腐った包丁の柄
「あのブログおめぇだろ?」
酔っ払いのくせしやがって妙に勘の立つ業界の仲間もおりましてね、まぁそんな事もブロク熱が冷めた一因かも知れません。
そうした連中の多くが口を揃えるのが
「今はさぁ本焼の時代じゃねぇよ。どんな店でもバッタ仕事のご時勢じゃ、本焼出す板はマヌケじゃねぇか。そもそも本焼持ち出す仕事してねぇでしょうに」
てめぇ自身に「クセ」があるからこそ「クセの無いもの言いをしてるつもりでいる」事に気がつかない昔風の職人の口癖です。
時代って奴と自分の「いっこく」さに折り合いがつかねぇ酒のみですな。
確かに「マヌケ」もいるが、じゃあブーたれて本焼を押入れに仕舞いこみ、柄の腐った霞で気のきいた仕事をしたつもりで、その実は仕事あがりに酒で仕事のくだをまく自分はそのマヌケとどう違うのか。
「30~40代の若さなら仕事の出来ないカス板なんぞにシノゴノ言わせねぇんだが、もう年寄りだから我慢してやってられんだよ魚ちゃん」
おいらも年の功、若い時にそんなセリフ聞いたら
「じゃまず仕事見せてからその文句言って下さいよ先輩」
ってな生意気な事言ったもんですが、
今は「気持ちは分かりますよ」って感じで角は立てません。
本音はね
「自分をロートルって認めりゃ、板やめた方がいい」
「昔できたかも知れないが、だからこそ余計な事言わないで欲しい」
分かっちゃいねぇ。
あのね、確かに今の現場は「おっとり」板前風なんぞ吹かしてらんない。戦場ですわ、どこでも。
だからこそ逆にそんな忙しない板場で本焼使おうって人間の値打ちがものを言うんでしょうよ。
リスクの方が多い。錆びる。欠ける。
嫌になってすぐ本焼使うのをやめるのが普通だ。
そんな環境で我慢して使うから値打ちがある。
あの憧れの先輩の様になりたい
だから腕はまだまだでも本焼庖丁を精一杯使う
今のつけ場や板場なんぞ所詮遊び場よ
ガキじゃあるまいし本焼なんぞ出せるかい
前者と後者。
おいらがどちらの板前を買うか。説明は不用でしょう。
板前だけじゃねぇ。
どんな仕事なさっていようと同じ事ですよ。
素直さに勝るものは何も無い。
腐った根から育つ生き物はいないからです。
Comment
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お久しぶりです。
私も魚仙人さんの意見に一票です。
私はお給料を貰って包丁を握ったことは一度もないですが、もし仮に回転寿司などでバイトをするなりどこかの寿司屋さんの門を叩くとしたら、始めの何年かは百均の安物を一日中研ぎ続けてでも腕と小遣いを貯めて、そのうちには絶対本焼を買います。
今は縁がないですが、もしそういうことになった日には、本焼を持たないなら一体何のために毎日努力をしているのか分からなくなることは間違えありません。
Posted by Alces at 2009年05月05日 05:16
こんにちは。
実際の現場仕事では「本焼不要論」が主流です。
なくても困る板なんていないのが現実ですな。
みてくれだけの似非食品が街に氾濫してる時代。
だからこそせめて庖丁から「本」に戻ってほしい。
本焼を使い始めるきっかけは何でもいいのです。
動機不純でもかまわない(笑)
大半はあまりの扱い難さに根をあげて使用をやめるでしょう。
光物自慢の人やマニアは自然に淘汰されて消えます。
でも我慢して使い続ける人の中から確実に『背筋が伸びる』奴が現れる。
背筋をのばして気の入った料理を作る料理人。
それが本焼庖丁の意味なのです。
Posted by 魚山人 at 2009年05月05日 08:55
