板前の鮨板前観察
とにかく寿司屋を回る事が多いですねえ。異様なくらい寿司が大好物ってわけではありません。商売柄ってのもありますが、ホンネは寿司板前観察が目的。
寿司板がどういう仕事をしているのか丸見え。とにかく面白いですね。それだけで代金払う価値はある。
考えてみりゃ寿司職人は因果な商売ですよ。仕事の一部始終を客に見られちまう。ちょっと他には無いでしょう、こんな仕事は。
板前の居ない大型回転寿司には行きません(一人の時はですが)。だって板前いなきゃつまんないもの。
ただし面白いのは「忙しさにおわれた時の板前」です。ですから巡回する寿司屋は繁盛店になります。
都心では事欠きませんね。歩けばそんな寿司屋がいっぱいありますから。
個人的に鮨を楽しむ馴染の店はまた別。ゆっくりと鮨を食べる時はそんな鮨屋に行っています。
腕の良い寿司職人
さて、忙しそうな繁盛寿司屋のカウンターに座る事ができました。まず座るとすぐにネタを見るふりして庖丁を見ます。
庖丁をまな板のどの位置に置いているか。
忙しいからって錆びた庖丁使ってねぇか。
真っ直ぐ研いでいるか。
折れ、欠けはないか。
どこの庖丁屋の柳を使ってるか。
その他いろいろです。
次にネタを目で一巡。秒速(笑)。ギョク、アナゴ、コハダは昔の話。今はエビを見ますねまっ先に。
忙しい処は一日に百貫以上握ります、海老だけで。ちゃんと仕込んだ海老か、寿司ネタ用の開きか。エビの丸みで一発で分かります。
都心は地価が高いので繁盛店といえど店は狭い。日に百万を売ろうって店は仕込み場を別に持っています。とてもじゃないが仕込みしながらそんなに売れません。
それぞれ何十キロって魚介を店で捌けはしません。煮物もあるし玉子も焼く。(河岸玉でなきゃですが)そ。れだけで一日仕事になってしまいますからね。
広い店はまた別ですが、都心は大概そんなもんです。つまり「売り板」と「仕込み板」が分業してるのです。
ネタを眺めて仕込み板の腕前を推測してみる。チビチビやりながら売り板の仕事を見る。
ぎっしりのカウンターのお客に注文を受けてます。でも座敷や卓の注文も作らなきゃいけない。それに「おみや」もある。持ち帰り寿司です。
限界を超えた忙しさ。それをこなさなきゃいけません。でなきゃそういう店のタチ板はつとまりませんからね。
頭のネジがぶっ飛ぶそんな忙しさだからこそね、板前の本当の人柄とか力量がよく見えるんですよ。
忙しさで脳ミソが揺れもしましょう。するとここに書くのもはばかられる事をやる板も出る。食品衛生法違反?で逮捕ですわ 笑
ホールの人間を怒鳴るのは序の口。カリカリして客にあたる馬鹿者もいたりする。メチャクチャな寿司を客に出す。
しかしね、そんな環境ながらまっとうな仕事をする板もいる。落ち着いて忙しさをこなし、仕事も丁寧です。
そんな板を見たくて寿司屋に行ってるんです。
そういう環境だから人間の本当の姿が出ます。おいらには輝く玉に見えるんですよ、そんな板は。
ちなみにやはり気になるのは巻物です。細巻き寿司ですな。
以前パンク鉄火巻の事を記事にしましたけどもね、今回はネギトロとイクラの細巻です。
両者ともまともに巻けてるのをあまり見ませんねぇ。
ネギトロ細巻は芯がただの線になってる。
イクラは潰れてシャリがオレンジ色になってるだけ。
柔らかいネタを鉄火やカッパと同じに巻いてはいけません。下の様に具が何か分かるように巻きます。
ネギトロ細巻
イクラの細巻
ネギトロ巻とイクラ巻→
