藤次郎包丁とグローバル包丁

  

藤次郎-プロとグローバル-プロ

上がTojiro・Pro、下がGlobal・Pro



藤次郎は包丁メーカー『藤寅工業株式会社』の製品、GLOBALは洋食器メーカー吉田金属工業株式会社(YOSHIKIN)の製品。ともに新潟県燕市の会社です。

燕市(つばめし)は新潟県の中央部にある市で、日本を代表する金属製洋食器の産地です。国内生産シェアは90%超。刀から柄までオールステンレス一体構造の包丁が誕生した背景と言えるのではないでしょうか。

一体構造の包丁の特徴は、当たり前ですが「柄が抜ける事が絶対にない」ということ。木製の柄(ハンドル)だといずれ腐るし、黒檀などで腐らない場合でも細菌が繁殖したりしやすいものです。マチから口金にかけては手入れもし難い構造なので洗うのも手抜きがちになりますから衛生的とは言い切れないものなのです。

この問題を見事にクリアし、刀から柄までオールステンレス一体構造というデザインによる陳腐さを巧みに避ける独特のハンドルデザインにも成功しているのが藤次郎とグローバルでしょう。

一体構造包丁のハンドル

グローバルの特徴は巧妙な角度を持つハンドルのグリップ線とブラックドット(穴)

このドットパターンでステンの冷たい感触を和らげると同時に滑り止めとしての機能を持たせているわけです。

一方の藤次郎のハンドルはご覧の様に右側と左側が左右非対称。

片側にだけ刻まれたトルネード模様がTojiroシリーズの白眉。
この左右非対称は伝統的な和片刃包丁の「シノギ」を表したもので、水や油の残る手でも滑りにくい構造なのです。そして一体型ハンドルは、180℃の熱湯消毒も可能です。

『18-8ステンレス鋼モナカハンドル』

ステンレス包丁(鋼材)としてのTojiro&Global

二社とも金属工業の街のメーカーですので、ステンレスの特性を最大限に引き出す技術は傑出しています。

普通のステンレス包丁で物足りないと思う方に最も向いた素材がスウェーデン鋼にモリブデンとバナジウムを添加した鋼『モリブデンバナジウム鋼』だと思います。

これは最先端の刃物でなければいけない医療用メスに使用されている素材と同じだと言えば納得できるのではないでしょうか。

トウジロウ包丁もグローバル包丁もこのモリブデンバナジウム鋼を採用しています。

グローバル包丁

グローバル包丁はぼぼモリブデンバナジウム製。
藤次郎包丁は藤寅工業得意の『割り込み』によりコバルト合金をステンレス鋼で挟んだ刀身にて「切れ味」「研ぎやす」「錆びにくさ」を実現させています。いわゆる複合刀鋼包丁です。

藤次郎包丁

●DPスウェーデン鋼
へガネス法と呼ばれる低温ガス還元法で不純物を取り除き、精錬・製鋼された特殊ステンレス合金鋼。耐食性・耐摩擦性に優れる。DP加工により折れる心配がなく、安全で研ぎ易い。

●SDスウェーデン鋼 
DP法・内部脱炭防止法を使いスウェーデン鋼海綿鉄をベースにモリブデン・バナジウム・クロームを添加(3枚複合 SDスウェーデン鋼)
トウジロウ プロシリーズ
鋭利性、耐久性、耐錆性、抗張性(ねばり)、耐摩擦性すべてにおいて本職を満足させるプロ向け包丁。

●ダマスカス
藤次郎は積層のダマスカス(墨流し)も得意としています。
切れ味は勿論、美しさも充分。


ニッケルダマスカス鋼割込 洋包丁シリーズ

錆びにくい包丁の特徴

ステンレス包丁は錆にくく、耐摩耗性があり、切れ味が長持ちするが、刃欠けしたり研ぎが難しくなったりする面もあります。複合材はこの面をあるていど向上させます。すなわち刃欠けし難いし、研ぎやすい。

しかし実際には程度の問題でして、全ての包丁は欠けますし、そんなに簡単に研げもしません。そもそも楽して包丁を研ごうなどと考えるのは間違った発想です。

特に両者ともに「プロ」シリーズはきちんとした砥石で研がないとすぐにナマクラになるので手入れには注意ですよ。グローバルはハマグリ刃付けですので若干研ぎ方が難しくなりますが、慣れればどうと言う事はございません。

ただし『錆にくさ』に関してのみは、この二種は「完璧」の水準に達している。まず錆びる心配は無用ですので、そんな人はいないとは思いますがもしこの種の包丁を錆びさせる人は、包丁を持つのをやめた方がよいと言えます。