基本の練り餡
和菓子の餡といえば「粒あん」と「こし餡」が頭に浮かびます。しかし意外にも餡の種類は多く、専門家でさえ全部覚えるのは大変です。それでも初心者においては数種類を覚えておけば充分だと思います。「並あん」と「割あん」でほとんどの餡菓子が作れますので。
餡は和菓子の基本であり、饅頭などは全体の半分以上が餡で出来ています。
和菓子の味を決めてしまう大事な要素ですので、しっかり覚えておきましょう。
練り餡の種類
小豆あん
和菓子の餡と言えば自動的に小豆の餡を指すほどです。
発祥は空海時代の京都近郊だと云われ、その頃の砂糖は贅沢品でしたので長い間餡は塩で小豆を煮たものだったようです。
小豆餡は、小豆の処理加減(皮の状態など)で種類が分けられます。
並餡(なみあん)
饅頭や羊羹に使う、もっとも基本的で一般的な餡が並餡になります。
普通、アズキのアンといえば、この並餡のことになります。
並あんは小豆の75%以下の砂糖を加えて練ったもの。
したがって300gの並餡を作る場合
・小豆=200g
・グラニュー糖=150g
甘味が75%で、これが基本になります。
(現在は減糖傾向であり、6割程度が普通。砂糖を使わず作る方法も)
並あんには以下のようなものがあります。
こしあん
小豆や白小豆を茹でて、漉す。甘味を加え練り上げる。
白小豆は砂糖を控え目にし塩も使わない。
手早く漉して白色を失わない配慮を。
こしあんで作った汁粉を「御膳汁粉」と呼びます。
つぶあん
小豆や白小豆を皮を破かないように茹でる。
この生餡に甘味を加えて練る。(潰さぬように練る)
大福やおはぎに使います。潰さないように竹べらで詰める。
粒あんの汁粉は「田舎汁粉」です。
小倉餡(おぐらあん)
本来は大納言種小豆の粒あんをこしあんに混ぜたもの。
粒あんではなく大納言の蜜漬けを混ぜるものもある。
さらに粒あんを指して小倉あんというケースも増えている。
また、和食用語では小倉は小豆を指す(小倉煮など)
基本の並あん 作り方
小豆=200g
グラニュー糖=150g
(出来上がる餡は300g)
① 小豆を容器に入れ、たっぷり水を加えて一晩おく
② 鍋に入れて渋を切る
※渋切=沸騰したらアクが出るので、その湯は捨てる(ザルなどにあける)
③ 新しい水で加熱。沸いたら火を弱くする
④ ときどき差し水しながら柔らかくなるまで茹でる
※完全に芯まで柔らかくするのがポイントです
⑤ フルイ(ストレーナー でよい)の下に受けのボールを準備
そのフルイに鍋ごとあける
⑤ そのまま木杓子(木べら等)で小豆を漉す
(水を上手に使うとやりやすい ・水漉し)
⑥ フルイに小豆の皮が残るのでそれは捨てる
⑦ 次に目の細かいフルイ(もしくは裏漉し器)で漉す
⑧ 餡汁はボールの底に沈殿するので上澄みの水を捨てる
そこに新しい水を足して数分放置し、さらに上澄みを捨てる
これを三回繰り返す
※この工程を晒しと言うので「さらしあん」と呼ぶ人もいる
※コクのある餡にしたい場合は一回晒しでよい
⑨ 別のボールとフルイをセットし布巾を広げる(布巾はサラシが良い)
ここに⑧を流し入れて布巾で漉す
⑩ 両端を絞って水気をとる
さらに板などにのせて押し、水分を絞り出す
よく絞れば「生餡」の完成
次に練る工程へ進む
⑪ 鍋に生餡1/3とグラニュー糖を全部入れる
水少々を加えて火にかけ、練り混ぜる
⑫ 沸騰したら残りの生餡を加える
⑬ 好みの固さになるまで練り上げる
※焦がさないように注意
⑭ 小さく取り分けて布巾の上におく
⑮ 粗熱が取れたら使用する
※保存するなら一個ずつラップして冷蔵するか冷凍する。
白あんも、分量ややり方は同じです。
ただし、白あんは加熱時間を短めにしないと色焼けします。
手早くゆで、手早く練りましょう。
白あん(白並あん)
・白並餡
白小豆や白いんげんを小豆同様に餡にしたもの。
やはり「つぶあん」と「こしあん」があるが、主にこしあんを使い、これを「白練餡」という。
・練切あん
白練餡に求肥などのつなぎを加えたもの。
そのまま、または着色などして練切などを作る。
・味噌あん
白餡に味噌を加える
・黄身あん
白餡に卵黄を加える
・抹茶あん
白餡に抹茶を加える
・桜あん
白餡に桜の葉を刻んだものを加える
その他にも白餡を素にして作るあんは多い。
※並あん・割あんに様々なものを加えたあんを【加合あん】と呼びます
割あん
甘味が並餡より強く、豆と同割の砂糖を使う。
また、並あんに水飴を加える。
甘味の量によって【中割】と【上割】に分けられる。
日持ちする餡なので「きんつば」「どらやき」など、焼き物とか打ち物に使う。
その他の餡
つぶし餡
つぶあんを潰したものだが、粒あん自体をつぶし餡と解釈するケースもある。
※割あんをつぶし餡と表現する場合もある
さらし餡
糖を加える前の生餡を粉末にしたもの。
※「こしあん」をさらしあんと呼称する場合もある
さらし餡ははこし餡を乾燥粉末化したもの。
むき餡
小豆の皮を除いて加糖し、練った餡。かわむきあん。
最中あん
割餡に 寒天を加えて作る。モナカのあん。
火取りあん
通常より堅めに練ったあん。練切りなどに使う。
いも餡
白餡に紫芋や鳴門金時を漉したものと糖を加える。
あるいは白餡なしで直接あんにする。
※青えんどうで作る「うぐいす餡」
枝豆の「ずんだ」や「緑豆餡」「ピーナッツ餡」
「クリあん」「南瓜あん」「なつめあん」「ごまあん」「くるみあん」「蓮の実あん」
特殊な用途に使う「村雨」「葛あん」
「バナナあん」や「ミルクあん」もあります。
味噌あん 作り方
白並あんと、その20%量の味噌(主に白味噌)を用意
白練餡に少量の水を加えて鍋で加熱し練る
味噌も加えて好みのかたさに練る
いも餡 作り方
さつま芋、じゃが芋を使う。
単体で作ったり両方を混ぜて作る場合もある。
また、白並餡を混ぜる作り方もある。
芋は輪切りにして蒸し、裏漉しにかける
漉した芋とグラニュー糖を鍋で練る
(または白並餡を加えて練る)
黄身あん 作り方
鍋を使い水少々で白並餡に卵黄1~2個分を練り込む
やり方は二通り
・生の黄身を練り込む
・茹でた黄身を漉したものを練り込む
いずれにしても少しずつ練り混ぜないと全体にむらなく混ざらない