ナマコ
なまこのさばき方は結構簡単ですよ。
キュウリをスライス出来ればナマコも庖丁できます。
それほど簡単。
ナマコは必ず生きたものを使用します。
生きたナマコは触ると変色しますのですぐに分かります。
「海鼠」又は「海参」と書きますが、海参は海の人参って意味でして、中国では特に乾した『乾海参』が超高級品です。「本朝食鑑」によれば、癌の治療薬としての効果すらあるらしいですな。
外洋にいる赤ナマコと、湾内にいる青ナマコの二種がありますが、赤のほうが旨い。ナマコは南の海で見かける事が多いですよね。でも寒い季節が旬でして、夏は寝てます。寒冷性のナマコもあり、「キンコ」っていいます。これは黒色。キンコを干したものは最高級品として凄い値段で中国に輸出されます(干しアワビも同様)
キンコ
腸は「このわた」、卵巣は「くちこ」(ばちこ・干し子)
両方ともに塩辛にします。
クチコは干したものをよく使います。
カラスミと並んで炙り物の高級品。
バチコ
ナマコのさばき方
ナマコはイボがしっかりしていて、ツヤがあるのが上物。
包丁でパチンと叩いてやると身が硬くなって扱い易くなります。
なまこの水洗い
① まず両端の硬い部分を切り落とし
② ひっくり返して腹を上にし、縦から包丁
切り開き
③ 開いて内側から両端に堅い部分が残っていないか確認し、残っていれば削ぎ落としておきます
④ なまこのワタをつまみ出します
これは食べられますので取っておき、最後に処理します
⑤ 白い粘膜状の筋があるので骨抜きなどを使って掃除
(取らなくても構いませんが、無いほうが食べやすいです)
⑥ 塩をたっぷり振り
⑦ ザルをかぶせる様に覆い、ぐるぐる回すようにして動かしてやります(塩摺りの1種です)
⑨ 流水でさっと汚れを洗い流せば水洗い完了です
なまこの切り方
① 通常のサイズなら縦から2等分にし、やや大きいナマコならば下のように3等分にしましょう(なまこは固いものですから、大きいと食べづらいです。やや小さめにカットした方が食べる人に親切)
② 小口から2~3ミリの厚さにスライスしていきます
※スライスする時のナマコの上下はどちらでも構いません。塩などによる収縮反応で変形していますから切り難くなっている筈です。ですから、背でも腹でも「まな板に置いた時に安定する方を下に向けて」切ると、安全で切りやすいですよ。
小さいナマコのさばき方
小型なまこは、開かずに切ったほうが良いです。
サイズが小さいナマコを開いて縦半分にすると、スライスして酢にした時にはあまりにも小さくなりすぎて、これはこれで食べにくいですから。
① 上と同じくまず両端(肛門と口)を切り落としましょう
② 内蔵は「筒抜き」で押し出して取ります
※筒抜き
箸などを使って中身を出してやることです
菜箸よりも割箸を使ったほうが綺麗にワタを出せます。
片方の切り口から割箸を2本差し込み
箸をグルグル回しながら向こう側に押す
割箸が2本であることで、うまい具合にワタが巻き付いて出てきます
包丁先で擦るようにしてワタを外す
このあと上と同じように塩摺りして洗います。
③ 筒状のまま「輪切り」にスライス
コノワタの作り方
水洗いしたときに取っておいたワタを処理しましょう。
黄色っぽいものが生殖巣(このこ)で、細長く泥が入っているのが腸管(このわた)です。
腸を包丁先でしごくようにして泥をかき出します
この子を干して乾燥させると自然に三味線バチのような形になり、これが「バチコ(くちこ)」なのですが、口子を作るには非現実的なほど沢山のナマコが必要になります。ですから腸管と一緒に塩辛にしてしまいましょう。
ワタと同量の塩を振って容器に入れ、一晩寝かせば食べられます。
ナマコ酢の作り方
スライスしておいたナマコを合わせ酢に漬けます。
なまこ酢の一例
だし10 味醂0・5 砂糖1・5 酢3~4 濃口醤油1・5 塩少々
お好みで調整して下さい
面倒であれば市販の三杯酢でもけっこうですよ。
ワタの塩辛も添えて、刻みユズなどを
柚子でなくとも、大根おろし、おろし生姜などお好きなものをどうぞ
ポン酢でも美味しく食べられますが、その場合はモミジオロシと青ネギを添えるといいでしょう。
ナマコの保存方法
生きたナマコは2~3日程度で死に、死んだらすぐに腐敗しますが、合わせ酢に漬けておけば冷蔵保存で1ヶ月ほどもちます。
