だしと卵料理

  

余った出汁と卵料理

和食の出汁は「使い切り」が原則です。作ったその日しか使えません。冷蔵冷凍すれば翌日以降も使えない訳ではありませんが、肝心要の香りは消えてしまうんで使いみちはなくなります。



(濃縮したり乾燥して粉末にしたりなどなど延命方法は色々ですが鰹の香りはどうにもならんと考えるべきで、その香りを出すには香料を加えるしかないでしょう。今の香料はどんな香りでも自由自在ですんで。しかしそれは鰹の味ではなく人工の味。だからこそ出汁を引く作業を料理人は続けているわけです)

ベースというのは和洋中問わず大量に作ったほうが美味しくできます。なんだかんだで使ってしまいますから店使いではそれでも問題はありません。やっかいなのは家庭で出汁を作る時でしょうな。どうしても余りを出してしまうと思います。その使いみちは色々考えられますがその中の一つをご紹介しておきましょう。

和食の味付けは出汁に塩と醤油を加えるのが基本です。甘みを加えたければ酒や味醂で調整します。これを極めて薄く作っておくのが「八方だし」です。


二番だしと八方だし

残った出汁をこの八方にしておきましょう。
味を付けておくわけです。

それでもどんどん香りは時間経過で失われます。そこでゼラチンを加えてみます。飛んで行く香りを少しでも封印するために粘度で包むわけです。

出汁をそのまま冷蔵庫にしまうのに比べれば、この方法は「保存」の効果をある程度出せると言えます。そして、それを料理に使う場合極めて早く出来るって利点があります。

なにしろ温めるだけ。
例えば下のやつなんか三分もかかりません。

この八方を温めながら、穴あきのお玉で溶き卵を入れれば、汁に粘度があるので板前が作るのと変わりない花の咲いたような美しい「かき玉汁」も作れますよ。

卵料理が出たんで、ついでに少し卵料理のコツを書いておきましょう。

卵料理は火加減が左右します。

まず一番難しいとされるオムレツ。
これは最初から最後まで強火。

スクランブルと目玉焼き。
これは最初から最後まで弱火が良いです。

これには前提があります。
こうした類の卵料理は『フライパン(鍋)』で成否が決まります。
油が馴染んだ鍋でないとまったく意味がありません。

使い込んでないフライパンではプロのコックさんでも巧く焼けるものではないんですよ。新品の鍋は徹底的に空焼きして表面の錆止め他を焼き飛ばし、洗い落としまた空焼き、その後クズ野菜などを大量の油で炒めるなどの方法で馴染ませて、それ以後は金ダワシや洗剤で洗うのは厳禁です(テフロン等を除く)

そうして使い込むと、卵液がまったくひっつかないフライパンになる訳です。

そして卵料理を作る際、直接割り入れるのはやめましょう。
いったん小鉢等に割りいれてから使います。

そうすると例えば目玉焼きなどは黄身が中心にきますが、肝心なのは衛生の為です。卵は割るまで分からない。駄目なものがあるかも知れない。それをサクサク混ぜていれば全部が駄目になります。ですから小鉢などに一個づつ割り入れながらやればそのチェックにもなるのです。


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