磨いた本焼包丁で鮪の刺身を切る

  

板前、包丁、日本人

古い記事など見ておりますと、何故だか近年は年末年始に「マグロ」の事ばかり書いてる気がします。



「鮪は最後の砦」と思っておりまして、嫌な予感というか危機感みたいなものが心に澱んでいるからなんでしょうか。

さて、このBlogもとうとう5年を過ぎてしまいました。
「5年もの間いったい何をしておったのか」
何の役にも立たない自分のサイトを眺めてため息が出ます。

ぼちぼち「お休み」を頂戴する時期なのでしょうか。「潮時」という気がしないでもありません。

もしかしたら暫くイギリスで仕事をする事になるかも知れません。面白い企画が持ち上がっていましてね、行ってみようかなと。

しかし長期滞在となりますと、やはり簡単にはいきません。まず、ただでさえ会う機会の少ない家内とますます距離ができる。

江戸と自分の店に後ろ髪を引かれる。いくら全てを任せられる板前がいても、やはり「おいらの店」

数ヶ月、数年、留守にしていいものかどうか。逡巡と迷い。それが山のように出てきてしまいます。

企画自体は非常に面白くて、是非やってみたい。
仮においらが駄目な場合は、昔面倒を見た職人を代理に送ろうかという選択肢もあります。おいらの元から独立を果たした者のうち、昨今の不景気で腕を持て余している板前がおります。自分の店は閉めたが、次にやることが見えなくて再起動する気力を失っている者。現実問題としては再び立つ資金の問題もあるでしょう。

おいらが鍛えあげた。だがら人間性には問題はない。
自分の弟子。信頼性に不安もありません。不安があるような者なら、最後までおいらと仕事はしてません。とっくの昔にケツを割っております。去る者は決して追わないのが自分の流儀です。

そういう奴がバイトまがいの日々。日銭稼ぎに調理士会でドサ回りしてる姿は見るに忍びない。英語さえモノにできそうならチャンスを与えてみたい。英語なんぞ「やる気」の問題でしかありませんしね。

このブログもそうです。
マルちゃんからバトンを受けて始めたこの板前サイト。いくら潮時と感じても、次にバトンを渡す相手が必要。鯔次郎氏やたいら氏はどうもサイト運営に消極的だし(笑)

「さて、どうするか」
まぁ、迷っていようが時間は過ぎ去ります。

2011年もそろそろ終わりを告げ、あっという間に2012年に。
【時】がすべてを支配するでしょう。
「決断」というものさえ時間の流れに依存してるのですから。

良くない時代が続いておりまして、リーダー不在の現状、そして自覚症状が乏しい我が同胞たち、それを眺めておりますと、今後も改善どころかさらに悪くなる気配があります。

でもね、皆が皆そういう方向ばかりではありません。大企業はともかく、道を切り開かなきゃ商売にならない中小企業は必死で頑張っている所が多いです。面白い事をしているとこもあるし、世界屈指の技術を誇る小さな会社もある。

【ヨソが簡単に真似の出来るような商品では勝負しない】
このことをよく理解しておるんでしょう。

絶対に真似っ子が出ないようなモンを確立しての起業ですよ。
「シナモノで勝負」
それが日本の原点なんです。
馬鹿げた価格競争や一攫千金狙いが日本を狂わせたんです。

今は苦しい思いをしてる人がさぞ多いことでしょう。もちろん料理人だって同じだと思います。しかしね、「諦めたらそれで終わり」なんですよ。

「絶対にあきらめない」
その先にしか「何か」はありません。

腫瘍のように膨らんだ「曲がった心根」
そんなモンは捨ててね、「自分は日本人なんだ」と。
そいつを思い出して頂きたい。

「日本人の良さ」って奴は今のような腐ったモンではない。それをじっくりと思い出すんです。

頑張る人間が一人増えるごとに「腐った膿」は消えていく。そう信じてるんですよ、おいら。だって「完全に消えた」わけじゃありませんからね。

おいらも頑張るとしますよ。
使う人が減っていくばかりの厄介な本焼包丁。
そいつを研ぎあげて、磨く。

「ソリ」のカーブを使い「鮪の刺身」を切る。
稜線が出る刺身をね。

そして「日本酒」を頂く。
出来の良い地酒ならば江戸切子で飲みます。

自分が板前であること。
そして【日本人】である事を決して忘れないようにです。

尊敬する2人の偉大なる先輩
吉田拓郎
中島みゆき
この二人が元気である以上ね、おいらだって頑張り続けますよ。

我々は日本人。真骨頂は辛抱強さです。真面目に努力するのが本来の姿ですよ。

だから
季節が今から本格的に冬へ向かおうが、この国全体に暗く長いトンネルが待ち受けていても、言うべきことは結局ひとつだけ
どんな時でも「元気で」、そして「春を待」ちましょう。です。


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