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お疲れ様です。
最近職場近辺(西新宿)で、良いと思える鮨店を見つけまして、昼休憩時には何となく、その寿司屋の方向へ足が向かいます。
13:00を過ぎてから一人で暖簾を潜ると、威勢の良い「いらっしゃい!!」の声の後にカウンターへ案内され、ゆっくりと鮨を頂きつつ、職人さんの仕事ぶりを観察させて頂いています。
大将が私の視線を感知している様子を微妙に覚えながら、彼の庖丁使いを素人目で追いつつ、美味しく頂いております。
私は頂くだけで職人さんに声など掛けませんが、密かに他の客とのやりとりを見ます(若造のくせに全くイヤな客ですね私は)。
常に視線に晒され、且つ他の常連客と歓談しながら、手仕事を同時進行させている鮨職人さんには頭が下がるばかりです。
威勢の良い声(反応)とか、少なくなったガリを補充してくれたりとか・・・ 仏頂面で無言で喰ってる自分に対しても渾身の気遣いをしてくれる。
自分も接客業でメシを喰っていますが、彼等の次元には到底及ばないとさえ思えます。
普段の昼は自分でこさえた弁当で済ましていますが、月に数回程度、朝寝坊した日にその店で昼を取る事が、楽しみであります。
Posted by whatever at 2009年10月17日 21:23
こんばんはwhateverさん。
全然嫌な客ではありませんよ(^_^)
嫌な客とはね、板前のツラも見ずに、いっぺんに十種類ものネタをいきなり注文する人。飢餓の亡者じゃあるめぇし、座る前に「トロッ」って来る人もいます。そんなに慌てなくても逃げやしないんだっての(笑)
寿司職人はね「客に観られてナンボ」なんですよ。
何年やっても客に見られない板は職人失格です。
良い鮨屋の様ですな、行くペースも良いです。
食べ物屋だけでなく、いい付き合い方のコツはね、
「付かず離れず」なんです。
親しくなり過ぎず、しかし定期的に顔を出す。
板前としてもそういうお客さんの方が好ましいものなんです。
>普段の昼は自分でこさえた弁当
あなたの様な若い方がいる事がね、おいらは何故だかとても嬉しい。
Posted by 魚山人 at 2009年10月18日 00:05
今日ゎ本当にストレスな一日†只今帰宅しました。
お疲れッス!(am1:35)
一年以上も クッダンネェ コメしちゃってんな俺…ツカさ 俺にしてみりゃね!
『肉体疲労時ゎアリナミンA!』
でなく
『糞ジジイblog!』
なのよ(笑)
さらしの見習い板も 長いことやってっとさ ぉ客サンが『何を、何処を、』見てっかわかっちまう。(笑)それが爺の目線さ
でも俺ゎ苦手ジャネェよ
正しく言うと 嫌いジャネェ!
俺ら鮨屋に勤める見習いゎ和食の閉鎖された板場に比べたら どんなに楽か。
だってね 下手くそが武器になっからね(笑)←(ちょいと悪乗りね)
ネギトロ イクラ 巻物ゎ最近進化しまくり。ひと-つダメ出し!巻物もマキスで巻くなら 角をキメネェとなぁ(笑)
ダシ巻きも 同じ!ようするにキメるとこだけゎ最低限キメようぜ!若者諸君!ミタイナ…
『マキス』←これね 手品に欠かせない道具なんすよ
鮨屋の見習い板にゃね
細巻きを巻く感性ゎすなわち ぉ客サンに対する姿勢が表れるんだなぁ-これが…
が…忙しいとツイ(┰_┰)
俺も一応人間だし…
ってな気持ちになった輩!
ジジイの処方箋に従ってみてくださいな。
頭で覚えずに 感性に叩き込む感覚ですよね?爺?
