣の冷水の代わりにビールを使う
※江戸前風の味に
・揚げ油にゴマ油を足してブレンド
・ゴマ油100%でもよし
※薄い材料をうまく揚げる
・例えば青じその葉
衣を片側だけに付けて手早く揚げること
天ぷら以外の衣揚げ
衣揚げは天ぷらが代表ですが、範囲は非常に広くなります。
パン粉を衣にして揚げるフライもその一つ。
溶き卵→小麦粉→パン粉の順で衣を着せます
フライの材料によって油の温度を変えます。エビなど火の入りやすいものは180度で手早く。すこし厚めのものは170度前後。冷凍のコロッケなどは低温の160度くらいで中まで火を入れる。
衣にゴマとか米粉(道明寺)、海苔などを使う【変わり揚げ】もあります。それに材料を包み込んで揚げる【包み揚げ】もあります。【唐揚げもありますね。
これはタコのイボイボを唐揚げにした「たこ唐揚げ」
しょう油や酒をベースにショウガなどを加えてしっかり下味を付けておき、片栗粉をまぶして170度くらいの油にてじっくりと揚げ、取り出す寸前に180度くらいに温度を上げてカラリとさせます。
揚げる順序
油は新しいほど揚げる力が強く、劣化すると力が落ちてきます。
臭いを発するほど古くなった油は決して使ってはいけません。
下は油が新しい順に優先させる順番です。
④にかけて油の劣化が激しくなります。
① 柔らかい野菜や色野菜
② 堅い野菜
③ 水分の少ない肉
④ 水分の多い肉
調理法としては下の順で優先させましょう。
① 色野菜の素揚げ
② 天ぷら
③ 魚介の素揚げ
④ 唐揚げやフライ
油の温度
緑色を残したい野菜、例えば獅子唐やアスパラや青じそ等。
こうしたものは低温の160度から165度で揚げます。
さつま芋とか硬い野菜は170度くらい。
魚介の天ぷらは170~180度くらいです。
※注意
気泡のある素材、例えば獅子唐やオクラ。こうした材料は内部に気室があるので油のなかで破裂します。串などで刺して穴を開けてから揚げるようにして下さい。
気泡と同じく水分を含んでいる場合も危険です。内部にある水分を排除して揚げるようにして下さい。