イクラの話
イクラの握りってのは軍艦巻きにしてつけます。子供さんも含めて絶大な人気を誇る寿司ダネでしょうかね。
「Ikra」はご存知の様にロシア語。もともとはキャビァ作りから着想された食べ物です。だからって訳じゃないでしょうが、チョウザメならぬランプフイッシュの卵が「嘘キャビァ」として出回っています様にイクラもガセが存在します。人造イクラですね。
人造イクラと天然イクラの見分け方
ピンポン球って言えばあの人造イクラ。よく出来てますなぁあれは。
人造イクラは見た目も食感も味も、本物と変わりません。見分ける方法はございますが難しい。
しかしうまいことに人造イクラはサラダ油と海草エキスが主成分で、いまんとこ蛋白質が主成分のイクラとは構造が大きく違います。なのでたんぱく質特有の特徴を引き出してやればよいって事ですな。
一番わかりよいのがお湯です。たんぱくは加熱で凝固して白くなりますからね。数粒をお湯に放り込んで白くなれば天然イクラ。
しかし、人造イクラのメーカーが人工イクラに動物性たんぱく質を添加するのは技術的に簡単な事で、そうなるともう分からんでしょう。
そこは「モラル」ってもんがあるんでしないでしょうけどね。実際は天然か人造かは値段で簡単に判別できますから、人造を天然イクラの値段で売れば大事になるし、そこまでやらんでしょうさすがに。
しばしば人造イクラの成分「カラギーナン」が取り沙汰されますけども、カラギーナンってのは八丈島の「ぶど」とか「海藻コンニャク」の成分でもあり、『食品添加物専門家委員会』は「毒性は事実上ゼロ」としておりますので問題はないでしょう。彩りに使う分にはいいと思いますし、回転で一皿100円って需要もある。
(実際はサケは大量に獲れていますので、人造イクラは伸び悩んでいる状態。しかし将来を俯瞰すれば大切な事かも)
人工イクラの作り方:新潟大学工学部:capsule.eng.niigata-u.ac.jp/lecture/open01/index.html:
見分け方に関しては一部のプロの間で誤解がある様なので、ちょいと書いておきましょう。
「ピンポン球」や「スーパーボール」状態のイクラがあります。見た目が極めて人工的で不自然なイクラ。「コイツは人工だ」ってことですが、これは安モンだけど本物のイクラです。
鮭の漁期は卵を抱いて戻って来る時期なんですが、こいつは段階がありまして、早獲りの未成熟ですと卵殻が柔らか過ぎるので、卵巣ごと塩漬けにします。これが筋子。秋口ですな。(生筋子とは鮭の卵巣を指し、一般に筋子は未成熟な卵巣の塩漬けを指します。生筋子が入手しやすい北海道ではぬるま湯で生筋子をほぐして自家製イクラを作る事が多いです)
10月に入りますと卵も成熟しある程度卵殻が硬くなりますので、ザルの様なものでほぐして卵巣膜を除いて卵をバラバラに出来ます。これが『バラ子』でつまりイクラです。ところが秋も深まりますと鮭は河川を遡上しておりまして、この状態の鮭を『カワブナ』と呼びます。鮭の種類
この時期(11月頃)の鮭の卵は卵殻が硬くカチカチになっており、まさしく「スーパーボール状態」。つまり秋が深まってからの鮭の卵はいかにも人工的なイクラになるって事です。値も下がります。
イクラの扱い方
「アヌタキサンチン」と「サルメン酸」
これがイクラ特有の色を出している色素です。宝石の様な食欲をそそる天然の水溶性と脂溶性の色素。
良いイクラはこの色素が生きてまして、シワがなく鮮やかな赤に近い色をしており、卵殻もほどよい柔らかさをしている物です。
イクラが嫌うのは加熱と真水。例外的に卵を煮る料理もありますが、塩漬け、醤油漬け、いずれにしろ生食がメインです。加熱で硬くなりますし、皮膜は食感も消化も悪い。
ですのでイクラの製造過程では加熱と真水は避け、加工には塩水を使いますし、製品を扱う場合でも、卵殻は乾いて固くなりやすいので注意します。
ここでも役立つのは「和食魔法水」の酒。
少し乾いてシワが入ったり、多少乾燥したイクラは酒に浸すと元の状態に戻ります。
イクラの握り
軍艦巻きの作り方は別にページを作ってありますので、ここでは見苦しいイクラ握りにならないポイントを強調しておきましょう。
★シャリが熱すぎない事
★軍艦の凹みが充分である事
イクラの軍艦巻
原価率をよくしようってんで上げ底にしたり胡瓜をかまして山盛りにしてる方は読む必要はありません。それだけではなく料理はオブジェじゃねぇって事。ましてや江戸前寿司は手でつまむ食べ物。食べる時にポロポロするんじゃ話になんねぇですよ。シャリの凹みがきいて物を積める船になってましたら、こうして持ってもご覧の通りです。
最近は醤油漬けが好まれてますが、一般に食べるのはほぼ塩イクラだと思ってもよいです。先にも書きましたけども、醤油漬けってのは生の鮭の生の卵巣をばらして醤油ダレに漬けた物が原則。ですから塩漬けイクラを酒などで戻し醤油味にする手法もありますが、これもやはり塩イクラです。好みはありますが、塩の方がイクラの持ち味をより引き出していると思います。ですので、購入したイクラは余計な事をせずそのまま召し上がるのが一番。