和食のいただき方
和食は器を持ってよい
西洋料理や中国料理など他国料理の殆どは食器を置いて食べます。
例外を除き、器を持ち上げるのはタブー。
これに対し、日本料理は大ぶりの器以外は持ってもよい事になっています。
小さな銘々皿はもちろんですが、「持つことに無理がある器」を除いて左手で持ってもかまいません。小皿が用意されてない場合でも大きな器から空いた小鉢とか椀の蓋などに料理を取り分けて、それを持って食べてもいいのです。こうした小さな器は「スプーン」とか「レンゲ」にあたると考えればいいでしょう。
世界共通ともいえる食事マナー
【背筋をのばした美しい姿勢で料理を食べる】
和食も例外ではなく、器を持つことで礼を保てるのです。
卓や膳から適度な距離をとり、猫背にならない様にしましょう。 見苦しい「犬食い」や、汁を垂らしたり料理を落としたりするのを避けて、姿勢と礼を崩さない事をベースに和食の作法は存在します。
右の物は右手で、左の物は左手で
いくら日本文化が廃れた現代とはいえど、食事を跨ぐ事は本能的に最低の行為だという意識は残っておりますでしょう。
和食の席では料理上の空間を妨げないのが礼儀です。
箸でさえ器の上に放置してはいけません(渡し箸)
自分の膳の上を手で覆うような行為もいただけません。
したがって遠くにあるものを取る時には注意が必要です。
・右にある物を取る時は右手で
・左にある物は左手で
この反対の動きは【袖越し】と言ってマナー違反です。
クロスの動きは袖口が料理に触れるおそれもありますしね。
手が届かない場所にあるものは周囲の人に頼んで渡してもらいましょう。
料理は必ずひと口大にして口に運ぶ
そうでなければマナーもへったくれも無くなります。
箸の存在意義もありません。
当然料理人も心得ておりますので、姿物など例外を除いてサイズを小型に整えている筈です。だいたいの料理は一寸(三センチ)以内になっています。
ひと口で食べれられるか、箸で2つに切ればよいサイズですね。
食べ切れない大きさのものを、そのまま口に運ばない様にしましょう。
※ただし握り寿司を箸で切ったりする行為は美的とは思えません
※どうしても箸で切れない料理は懐紙で口を隠して噛み切る
※ヌルヌルしてはさめない時は箸の片方で刺してつかむ
(両方の箸で突き刺してはいけない。 刺し箸)
手でつかんで食べてもいい料理
『外部は残し内部を食べるもの』がそれです。
カニ、エビ類の殻付き。枝豆など外皮を残す野菜など。
また、「骨付きの肉」や「串料理」も該当します。
職人が目の前で握った寿司もそうです。
「箸では絶対に食べられない料理」も該当。
※焼き鳥や串揚げ等は先の方から食べ、後方は箸を使って串先に移動させます。咥えて動かしてはいけません。正式な席では、器の上で箸を使い串を抜いてから箸で食べる
(箸で種を押さえ左手で抜く。串を抜くコツは「回す」こと)
刺身の食べ方
世界中の料理はほぼ例外なく「手前から食べ始める」様になっています。
また、「左から」食べるのが一般的。
山形に盛ってあるものは一番上から。
(したがって、せいろそばも中央から食べ始めるのが正しい)
美しく盛りつけられた刺身も同じです。
普通の刺身はドミノ倒しのように左下に流れています(流し盛り)
つまり左手前から箸を付ける様になっているのです。
板前が苦心して繊細に盛っているものを、いきなり崩すのは礼に欠けた行為。
わさびを少量刺身の中央にのせて、それを折り畳むようにして反対側に少量だけしょう油をつけて食べる。垂らさない様にしょう油の小皿は持ち上げておいた方が無難。
添えてあるケンやつまも、刺身と交互に食べましょう。
手前に「花穂じそ」が立てかけてあれば、箸でしごいてしょう油の中や刺身の上に散らして食べます。
普通にわさびをしょう油皿に溶いてもかまいません。
しょう油が濁って汚く見える欠点はありますが、「わさび醤油」独特の味わいもあるのです。失礼にはなりません。
※ちゃんとした料理屋では起き得ない事ですが(スーパーの刺身パックではありがち)、赤身の魚(マグロやカツオなど)の下の「敷きつま」が汚れている事が。ドリップなどの汚れですが、こういうツマは残しておきましょう。
