細工剥き道具
むきもの道具が無ければ細工切りが出来ないという事はありません。例えばキュウリの芯を抜いて雷干に剥こうと思ったら、筒抜がなくても盛り箸やスプーンの後を使えばできますし、クワイで鈴を作るには、彫刻刀の代わりに竹串や割り箸を削ったものや、楊枝、和菓子用などを使えばできないことはありません。
たいがいの野菜細工切りは、牛刀とペティナイフでむいてしまえます。ノミや坪錐(彫刻刀みたいなもの)の代用にピーラーを使えば飾り切りには充分です。
しかし、それで隙の無い細工物ができるかって言いますと、これは無理ですな。
素材というのは実に様々な形をしているものです。その形に合わせて自分のイメージした通りに細工切りするのは難しいですね。
特に【抜き】と【溝彫】が問題です。上に書いた代用品だと荒くなってしまうし、硬い素材だと、この作業は不可能に近くなります。包丁でもこの作業はうまくできません。
結局どこで妥協するのかって問題になります。
多少荒くてもかまわないし、凝った細工なんか必要ないと思えば包丁や代用品でも差し支えないと思います。ペティ1丁あれば道具など要らないって人もいるでしょう。
面白くなって熱中すれば、下の様な野菜細工ができるようになる事を目指すでしょうし、
鈴木基之作野菜細工
其処まで行かなくても、気合いを入れた料理に華を添えてみたいと思う時もあるでしょう。
剥くのは包丁で、彫り、抜き、削り、仕上げにはクリ抜、タヅナ、坪切、小刀や切出があれば全然違ってきます。そもそもこれらの道具なしではまともな細工は出来ない事に気づきます。
むきもの道具
『むきもの』はそのまま剥き道具の名称になってますが、主な道具の説明を簡単にしておきます。
左側の二本が切出し
細かい模様や仕上げに欠かせません。
その右が小刀
大まかなアウトライン、粗仕上げに便利です。
その右がムキモノ包丁
皮剥きに使ったり、普通の飾りはこれだけで出来ます。
上が坪錐/坪切り(ツボキリ)
最初に書いたクワイ鈴の穴を開けたり、ノミやタヅナの役目もします。要は彫刻刀です。
ニッパーの右にあるのがタズナ抜きと筒抜
長めの穴を穿つとき、こればあれば均一で美しい形に抜けます。
その右の三本は御馴染の繰抜(クリヌキ)
そして極小さな穴を穿つ極細錐
一番右は坪錐専用の砥石です。
上の写真には折込の鋸や霧吹きの姿もあります。
道具にこだわる人はこんな黒檀柄鏡面仕上げのを持っていたりします。
中華も宴会料理には細工ものをよく出しますが、道具は和食用と似てる様で微妙に違います。
精巧な飾り細工や氷彫刻は美しいものですが、料理自体とは別のジャンルであり畑が違うとする考えがありまして、おいらもどちらかと言えばそれに近い意見をもっています。
凝ったのになればなるほどそれは彫刻屋さんの仕事に近くなり、料理から離れるばかりですからね。飾り物は食べ物ではありませんので。
しかし『包丁人』と名乗るからには、ここで紹介した道具を使いこなして欲しいし、これらで作れる範囲内で料理に華を添えてもらいたいとは思います。祝事や宴会の料理で、これができる出来ないでは、やはり違ってきます。
記事中の画像元:ムキモノ