サンマのさばき方裏技
一箱5キロ入りの秋刀魚を、すべて捌いて三枚に卸してガンバラ(腹骨)まで取った状態の「上身」にしてしまうのに僅か10分足らず、って方法をご紹介しましょう。
梅雨時の秋刀魚はどうよ、ちょいとばかり早すぎんじゃねえかぃ?とも思うんですが、そんなこたぁお構いなしに秋刀魚が出回ってる按配です。
秋刀魚をおろす時はね、普通ちゃっちゃかと大名に卸します。頭とってワタ出して水洗いして三枚にするまでは、どんなに手早くなっても限界があり、5キロで数十分ってところでしょう。
問題はガンバラスキでしょうな。
ガンバラはこのブログのあちこちで書いてきました様に、下の様な感じで取ります。
すべての魚に共通したやり方でいわば基本です。
でもこのやり方では10分台は無理です。秋刀魚のガンバラ取りは意外と時間と手間がかかるんですよ。
そこで、この基本だらけのブログにしちゃ珍しい〈裏技〉を紹介します。
2動作でハラ骨が取れる包丁使い
サンマのガンバラってのはね、庖丁の刃で切らなくても、押さえるだけで取れるんですよ。 皮の方から切るんです。
こうして直線に切り込みを入れ(下の骨まで切らないように注意)
刃先をここに引っ掛けて
あとはサンマをつかんで引っ張ると
ものの見事にガンバラだけがベリベリと取れます。
通常のやり方とは反対に裏から切る訳で、
ですから「裏技」ってなもん。
裏の身も同じです
押さえてベリベリってな感じ。
この方法を使う事によって、驚くべき早さで大量のサンマをさばく事が可能です。
こいつは画像のみで伝えるに無理がありますんで、動画を撮ってみました。速さってのを伝える為です。
動画で説明
まずは通常のさんまガンバラ取りはこうです。
次は秒速で秋刀魚ガンバラをすく方法。
これはね、ガンバラの中骨側は固定されてなくて「浮いている」状態を利用したものです。
下側のガンバラ骨はハラモに食い込んで固定されてますね、ですから下側だけを切ります。そこを切ればガンバラは完全に浮きますので、少し押さえるだけでめくり取れる訳です。
皮目を切る時に少し力を加減するのがコツ。
ではゆっくりやってみますので、じっくり御覧下さい。
こういう包丁技は基本を覚えてから
しかし、必要も無いのにこの方法を使えば「はしょり」ですんで、魚は基本に忠実に捌いて下さい。そうでないとこのブログに書いて来た事も無意味になってしまいます。
ただね、今の業界はどうしても現場で「早さ」を求められる場面が多くなると思うんですよ。
魚を扱う仕事の方は多分大勢おられる事でしょうし、その中には大量のサンマを捌かなければいけない人も必ずいるはずです。大きな回転寿司とか忙しい鮮魚店とかね。
週末に売り上げが一日百万超える店は結構ありますけども、そんな店ではアジやサンマも10キロ単位でしょう。のんびり仕込みに時間はかけられません。
このさばき方を覚えれば大幅な時間短縮になります。
内心はそんな傾向に不毛を感じていますが、おいらだって若い時は魚さばきや寿司握りでは「誰よりも早く」を意識したもんです。他のヤロウの倍の速さでこなしてやるって意気込んでました。その意気込み自体は否定してはいけないと思うんです。
早いってのは頭が回転してるってことで、けっして悪い意味の「せっかち」ではないんですよ。スピード違反にはブレーキがあるが、ノロノロ運転のアクセルは飾りで実用性は無い。速い職人は遅さを語れるが、その逆はないってことです。
ただし、全ては「基本」です。
それが出来て以降の問題だってのをご理解ください。
基本のさばき方がまだまだの人は、いきなりこのさばき方をやってはいけません。ここに貼った動画は少々乱暴な扱いに見えます。手早くやろうとすればどうしてもそう見えてしまいますが、「速さの中に基本あり」です。最初から「崩し」を覚えてしまえばロクな事にはなりません。しっかり基本をマスターしてから。それが自分の為になると思います。
どんな世界でも結局は「うさぎと亀」です。
基本を忘れない者が最後の勝利を飾るんですよ。
ですから手が遅いって悲観してはいけません。コツコツ頑張ればいいんですよ。努力した日々が無駄ではない。それが職人の世界なんです。