アジ系の銀皮を出す
魚の皮を上手に引く(1)で、銀皮の意味を説明しました。
ハマチ・カンパチ・シマアジのアジ系三兄弟は、とても見る機会が多いと思いますが、今でも「刺身にしたとき皮目が赤色(血合いの色)の方が良い」と思っている方が世の中には非常に多いようで、それはそれで間違ってはいないでしょう。普通に食べる分にはそれでも良いわけですから。
疑問のある方は前ページを見てくださいね。和食にはそんなふうな考え方・やり方もあるんだとご理解ください。
以下、かんぱち、はまち、しまあじの順で銀皮をつけた引き方を紹介していきます。
ハマチ・カンパチの皮引き
カンパチの銀皮
カンパチは「外引き」で説明します。
端を刃でめくり、銀の層の上に包丁を入れる
鱗下の層と、銀皮の層が見えますね
位置を決めたら庖丁を強く固定し一気に引きます。
皮目に赤い血合いの層が見えないのが銀皮つきの特徴です
ハマチの銀皮
ハマチは「内引き」でやってみましょう。
腕を交差させて庖丁をまな板に押し込むくらいの感じで包丁を入れる。最初が肝心です。始めに包丁が銀の上に正確に当たってないと、成功させるのは無理です。
やったことのない人は、信じられないほど強い抵抗を感じて包丁が止まってしまうくらいです。かなりの力が必要です。
このように血合いの赤を出さずに、白銀色(ハマチの場合)になるのが銀をつけた皮引きです。
「普通、ハマチの刺身は皮目が青黒くなるだろ、
こんなふうに」
「これが上手な皮引きで、皮目が赤いのは下手くそな皮引き。それが常識」
「銀皮、何コレ?」
「こんな白っぽいの、筋が残ってゴワゴワしないのか?」
しないのです。
勘違いしている人たち(料理人に多い)は、筋のある層がそのまま残っていると思っているのですよ。
凍結したハマチ、サーモン、それにカツオの節は、手で剥いて銀を残すことが可能です。しかし、この手の魚の皮を手剥きにして銀をつけると、必ず「すじ」まで残ってしまいます。
これは皮の層が断裂・分離しているだけで、繊維が残るからです。銀皮層の上の層まで残っているというイメージですね。
これは「引き剥がしている」のと同じで、皮引きとは言えないのです。引きちぎっているのとおなじなので、当然ながら筋が向こう側にたくさん残ります。これを刺身にすると「ゴワゴワ」するのですよ、筋っぽいし。
手剥きでなく包丁でやっても、加減を間違えると「筋の層を身に残す」こともある。
コレと包丁できっちり引く銀皮は意味が違うのですよ。
スレスレで筋の層も削り取ってしまう。だからこそテクニックと強い力が必要なんです。
切れないナマクラ包丁では絶対にできませんし、皮引きに熟練していないとまず無理です。
※カンパチは頭側から外引き、ハマチは尾から内引きにしていますが、これはあくまで例にすぎません。自分がやりやすい引き方でけっこうです。
シマアジの銀皮
シマアジは手剥きでもあまり筋が残りません。
(サバやアジなど小型魚の薄皮と少し似ています)
だから手で剥いてしまう板が多いのですが、難しくても板前ならやはり庖丁で引きたいもの。
これは外引きでやっている例です。
うまく銀が出せました