つぼ抜き
ツボ抜きは、魚の腹を切り開きたくない場合に使うワタとエラの抜き方です。
例えば、カサゴは煮付けが大変美味い魚で、武家の祝い膳に使われた魚ですから姿を生かして煮付けにしたい。鎧兜の荒武者を思わせる笠子の頭は付いていた方がいいですからね。できるだけ形をそのままに、腹も切り開かずに料理したいもの。
ところが普通のさばき方ですと、どうしても腹を切って内蔵を出します。『隠し包丁で』見えない部分を切り開く方法もありますが、武士の家では「腹切り」は縁起が悪い。どうにか腹を切らずに捌けないものか?そのへんからでしょうね。
他にも、アユの姿焼きやマス系の川魚の甘露煮など、腹を裂く事で形が崩れるのを避けたい料理に使います。まぁ鮎の場合はサンマ同様内臓を賞味できる焼き方をするのですが、料理によっては抜いたほうが良いケースもあるのです。
※アユの塩焼きは通常ワタを出しません。
釣りなどで姿の良い魚を入手した場合などに、姿の煮付けを作ってボロボロにしてしまった経験がある方も少なくはないでしょう。アレは単純なように見えて非常に難しい料理ですからね。
細かい神経を配って小さなテクニックを駆使しないと、どうしても身が割れたり皮が弾けたりするのですよ。そうなる原因の一つが「さばいた時に切った腹」ですね。煮崩れの要因は他にもたくさんありますが、魚に切り目がないことは姿を保つ条件の一つにはなります。
その他、「腹に切り目がなくワタもない」という状態でしか作れない料理は沢山ありますよ。覚えておいても損はないさばき方です。
つぼ抜きのやり方
ツボヌキの方法をカサゴを使って説明します。
笠子のツボ抜き
(1)エラを両側からはさむ形で、奥まで割り箸を入れます。
サイズが大きい魚や、割箸が頼りない時などは、エラの付け根だけ庖丁で切断しておきます
(2)そのままグルグル回して引っ張り出します。
(3)このようにエラと内臓が同時に取れます。
黒そいのツボ抜き
今度は黒ソイです。
エラの外側から割箸を挿入しているのが分かりますね
この状態から箸を回すと、捻られる格好になったエラは付け根から切り離されるのですね。エラは内臓とつながっていますから、あとは引っ張ればよいというわけです。
ポイントは、箸を行き止まりまでしっかりと挿入しておくことです。
これによってエラにガッチリと力が掛かり、付け根を断ち切ることができるのです。挿しこみが甘いと挟み込みの力がかからず、中途半端にエラをボロボロにしてしまう結果になるだけで、内臓も出てきません。
・割り箸を奥までしっかり
・エラの付け根を切断する
・何回も回す
ここらあたりが肝心です。
つぼ抜き② エラブタから箸を入れる
魚は必ずしもカサゴなどのように口が大きいわけではありません。口の小さな魚とか小魚類は、口から出すのが難しいケースもあります。
そういう場合は、エラブタを広げて横から箸を突っ込むといいでしょう。