失敗する魚の皮引き
アジが美味しい季節になってきました。これが終われば次はイワシにサンマと続きます。
それぞれのさばき方は魚のさばき方で詳しく説明していますが、これらを参考にある程度さばける様になり、三枚おろしから刺身まで何とか作れるようになったとしましょう。
この過程でネックになってしまうと予測できるのは、やはり「皮引き」だと思います。
経験の浅い方様に初心者向けの皮引きも紹介していますが、問題は「あるていど慣れている人」ですね。
「丁寧にやってた時は失敗しなかったが、慣れてきたら何故か失敗する」
こういった事はどんな作業にでもある出来事なんですが、皮引きでも同じですね。
プロでも時に失敗します。気を抜くと必ず失敗してしまう箇所があるんです。皮引きのどの部分で失敗してしまうのか、それを説明いたします。
魚の皮引きをミスするケース
頭の方からこんなふうに皮を剥いてきますよね、
これはもう失敗してます。
画像をよく見てください。
腹側の部分が少し剥けきれずに残っているのが分かると思います。
新品のラップを最初に使う時に経験ありませんか? 上の様な事。
あれを無理に引っ張ると・・・・・
この状態から無理に剥くとどうなるか。
こうなってしまうんです。
結果としてこうなります。
これと比べてみてください。
ロスもいいとこですな。
しかも腹際の美味しい部分がゴッソリとやられちゃう。
失敗なく引く方法
上のようなミスはね、よくある失敗なんですよ。
なぜ失敗してしまうのか
この場所で庖丁が「浮く」からです。
この部分まで「面倒を見ない」から失敗するんです。
ガンバラ(腹骨)の部分はスキーのジャンプ台みたいになってるわけですよ。あるいはスキー板の先っぽ。
庖丁がスーッときますでしょう、そしてこの部分に包丁が掛かると「上向き」になってしまうんですな。
ですから「下向きの押さえを強くしないと飛んでいく」んです。
手で剥く場合でも同じ理屈。ここから方向が違ってきますんで、皮に身が引っ付いてしまうんです。
プロは、この作業を秒単位でやるんです。小魚ですからキロ単位でしょう、何十本もあるから時間をかけてらんない。で、ふっと気が抜けた時にこれをやらかしちまいます。「まな板へ向けて押さえる力」をついつい抜いてしまうのが原因。押さえてないから飛んでいく。
気をつけるポイント
めくった皮の、背と腹の部分が、均一にこの部分までもってこれますと、
まず失敗はありません。
上の場所まで来れば、最後までキレイに剥けます。
腹骨に達するまで剥いた皮の上下を同じように持ってくることです。
腹骨に来る前に無理に庖丁を走らせると、腹骨の始まり部分で下側が切れて背の方だけになり、腹の方の皮が破けて身をひっつけてしまうという訳なんです。(ガンバラ部分は腹に向けて湾曲しているからです)
下の様に、上下の皮の端を途中まで(腹骨の湾曲が終了する辺りまで)同じように持ってこれたら、皮引きは失敗しないのですよ。
ガンバラ(腹骨)の後まで力を抜かないで面倒みてやれたら、ご覧のように完璧に剥くことが出来ます。
それでもなかなか上手く出来ない方は、下のよう浮く(ひっかかる)部分をカットしてから引いてみましょう。
妨害要素をあらかじめ排除してやるということで、こうするとミスもなくなるでしょう。
三枚おろしの失敗も、同じような箇所が問題になっています。
→オロシや皮引きの邪魔になる腹骨と背びれの付け根とは
でもね、なにも慌てる必要なんかないんですよ。
魚の構造を手が覚えるまでには長い年月がかかるもんなんです。そうなる前に「手早さ」ばかりを追ってはいけません。速さより「正確」を心がけて下さい。失敗しないやり方を日頃心がけていましたらね、いつの間にかこんな作業は「秒速」でやれる様になっているもんなんです。
ついでに記しておきますと、魚の皮引きは皮が乾燥してるとうまくいきません。
例えば三枚にして皮を付けたまま冷蔵保存するとしましょう。こうすると必ず皮から水分が飛んで乾いた状態になってしまいます。このまま普通に皮を引くと大体は失敗します。その場合、皮を引く前に皮だけを濡らしてみてください。湿り気を与えてやると引きやすくなります。
また、中型魚の庖丁による皮引きの失敗は途中で切れる事です。その対処方法はこちらをお読みください。