スズキの刺身と洗い
前ページの ←スズキのさばき方 で、三枚におろせましたら、スズキの身(上身)をさばいて、刺身と洗いに作ってみましょう。
スズキのサバキは、アジなどに比べるとやや難易度が高くなり、けっこう難しいもので、特に身が「活け」の状態ですと板前でさえオロシで失敗してしまう人もいるくらいです。
身に弾力があること、骨が硬くて独特の構造をしていること、背の方の肉にある「わかれ身」がくっきりしており扱い難いこと、これらのことからスズキのおろし方は簡単とは言えませんが、だからこそスズキを綺麗に捌けるようになれば「魚のおろしをマスターした」と言えるのです。
切れる包丁で、基本に忠実に、落ち着いて慌てない。
そうしたことを意識しておくと上達しますよ。
スズキ刺身の作り方
(1)スズキを上身にする
三枚におろしたスズキのガンバラ(腹骨と腹腔膜)を切り落とします。
この状態(おろし身+腹骨なし)が、上身(じょうみ)です。
小型なら中心の小骨を抜き、節にせずそのままの方が良いですが、スズキの小骨は身に絡みつき簡単には抜けません。背と腹の2つに割ることで中骨を除去します。
(2)スズキの皮を引く
これは内引き。
これが外引きです。
初心者には内引きがよいかも知れません。
下の記事を参考にして下さい。
失敗しない皮の引き方→
皮引きできた上身
※スズキが大きかったり、うまく皮引きできない場合、下の手順で背と腹2本の節にした後で1本ずつ皮を引くと、非常に簡単に引けるようになります。
(3)スズキを節に(柵取り)する
上身を手で裂く
スズキだけの特徴なんですが、背の部分に筋が一本深く皮まで切れ込んでいます。
ここをどうするかは料理の目的で違ってきますが、活けの身を刺身にする場合このままでは不細工になってしまいます。
(まったくこれと同じなのがハタです。ハタもこの方法が使えます)
そこで下の様に持って裂いてしまいます。
まるで庖丁で切り込みを入れてあるかの様に、ベリベリ簡単に、
しかも直線に裂けます。
これだけ深く筋が切れ込んでいるという事です。
これをそのまま刺身にしては、この谷間(切れ目)が残ってしまうんですね。
外すとこうなります。
これらの扱いは「活けに限った話」です。
つまり、身がゴムの様に弾力にみちている活けの間は、身割れする心配がまったくないからなのです。
活けから死後硬直に移行した後の魚(通常販売の魚はみんなそうです)は、この扱いをすると一発で身が割れてしまいます。
ですから普通の魚は上の様な持ち方や扱いをしてはいけません。
刺身用の節/柵にする
小骨は抜きませんので上下二本の「節」にします。
血合い小骨は尾部にはありませんので、こういうカーブで切り分けます。
中心の血合いを小骨ごと細く切り落とします。
これで刺身の引ける状態になりました。
スズキを刺身に切る
そぎ作りで刺身に引きます。
やりにくい様なら背を上にして切る方法でもかまいません。
(刺身(そぎ・薄作り)は必ずしも身の方から庖丁するとは限らないのです)
身が活きてる状態ですので非常に切りにくいですが、あまり薄く切る必要はありません。スズキの洗いはある程度の厚みがないと食べて美味くないからです。
この様なゴムの様に締まった活けの身を切る場面で、本焼庖丁がいかに切れるか実感することができます。
霞や他の庖丁とは段違いになる場面と言ってよいです。本焼の切れを堪能できる瞬間ですが、もちろん他の庖丁でもかまいません。
スズキを洗いにする
引いた刺身を洗いにします。
身が半透明になり白っぽくなれば完成です。
洗いの具体的な作り方は、真鯛の洗いを参照してください。
洗いの作り方→
『すずきの洗い』について洗いと言えば、鯉とスズキ。カレイやマゴチもなかなかですが、夏はやっぱりスズキの洗い。今あげた魚たちは、独特の臭いと脂があります。それを洗い流して、コリコリした食感と旨味だけを引き出すのが『洗い』です。先人達の知恵には頭が下がります。 薄く切った身を、氷水に入れて10分もおきますと、余計な脂がアクとなって抜け出し浮いてきます。そして身ははぜて、プリプリになります。 水につけ過ぎるのは禁物です。旨味が溶け出しちゃう。ここら辺が板前の勘所。最高のタイミングで取り出さなきゃいけない。水の代わりに酒と天然水を割った『玉酒』を使う場合もあります、ちょっと贅沢な方法ですが。 |