和食の作法
和食の作法は、多少流儀の違いがあるものの基本的には同じです。茶席も流派によって細かな違いありですが、これも全体の流れは同一。
基本形は同一で普遍的。
「日本料理をいただく時の作法」は、概ね形式が定まっているという意味でして、これはつまり基本をおさえておけば急に和食の席に呼ばれても恥をかかないですむという事になります。
できるだけ単純化して、分り易く和食作法を説明致します。
懐石料理と会席料理の違い
酒を楽しむ会席料理
和食料理屋で出て来る料理は普通「会席料理」です。
この会席料理は酒席を前提に献立が組まれています。
基本的な会席(酒席)料理の流れ(順序)
1、【お酒】
2、【先付】(さきづけ)
3、【前菜】(お凌ぎの場合も)
4、【椀物】(わんもの)ー吸い物
5、【向付】(むこうづけ)ー刺身/お造り・鱠など
6、【煮物】~強肴(しいざかな)
7、【焼き物】~鉢肴
8、【揚げ物】~あぶらもの
9、【ご飯】・【香の物】(漬物)・【止め椀】(味噌汁)
10、【くだもの】 水菓子
これに蒸し物、小鍋物が加わることもある。(進め肴)
8の揚げ物までは、常にお酒をちびちび楽しみながら食べるようになってます。酒席でない場合は「煎茶」か「ほうじ茶」が出ます。
基本は『一汁三菜』(吸い物・刺身・焼き物・煮物)
あるいは『二汁五菜』
余の料理は酒肴。
最後に食事とデザートで締め括ります。
※固苦しい決まりごとはありません。 事情によってはご飯を先に出してもけっこうです。
濃茶を美味しくいただく為の懐石料理
「懐石」の意味は『一時的に空腹を満たす軽い食事』と解釈します。
言葉の由来は禅宗でいう「薬石」
薬石とは、厳しい戒律で朝夕2食の修行僧が空腹に耐え切れぬ夜に食べる事を許された「お粥」の事です。それに加えて、温かくした石を懐に抱いて空腹をしのぐ「温石」(おんじゃく)
ここから一時しのぎにする軽い食事を懐石と呼ぶようになりました。
懐石という呼び方と食事形式が構築されたのは江戸期ですが、室町~安土桃山~江戸初期にかけて茶事が盛んであり、茶事を極めたとされる『千利休』の頃には形が出来ていた様です。空腹であっては茶の旨味を感じることができませんので、小腹を満たして茶をもてなす。つまり懐石は茶道から生まれた料理なのです。
寄り合い・宴会料理の「会席」と読みが同じであるため、区別するために「茶懐石」と呼んだりもします。
実質的に『懐石料理』なるものは茶の湯の儀式。
我々一般の人間からは遠い料理のように思われても仕方ない。
ですが懐石の内容は和食を凝縮して洗練したものです。
日本における家庭料理の精神をも内包しております。自分は『虚飾を廃して和の心を凝縮したもの』が懐石料理だと考えています。飾らない素朴さと枯れた料理。それが懐石の本当の姿ではないでしょうか。
基本的な懐石料理の流れ(順序)
1、脚のない膳『折敷(おしき)』にて【飯、汁、向付】
2、【椀盛】~平椀・煮物椀
3、【焼物】
ここまでが基本の一汁三菜です。
4、【強肴】~進肴 (炊き合わせ、又は和え物、酢の物など数種)
5、【小吸物】~箸洗・ひと口吸物 (あるいは白湯)
ここまでが一通りの食事で、小吸物で箸を清めて「献酬」(けんしゅう)へ。
6、【八寸】
盃(酒)を交わす献酬の肴。海山のものを二種杉盆に盛る。
7、湯桶(ゆとう)・香物
湯桶は炒り米や湯の子(おこげ)に湯を注ぎ塩を加えた湯。
香の物は3~5種の漬物。
8、主菓子(おもがし)・濃茶(こいちゃ)
場合によってはこの後【干菓子】と【薄茶】が出ます。
※茶の味を損なわぬように、香辛料をきかせたものや、あぶら気の強い料理は出ません。
※『松花堂弁当』は懐石を略したものです。
膳料理
会席も懐石も、ひとつの料理を食べ終えた頃を見計らって次の料理を出す一品ごとの「喰い切り料理」です。しかしこういう形式ではなく、お膳に一式の料理を全てのせて出す料理がありますね。
これは幻になった『本膳料理』とは違います。
→お盆料理と本膳料理
似ているのは高足膳で出す部分のみ。
庶民の一汁二菜と会席・懐石・本膳が混ざり合って簡略化されたものでしょう。こうしたものが定着したきっかけは、江戸の人口が増えた事にあると思います。
人口増によって行楽や観光の規模が大きくなった。
なかでも「お伊勢参り」が筆頭でしょうね。
街道の旅館・仕出し・食堂は大量のお客をこなす方法を考案する。とてもじゃないが一品一品の料理をだしていられない。魚など焼いてはいられないので「釜茹」して焼き魚にしたと云います。米の「湯炊き」などもそうでしょう。
良く言えば「コンパクト化」、悪く言えば「手抜き」
そういう事になりましょうかね。
「レンジでチンして出すだけ」と同じ発想は、江戸時代からあったということです。和食のファミレス化(大量販売システム)は、大昔から現在まで続いているわけですね。
「台の物」とは 台の物とは献立上では焼き物の事です。 (これは本膳に由来) 昔の和食店や鮨店の上得意は遊郭であり、そこへの仕出しが大切。茶屋などの要請によって脚付きの膳に豪華な料理をたっぷりのせて仕出しをすることも。昔はこの大足膳にのった出前料理のことを「台の物」と呼んでいました。 |
食前のマナー
和食を頂戴。その前に
衣服
和服が理想ですがもちろん洋服でもOK。
タイトなものは避けた方がいいです。
アクセサリ・化粧
出来る限り控え目に。付け爪と強い香水は駄目です。
指輪や長い爪は高価な漆器を傷つけやすいので遠慮する。
長い髪は留めておく。
入室(お席入り)
約束の時間より早く到着して主賓(あるいは主)を待つこと。
末座に近い場所から入り、畳のヘリを踏まないように歩く。
上座(床の間方面)から遠い末座に座る。
※慣れない場合は前の人に続くか案内を待つ事
※左右どちらの足を先に出して歩くかも前の人に習う
主客の左に次客
献杯、取り分け料理などは左へ回すようになります。
最後の末客は「お詰」と言います。お詰に近い場所に陣取れば無難でしょう。
手荷物
荷物をテーブルの上に置いたりしないこと。
(脇か後ろへ置く)
食事中の中座はしないこと。
携帯の電源も切っておく。
持参するもの
懐紙は必需品です。
取り出しやすいようにして持参しましょう。
食べ残しは失礼になりますが、体質などで食べられないものもあります。
そういう場合はお持ち帰りしましょう。
『残菜箱』があると便利です。
(折り畳みの紙箱でけっこうです)
お茶のお点前があるときは
「黒文字(菓子楊枝)」
「末広(扇子)」
「袱紗」
などを用意しておくと困りません。
※わさ
袱紗の、縫い目のない折り目側を「わさ」と言います。
座布団を折り曲げてお客に出したりする場合は「わさ」を向けてすすめられ、お茶菓子を頂く時は懐紙を折り「わさ」を自分に向けます。つまり「折り目」の事です。憶えておきましょう。
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