霞の研ぎ方・年季物「有次」
読者投稿の包丁画像〔#25 〕
投稿者:鯔次郎
職業:鮨職人(江戸前)
包丁:柳
『有次』の霞。尺柳。
こいつゎハンパネェ修羅場を体験してきたヤツ。
おそらくゎ30年前位に製造されたモンと解釈してる。
何故ハンパネェか…
そりゃ昨年永眠された
『持ち主』がハンパネェから。
どんなふうにハンパネェか…
目茶苦茶で酒浸り。
免許ゎ3度取り消し
常に『喧嘩上等』
体重ゎ一次100㎏を越えていた。こいつゎ人を危めてるんだ。当然『ミネウチ』だが。
俺にゎやたらと重い。
メカタもそうだが 扱うに重い。オジキのマネが出来る程
俺ゎ達者な板前ジャネェ。
一日に握ったシャリ。
オジキゎ27本だとか…
自慢してたっけ。
それでも勝てネェヤツが存在したらしい。
目茶苦茶の罰がオジキを葬った。
でもオジキゎ最後の最後まで目茶苦茶してきたことを悔やむことゎなかった。
むしろ自慢げだった。
刃線。険しい感じダロ?
包丁に性格が出る。
これを 使いこなせる日を俺ゎ目指し日々精進する毎日。
『重い』のゎ俺が未熟な証拠さ。
2011/05/24
土台が崩れてなかったのでしょうが、それにしてもよく維持してます。
うるせぇだけあって(笑)、手入れの仕方はしっかりしてますな。
(形見だと言ってますが、見る限り直近にも研いでる包丁かと。霞の刃境は時間の流れがすぐに出ますので。撮影前に手入れしたのでしょう)
ご本人は「険しい感じ」だと言っておりますが、素直な線です。
霞焼包丁はこんな感じに研いで下さい。
お手本の一つと言ってよいでしょう。
教科書的な研ぎ方です。
今更ですが、鯔次郎氏はよい仕事をする板前だと思います。
包丁をみるだけで握る鮨が分かりますので。
しまりのない鮨は出してないはず。
ツラ当てのイメージを持ちながら研いでいるのがよく分かる包丁。
切刃の研ぎ方が良いので見事な刃境が出てますし、ソリから切っ先にかけての処理もいい。ここは意識的にルートを変えないと、特に古い包丁は直線的になるもんです。
こんな部分を気にするか気にしないか。それが握り鮨に出るんですよ。
悪い研ぎ方をした同系統の包丁と比較すれば、
おいらが書いている意味が分かりましょう。
間違った包丁の研ぎ方
手入れの悪い包丁
好みの問題にすぎませんけども、刃境の波をさらに鮮やかに出したい方は仕上げに「縦研ぎ」をするといいでしょう。刃境の裏に指を当てて包丁を砥石に対し横ではなく縦に当てて研ぎます。あまり目の細かい仕上げ砥ではうまく出来ませんので、#3000~5000、包丁の硬度によって変わりますけども、#3000が丁度よいでしょう。
5000以上の場合、ほぼ刃境は出ません。
※元々「刃元」を研ぐ時(横にする)以外は縦気味に持つのがよい研ぎ方(鶴首などの偏形を防ぐ)ですが、刃境はさらに意識的に縦にします。逆に横に持って押すと刃境の波は消えて直線的になります。
重さに関しては有次の特徴で、この重さゆえに有次を好む職人も多い。
包丁に仕事をさせる方法は二通り。
軽さのしなりを活かすか、重さの安定を利用するかです。
好みが違えばお隣りの木屋さんに入ればいいし(笑)
「京都 有次」もなかなかですからね。
多少「築地 有次」がプロ好みのような気もするが、関西の板前に言わせりゃ逆になる。まあ本人の好みでしかありませんけどね。
魚山人
※霞焼き包丁
軟鉄と鋼を貼りあわせ、刃の部分だけ鋼になっている包丁。比較的安価で研ぎやすい。(値段は種類によって大きく変化します。有次は結構高い包丁)
※刃境
軟鉄と鋼の境目。鉄と鋼は地合いの色が違うのでこれが見えます。したがって霞焼き包丁にだけ出ます。本焼に出る「刃紋」ではない。