鰯料理を酒肴に冷酒を②
イワシで作る肴です。
イワシと相性の良い明太子と合わせて炙る料理。
まずはイワシをおろします。
イワシのさばき方ページ で、この状態にするやり方を説明しました
これを縦から切り分け、三枚おろし状態にします。
中骨はとても美味しいので捨てずに料理します。
観音開きにする
「観音開き」という特殊な開き方をします。
観音開きは、丸っこくて厚みのある食材を均一にしたい、厚みを薄くしたい等のケースで使います。魚以外にも鶏肉などでも便利な手法。特殊ですがそれほど難しい庖丁技ではありません。簡単に説明しましょう。
観音開きのやり方
観音開きの庖丁の入れ方は下図のようになります。
三箇所ある赤線で庖丁を止めます。
中心に庖丁を入れ中央あたりでストップ
そのまま庖丁を横に傾け、水平にして片方を開く
反対側も切り込んで開く
こうなります。
これで丸い身が平らになり、火の入り方にムラがなくなりますし、刺身等でも例えばマゴチとかホウボウやキスやヤガラといった魚の身、鰻とか穴子を削ぎ造りにしたい、つまり薄く切りた時などに便利。野菜や肉類の食材でも使い方によっては重宝する切り方なのです。
いわしと明太(たらこ)を合わせる
そうしましたら、タラコを酒でのばしたものを開いた部分に塗ります。
(通常は明太子を使いますが、タラコが好きなので。)
※明太子なら包丁で開いて中身を出し、そのまま使う
もしあれば、シソの大葉などを置いた上にタラコでも良いでしょう。
タラコを乗せたら開いた部分を閉じます。
加熱調理して盛り付け
一口サイズにカットして耐熱皿に並べます。
このときサイズに合わせた海苔で巻いておくとなお良いですね。海苔の端を濡らせばピタリと鰯が巻けて、中身がはみ出しません。
これに粉を打ち揚げてもよいし、塩をして焼くもよし、塩コショウでソテーもよしですが、今回は「イワシ脂」を徹底利用したいので蒸します。
刺身と同じく、「貴重なイワシ脂」をまったく捨てずに全部食べる為です。蒸すと容器に脂が溜まりますからね。
面倒な方はラップして電子レンジへ。2分で火が入ります。すると容器に脂が出てまいりますので、この脂だけを別の容器に取っておきます。
盛り付けしましょう。
まずイワシを山形に盛って行きます。
山形に盛ったら、香りを引き出し肴らしい味わいにするため「料理用ガスバーナー」で表面を焦がします。抜けた脂で多少パサついた身を逆に美味く感じさせる手段でもあります。
その上に「打ち茗荷」つまりミョウガの千切りを水にさらしておいた奴を載せましょう。
周囲にネリワサビを配置し、その上にエシャロット。
※日本で言うエシャロットは生食できるように軟化栽培したラッキョウの事です。洋食で使う本来のエシャロットとは別のもの。
先ほどのイワシの脂に出汁・溜醤油・諸味噌・梅肉・フィメドポワソンに生姜の搾り汁とレモン汁を垂らしてアンチョビペーストをのばしたもの・等等等を加えて加熱でトロミをつけた『イワシソース』。ワサビに合うように加減してあります。
作るのが面倒ならば、マヨネーズに溶き辛子を混ぜた奴をソース代わりにして、小皿に醤油を用意しそこにワサビを溶き、マヨソースを少量つけたイワシとエシャロットをワサビ醤油で食べればいいでしょう。
庭に咲いていた向日葵でも添えて、季節を演出。
取っておいたイワシの骨を素揚げします。これは塩だけで食べると美味いですよ。
揚げ物といってもスプーン一杯の油とフライパンがあれば可能なので、ぜひ一人モンのアンちゃんも骨は食べて下さい。尻尾も含めてこれが酒の肴にバッチリですから(^_^)
イワシの骨揚げ
イワシ酒肴の出来上がり。
脂のあるイワシの脂を抜き油分の多いタラコを射込む、多少くどい品がメインなので、茗荷とエシャロットの鋭い個性が光ります。
この三種を使う事を前提としてイワシのソースを作り、ソースと言えども「和食」を主張する意味でも、口を飽きさせない為にも、ワサビがピタリと来るように加減をしてあります。
もちろん完成品をここに載せるという事は、店では作らないという意味ですが、そっくり同じ物を作る必要などまったくありませんけども、料理のヒントや参考くらいにでもなれば幸いなことです。
脂のある肴で、外は異常気象の暑さとくれば『淡麗辛口』
ビールが美味く感じはしますが、ハラが膨れるほど飲んでしまえば『ガッツリ飯』と同じく飲食してる瞬間は良くても、後で不愉快な気分悪さに襲われるだけです。ビールは最初の一杯が旨いもの。それで腹を膨らませるべきではないと思いますよ。
酒も料理も自分の胃袋サイズに合わせ、決して胃をFULLにせず八分目で終る。そこまでに時間をかけて少量ずつ味を確認しながら楽しむ。それが食の楽しみ方です。
そして酒の楽しみ方は「酔い過ぎない酔いかた」がベスト。それができれば至福の心地のまま睡眠できますし、酒は百薬の長になります。
おいら自身も若い時は山盛りのドンブリメシやらを、それこそ立ったまま1~2分で食っちまう「元祖ガッツリ派」でした。その方が美味く感じたものです(蕎麦だけは今でもその方が旨い)
でもね、料理人は「犬のエサ」を作ってる訳ではないし、酒造りの蔵人もガブ飲みをされていれば美味しい酒を作るモチベが湧かない。
日頃ストレスがたまる生活に追われているんです。食事くらいは落ち着いて楽しみましょうや。
それでこそ、「食は健康」と言えるのであって、ガツガツ食いは体内部に疲弊が蓄積していき、後々病気に弱い体になるだけです。お相撲さんの食事風景をご存知でしょうが、彼等が引退後病気になりやすく、比較的平均寿命が低いのは明らかにあの食事スタイルが原因です。
寄り道しましたが魚料理にはやはり冷たい日本酒。
たまには張り切って淡麗辛口の代名詞(笑)『菊姫の菊理姫』なんていきたいもの。刺身・塩焼き・変り肴とイワシの脂で一杯になった口内を、凛とした確かな凄烈、だが清涼極まりない極上の淡麗さが洗い流してくれるでしょう。