ちなみに角が無くてイイ巻物ゎ オカル巻き以外に存在しないことを祈ります†アーメン
Posted by 鯔次郎† at 2009年10月19日 03:02
お疲れ様鯔さん。
固定観念があるようなので今日は厳しくいこうかね(笑)
>他の細巻と同じに巻いてはいけません
そう書いております(笑)
ネギトロ、ウニ、イクラは角を立てる必要はありません。
その固定観念が芯を潰す原因ですよ。
この三種ネタは角をつけたその瞬間に潰れます。
「海苔しろ」を留めるだけ。それだけでいいんです。
この画像は芯のネタを見せる為に思い切りアップで撮っています。
おいらの手のひらと細巻のサイズのアンバランスな比率。
つまり
遠目には角に見える(盛り込んだとき)
だがよく見れば角が丸い。
そう巻けばいいんです。
マキスで角をつけてウニやイクラの粒が残った細巻きがあるなら見せて下さい、鯔次郎さん。
どうしても鋭角な角にしたければ、少し落ち着いてからマキスでそっと「引き起こして」角をつければいい。
でも角は折詰をきめる為のもの。
本来ならば折詰に入れるさいに六貫に落として盛るのもどうかと思いますね。カンピョウ巻と同じく「汁種」として考えるべきだとおいらは思ってるんですよ。
>忙しいとツイ(┰_┰) 俺も一応人間だし
全国の鮨職人さんに伝えたいのはね、
東京にゃ一日百万売り上げる店の板前の中にも(どんなにクソ忙しくても)、芯が中央に納まった丸いトロ芯が見えるネギトロ細巻き、粒が潰れてないイクラ・ウニ巻き、それを出す職人が大勢います。
その意味をよく考えてみましょう。ってことです。
【仕事に対する姿勢と真っ直ぐな心】
【お客様を少しでも喜ばせようする思い】
それしかないと思いますよ。
ちなみにマキスってのは、和食では「ウ巻き」「伊達巻き」ほか、
寿司では「のり巻き」「太巻き」など
要するに「カド」専用じゃありません。
巻簀ってのはね、寿司では表のツルツルした面を使って角を付けるのが常道なんで、それが使い方だって思われてますが、本当は反対側に材料を巻き込む道具なんですよ。そういう構造になってるんです。
Posted by 魚山人 at 2009年10月19日 11:55
お疲れ様です!
『厳しくいこうかね』←って…ありがとうございます。爺にゎ本当に感謝しきれネェッス。
俺のカキコミに対しての『返事記事』でゎありますが、おそらく相当数の若者(見習い)が拝見してるであろう、爺blogです。なかなか親方や先輩方達も、ここまではっきりと 活字や言葉にして教えてゎくれネェのが実情かと思います。
マキスの使用法云々や細巻きに対する考え方ゎ一応承知しております。
根拠無しな固定観念ゎ なるったけ 持たネェように心がけてもいます。
爺の処方箋にあるネギトロ巻きの巻き方ですが、細巻きとしちゃマキス云々な固定観念よりも海苔の使い方的固定観念を脱っしネェと巻けネェ巻物ですよね?
そのような巻物を提供する板前サンや店が存在することも承知しております。
でも
爺ゴメン…
俺ゎ今世話になってる親方の元にいる以上、爺の処方箋にあるネギトロ巻きゎ提供できません。こんな若者ゎ多数存在するでしょうよ。
だから 爺に『見せて下さい』と言われた細巻きを
いつか写真に撮り お見せします。当然 爺のネギトロ巻きみたいに 一切ヘタレのネェ
ネギトロ巻きでゎありませんが、努力の賜物的片鱗ゎ感じて貰えるかと…
それが今、俺に出来る最高な『もてなし』です。
忙しいさなか 適切な ご指導 読者の一人として感謝致します。
Posted by 鯔次郎† at 2009年10月23日 02:22
お疲れ様鯔さん。
まあそう難しく考えるこたぁありません(^_^)
こりゃおいらの性分ですんでね。
見た目を重視するか、食べて美味しいかの問題ですよ。
職人の好きな様にすればいいだけのことです。
Posted by 魚山人 at 2009年10月23日 06:04