スライスした状態で漬けておいてもかまいませんけども、どうしても酢が回ってしまい固くなるし、長く置いておくと合わせ酢が汚れてきます。
数日で食べきれない場合は、下のように姿のまま(水洗いはしておく)で合わせ酢に漬けておくと良いですよ。食べるぶんだけ取り出してスライスします。
ナマコ その他
ナマコは酢の物が一番ですが、煮物にするケースもあります。
加熱で皮が汚く剥げてしまうので、皮を擦り落として旨煮にするのですが、赤ナマコの場合は煮る前にさっと番茶で湯がき色を出す方法もあります。この場合は軽めに煮て色を保つように仕上げます。
「なまこ」は30cmにもなる個体がいます。 もともと変な生き物ですし、見方よって「気味の悪い生物」とも言えますから、このような大きいナマコは少しばかり不気味ですね。 料理人の間でも「ナマコを最初に食べた人間は勇気があるよ(笑)」という定番のジョークがあるくらいですから。 上に書いたとおり、「赤なまこ」(あかこ)と「青なまこ」(あおこ)の二種類があり、赤ナマコの方はやや深場の岩礁帯、青ナマコは内湾の砂泥底に生息しています。(亜熱帯の珊瑚帯には「くろなまこ」が多い) 「青なまこ」の中に時々真っ黒い個体が混ざっていることがあり、これは「黒なまこ」といいまして「あおこ」とは種類が違います。 しかし、もともと市場では赤ナマコと青ナマコさえ特に区別することもなく(最近は赤と青を分けるケースも多い)、たんに「なまこ」として色々な個体が混ざった状態で売られていたのです。 ですから「赤なまこ」「青なまこ」「黒なまこ」の三種類を厳密に区別することもありません。赤がやや美味いとされてますから、赤ナマコはハッキリと分けますが、青やら黒はごちゃ混ぜなんですね。 (中国で高値の干したナマコ/海参(いりこ・きんこ)は黒ナマコで作る) 本当のところ、赤にしろ青にしろ「味に違いがあるかどうかは疑問」というのが正解に近く(それでも赤ナマコは微妙に美味ですが)、さらに言うと「栄養や効能もゼロに近い」というべきかも知れません。栄養学的にみた場合、ナマコのほとんどは水分であり、やや無機質(ミネラル)が多いくらいです。しかしそのミネラルにしても極めて微量で、「意味のある栄養」と言えるほど摂取できるものではありません。 であっても、極めて古くから「健康に効果がある」という伝承があるのも事実であり、この伝承もまんざら迷信と思えないのです。 中国人が異常とも言える高値で干しナマコを購入する理由も、「健康効果」が大きく、それは千年以上の期間におよびます。「何の効果もない」のであれば、こんなに長い期間伝承が続くでしょうか? 日本でも古事記の時代から重宝されていたのです。 (迷信が続く可能性も否定はしませんが。海燕の巣、犀の角、象牙、赤珊瑚などの問題もありますし) ナマコは朝鮮人参の薬効成分であるサポニンを含んでいることが確認されていますし、これから先も未発見の薬効成分が見つかる可能性もあるでしょう。 それはそれとして、栄養やら違いやらという話よりも、「食材としてどうか」とみるのが、正しい考え方だと思いますし、そうあるべきでしょう。 酒の肴として、ナマコは非常に優れた「珍味」だと思います。 これは間違いありません。 とくに「クチコ」はある意味で驚嘆すべき珍味です。 腸管(胃腸)を塩辛にした「このわた」もなかなかですが、生殖巣(卵巣、精巣)を乾燥させて作るクチコ(ばちこ) これこそ「最初に考えた人は誰なのか」と言いたくなるほどの珍味。なにしろクチコを五枚作るのに百キロほどのナマコが必要になるのですからね。 ちなみに、コノコ(卵巣)を干したものがクチコだと思いがちですが、オレンジ色のコノコだけではなく、クチコは白っぽい精巣も混ぜてから干したものです。この方が味が濃厚になるからです。 ナマコは雌雄異体なので、開くまでオスとメスの区別がつきませんから、その意味でも「クチコ作り」は大変です。 ナマコは日本中に生息していますけども、有名な産地は三河、伊勢、そして能登です(漁獲量の多さでいえば、北海道、青森県、山口県)。とくにクチコは能登の独壇場と言っていいでしょう。能登の穴水湾のナマコ(くちこ・このわた)はとくに有名です。 |