ふぐ刺身のいただき方
刺身にしろ、天ぷらにしろ「盛りつけてある料理」は、「板前が盛ったのと逆の順番で食べる」と料理が崩れません。つまり最後に盛りつけた品から箸を付けるという訳です。
てっさ(ふぐ刺)は、丸い皿を回しながら外側を最初に盛り、中央に向けて仕上げます。なので、中央から刺身を食べ始めるのが良いのです。
1~3枚くらいをすくうように取り、ネギを巻いてポン酢をつけ口に運びます。
焼き魚の食べ方
頭の付いた姿焼きにしろ、切り身にしろ「左側から」食べます。
流儀によって背の方から、あるいは腹の方からと違いがありますが、一般的には腹の方から箸を入れます。頭付きですと胸ヒレの下あたりになります。
上側の身を食べ終えたら頭を外して中骨もはがします。
(魚の裏表をひっくり返してはいけません)
頭や骨は皿の向こう側へ寄せて下の身を食べます。
骨や皮は器の一箇所にまとめて。
「前盛り」(主にハジカミなど酢の物類)は、魚を終えてから口直しに食べます。
※一連の動作は箸だけでは困難
おてふきや、懐紙を添えて左手を使ってもけっこうです。
食べ終えたらその紙を骨などの上にかぶせて隠します。
煮魚の食べ方も基本的な流れは同じです。
土瓶蒸しの食べ方
土瓶蒸しは吸い物です。
まず、伏せて添えられてくる猪口にて、汁をひと口味わいます。
味を確認した後、フタをとりスダチを搾り入れます。
汁と具を猪口で交互に頂きましょう。
食べ終えたら、すだちのしぼりかすやエビの尾などを土瓶に入れる。
フタをして、伏せた猪口を上にのせる。
(形状によっては猪口をのせない)
お椀のフタ
吸い物や味噌汁などは蓋付きで出されます。
普通は左手を椀に添えて右手で簡単にフタを取ることが出来ます。
しかし時に強く密着して取れない事がありますよね。
こういう時は強く引っ張ってはいけません。
右手でフタの中央を軽く押さえ、左手で椀の縁の上下をつかんで揉むようにします。数回やれば自然にたわみから空気が入って開きます。
取ったフタは何処に置くか
右にある椀は椀の右に
左にある椀は椀の左に
フタの持つ部分を下にして置きます。
塗りなど高級な器のフタは重ねない様に注意。
※高価な蒔絵などの椀で骨がある魚が入っていた場合
フタに懐紙をのせ、その上で骨などを外しましょう。
決して器の中でやってはいけません。
食べ終えたら懐紙ごと器に入れてフタを閉めます。
食べ終えたら
汁の椀はフタを元通りに戻します。
飯碗はフタを逆にしてのせます。
【ばっかり食べ】は見苦しい
料理は「交響曲」です。
単純なオニギリにさえ具があり、最低でも「塩」がご飯に彩りを与えます。複数のものを組み合わせて特徴を出しているのです。
ところが世の中には「組み合わせ」の意味を理解していない方も多い。
例えば握り寿司のネタを外して「刺身」として食べている人とかね。
ご飯と具が一体になっている丼ものもそうです。
具ばっかり食べ、ご飯ばっかり食べる。
パンとハンバーグを別々に食べるハンバーガーってなモンですな。
本人がそれで良いなら別にかまわない話です。
しかし「食作法」としては失格。
人前でやると印象を悪くするだけです。
※一品ずつ運ばれるコース料理においても同じ
一品も多種で構成されており、それを「交互に食べる」が基本です
※洋食など外国料理では逆になりますので注意
諸外国では一品ずつ片付けるのがマナーです。
口の中で別料理を混ぜる「口中調理」は、米食を主体にする国でみられる食べ方であり、とくに汁(味噌汁)とご飯が対になった和食において顕著な食文化です。
爪楊枝は使わない
人様との会席で楊枝を使うのは控えた方が無難。
理由は簡単。「気持ちのよい仕草」とは言えないからです。
端的に「見苦しい」と断言してもよいくらいでしょう。
良い印象を与えることは絶対にありません。
前歯に料理が挟まってしまうなど、仕方なく楊枝を使う場合は、口元を隠してから。しかし目上ばかりの堅い席なら、口実を作り中座した方がいいと思います。基本的に人前でやる行為ではなく、食事中なら尚更です。
和食の作法 箸の扱い方 会席の作法 懐石の作法 松花堂弁当の作法 茶と和菓子の作法 日本料理の食べ方色々 |