新子の話
シンコはおいらにとって夏のとどめみたいな魚です。盛りは6月と7月。
コノシロの幼魚で4cm、5cmくらいの小さいのをシンコと言います。
7cm、10cmぐらいはコハダ、13cm前後はナカズミ、15cm以上が成魚でコノシロ。出世魚だから名前が変わります。
親のコハダの方は冬や春先が旬になりますが、幼魚のシンコは夏場のみの季魚。
この世界のスタートは寿司屋からですんで、思い入れも一際ですわ。何故かって、シンコってのはね、寿司職人にとって大トロなんかよりもずっと重要な仕事だからです。
シンコと大トロ
コハダは塩の振り方、酢での締め方、一回として同じ加減って訳にはいきません。魚の状態が日によって違うからです。自動化できない「職人の仕事」です。
シンコなんぞ、捌くとほんの3センチくらいにしかなりませんので、いっそう塩と酢の加減がデリケートになってくるんですね。
それがどういう意味かってぇと。
職人で(店で)味が極端に変わるって事です。
だからコハダ、特にシンコは食べに行く店が限定してきますね。シンコやらせりゃ**の親方のヤツに限るって事。
大トロは仕入れで8割がた味が決まるが、シンコは仕込みが8割以上ってことになります。
まだ新米の小僧の頃。
コハダは寿司屋につきもの、しかも安い。だから仕入れでもトロ箱(木箱)でどーんと来る訳です。
小さいからってサバキが楽になるわけじゃありません。ウロコを取り、頭を落とし、ハラワタを出し水洗い。次に腹開きにして腹骨を取る。数が多いから手間は大変でして、ウンザリしたもんです。
すし屋にとって大事な仕事だって気づいたのはずっと後。それからは仕込みにも気合いが入ったもんです。
ニシン科の魚ですが、ニシンみたいに幻にならずに、いつまでも国産ものを食べていたいもんですよね。