お疲れ様です 本焼をしまい込む… 気持ちもわかりますが、扱いには、注意が必要で ことのほか、集中しないと、扱えない 二十人も三十人前も河豚を引く時には、霞とは比べものにならない 欠けたり錆のリスクがありますが、背筋がピンと立って集中できる あの気持ちは、特別ですよね 板前の醍醐味ですよ 霞と別けて仕事してますが、 手入れも楽しいです クタクタになってても 包丁人なら、最後まで、管理する 試行錯誤で相性の良い砥石を見つける どんな高級な食材扱っても作り手の気持ちや姿勢が下向きなら、それまでの料理 生意気並べてしまいましたが 自分も板前と飲む機会が多々あります 包丁談議なんか、自分だけ 熱く語っても、解らない けどみんなそれぞれ考えがあるんでしょう 家庭料理とはちがう 高いお代を頂く お客様を馬鹿になんてできない 食材やサービスの前に、道具を拘りたい キチッと手入れして 気を引き締めて… 口説いようで恐縮ですが、まともに打もの、ムキモノ 揃えてきらない板前が目につきます 手入れして愛着ある包丁ならばこそそこは拘りたい
自分はバタついてるときこそ落ち着く意味で本焼は大事だと思います 段取り次第だと。魚山人さんのように、旦那として仕事はしていないので 自分の言葉は綺麗ごとかもしれませんが… 仕事終わって板場で夜中まで一人で手入れしてる姿は、仲居やほかの板には、分からなくても 自分が分かっていれば、それでいいと思っています。簡単、便利に傾いたら、板前じゃねぇやなんて、思ってやっていきたいです。今日は端午の節句に息子に、軽い昆布押しの真鯛を柳でとおもっていましたが 本焼の河豚引きで捧げたいと思っています。
Posted by 平 at 2009年05月05日 13:01
息子の節句に本焼を使う。
それが最も正しい本焼庖丁の使い方です。
年端のいかない子供に白身魚の刺身カドなんぞ分かるわけがない。
しかし将来自分が子供を持つ年齢にでもなれば「親父の気持ち」に胸が塞がれる事になるでしょう。永遠に消えない親子の絆ってわけです。
職人ってのは芸でモノを作りそれで想いを伝えるのが仕事です。
伝えたい想いってのがあるのか無いのか、重いのか軽いのか。
それだけの事でしょうね。
Posted by 魚山人 at 2009年05月06日 00:07
お疲れ様です
売上なんて関係のネェ連中がこさえた大型連休も終わり明日から新たな気持ちで
接客に神経を研ぎ澄ます毎日が来ます
『本焼き』
侍ゎ人を斬るために
名のある刀が 欲しかったんだろうか…
名刀と呼ばれる包丁ゎ
必ずしも優れた表現者の懐刀に納まっているのだろうか…
仕事をする人間ゎ
決して自信を持っても
自惚れちゃだいなしだ
全てゎ『相手』が居るから己が存在する
前を向くと
そこにゎ果てしない世界が己を飲み潰そうとする
が
後ろを見せた者にゃ容赦ないのが世間
『本焼き』
こいつゎさ
そんな人間の傲慢さや
ひ弱さを『掘り出し』に
するんだよな
扱ってみりゃわかるさ
今現在のテメェの実力がね
買った値段の何倍も
プレッシャーってやつに
押し潰されそうになるはず
笑えるのゎ
イチローのように
ルーティーンが 癖として出る
一流っての
俺ゎ何だかわかんネェが
一流になる前に やらなきゃいけネェことがあんだよ
そりゃ先輩方や後輩なんてもんじゃネェよ
価値観のぐちゃぐちゃな
『相手』に対する姿勢
『本焼き』
って そういうもんだと思います。
Posted by 鯔次郎† at 2009年05月07日 03:15
難しく考える必要はありません。
「持ちつけない人は続かなくなり、いつしか使わなくなり、戸棚の奥で朽ちていく」
それだけです。
Posted by 魚山人 at 2009年05月07日 18:15