タラバガニ

  

鱈場蟹

タラバガニは別名「カニの王様」
言葉のみでなく実質的なカニの王者と言ってもよいでしょう。蟹の身肉への渇望を十分満たせるのは、巨大なタラバならです。



食べ応えと共に、グルタミン酸やイノシン酸他豊富な旨味成分を含むたんぱく質、そして超低脂肪高たんぱく、低コルステロール、しかもタウリンも多い。文句なしの健康食品でもあるわけです。

そういう理屈以前に、単純に美味い。これを食べてる最中は、どんな「お喋り者」であろうと無言になってしまうと云うくらいです。

カニの王者と書きましたが、歩脚が3対しかないこと、カニは横歩きしますが、タラバは縦方向にも移動出来る事。メスの腹部が左右非対称でもあり、これらはヤドカリの特徴です。つまり正確には、『カニ型のヤドカリ』になります。

しかしながらそんな学問的詳細は別にどうでもよい事でして、三大ガニのひとつで、蟹として流通してますから、我々にとってはカニです。英名でもKing crab。

流通事情が良くなってる事もあり、タラバの生刺身等もみかけますけども、加熱したタラバに比べれば極端に食味が悪いですね。ボイルするか焼く方が良いです。板前としての経験からすれば、タラバは蒸した方がよいと感じます。

タラバガニを書くとき避けて通れない問題が、2004年の偽タラバガニ騒動。そっくりなアブラガニをタラバと偽って販売していた業界の実体が明らかになり、公正取引委員会が景品表示法の規定違反で大手の流通各社に排除命令を出し、大きく報道されました。

タラバとアブラの外見上の違いは少なく「エビ目タラバガニ科タラバガニ属」である事も同じなので、タラバとして通していたんでしょう。魚介の流通では珍しくない話です。

しかしやはりタラバガニとは違いますので、事件以来販売業者も正当な表示をするようになっています。偽装表示は禁止されてますしね。ましてや現在の食品偽装に対する厳しい風当たりを考えれば、もうデタラメをやる業者もいないとは思いますが・・・

タラバガニとアブラガニの見分け方

これがタラバガニです。

下がアブラガニ。

矢印で示している突起、これが画像の円内部分に4個あるのがアブラ。上のタラバガニはこの部分に突起が6個あります。これがもっとも簡単な見分け方でしょう。

タラバガニのオスとメスの見分け方

円内の「ふんどし」が全然違うのですぐに分かりますね。

オスが左右相称なのに対しメスは著しく左右非相称で、右にねじれています。

タラバガニのオスメスですけども、日本ではメスの採捕が禁止されてますから国産のメスというのは無いはずです。しかし法令は販売に関しての規制までしてませんからロシア産のメスは「子持ち」として売られています。

花咲ガニ

同じタラバガニ科に花咲ガニがいます。
北海道へ行くとそこらで見かけますし、真っ赤な花が咲いたようなその姿が印象に残る方も多いことでしょう。

花咲とは、まさしくその姿からの名みたいに思いますが、実は根室半島(旧花咲半島)にちなむ名です。華やかな外見ですが、味は三大ガニにおよびません。

タラバガニに似たカニ

アブラガニ以外に、非常に外見が似たカニがおりまして、あまり知られていない事から混同の心配があるのが、イバラガニです。イバラガニモドキ、キタイバラガニ、エゾイバラガニの三種が主に漁獲されます。その絶対量は少ない様ですが、明確な表示を徹底すべきだと思います。

生息域は日本海から北海道沿岸、北太平洋と北極海はアラスカ沿岸、オホーツク海、ベーリング海。沖合底引き網や刺し網で漁獲されます。 1977年の200海里漁業水域設定で姿を消した「蟹工船」はタラバを船上で缶詰にまで加工していました。この時代はタラ漁の方が重要で、タラの漁場と重なるタラバガニは鱈漁の邪魔になるとして駆除する事もあったとか。今では考えられない話です。タラバの名の由来はこのタラ漁から。つまり鱈の場所にいるカニで「鱈場」

今ではタラより遥かに貴重な水産資源ですが、減少の一途です。 30年以上の長い寿命で成長が遅い事もあり、養殖も困難。日本では「農林水産省令・「タラバ」蟹類採捕取締規則」などにより保護に力を入れる様になりましたが、1国だけではどうにもなりません。絶滅する前に各国間で資源保護に向けた強力な協定が必要です。

※近年スカンディナヴィアの近海、とくにフィヨルドにてタラバが異常に大量発生しているといいます。自然界はまだまだ分からぬ事が多いようですね。