エビのさばき方
えびの捌き方です。
無頭エビ(頭なしの冷凍)、有頭エビ(頭つき)、生の車エビに生きたイセエビまで、料理に応じたさばき方・下ごしらえを紹介します。
小型海老の下ごしらえ
冷凍エビをボイルして使う ↓ 寿司エビの仕込み ↓ |
車エビのボイルとオドリ ↓ エビの頭の美味しい食べ方 ↓ |
エビのカラを剥く → |
エビの背ワタを取って伸ばす → |
伊勢海老のさばき方
伊勢海老のさばき方 刺身用 → |
伊勢海老のさばき方 加熱用 → |
どんなエビを選べば良いか
エビはイカやマグロと同じく重要な海産物であり、近海の天然物で国内の膨大な需要を賄えるはずもなく、養殖と輸入が大きな柱で、その殆どが冷凍品です。
鮮度の落ちやすいものですし、車エビや伊勢海老のような活の需要もそうありませんからね。むしろ生より冷凍のほうが安全だということもあります。冷凍技術の発達で生食用の生冷凍は、刺身でも充分美味しいレベルになっています。
冷凍モノですから、本来ならば「凍ったままの状態」が良いのですが、規格が2キロサイズの塊ですから、それではスーパーなどで一般の店売りはできません。そんなもの買うのは業者だけで、普通の客は買いません。
ですから、「お店で解凍してバラし、パックに並べて陳列する」というスタイルが数十年続いています。ようするに一度解凍してしまうんですね。
これはあまり良くありません。カニやエビは鮮度低下が非常に早く、たとえ冷蔵していてもすぐに悪くなるからです。
スーパーでもこの鮮度低下に往生して、今ではほぼ(大型店などでは)冷凍ケースに並べて売るようになっています。しかし、並べてパックするために、これもやはり一度解凍するしかないのです。つまり【再凍結】ですな。
いくら冷凍陳列していても、いったん解凍したエビの鮮度低下は止まりません。みるみるうちに黒くなっていくのです。
いったん溶かしてしまったら、その日のうちに食べてしまう(売り切ってしまう)。これが理想なんですが、なかなかそうはいきませんからね。
こうした長年のジレンマを解消するため、近年は「販売時に解凍しないでもいいように冷凍しよう」という流れになっていて、「バラ凍結」などが増えています。
最初から塊にしないでバラバラの状態で凍らせれば、消費者に渡るまで一度も解凍する必要がないからです。
そういうわけですから、エビを購入するときは、「トレーにキレイに並べてあるパックのエビ」よりも、一見乱雑に見える「バラ凍結のエビ」を選んだほうが良いと思います。 (一概には言えませんが、大筋はこの通りです)
海老をゆでる
料理店・寿司店などでは、海老は串を打って茹で、真っすぐにするやり方と、「つの字仕立て」つまり串を打たず加熱してエビを丸くなるようにするやり方を料理によって使い分けます。エビは加熱すると腰から曲がり、その形が「つ」の字に似ているからつの字ですね。
つの字
串を打って真っすぐにするやり方の代表は「えびの握り寿司」で、あとは焼き物やら祝宴に出す料理。その他の料理はだいたい曲がったままの仕上げ。家庭料理もそうですね。
茶碗蒸しとか炒め物などに使う場合、生からそのまま加熱することが多く、ボイルという下ごしらえはあまり必要ないかも知れません。ですが、ちらし寿司とか椀物などに茹で海老を使うこともあるでしょうから手順を覚えておきましょう。
えびの茹で方
生海老でも冷凍海老でも、エビを茹でるときは必ずカラ付きでボイルします。
まず、冷凍えびは完全に解凍、生えびは表面をさっと洗っておく
①できるだけ大きな鍋に湯を沸かす
②沸騰したら塩をひとつかみ加える
③エビを一気に鍋に入れる
④エビが浮いてきたら取り出す
●沸騰湯に入れたら数分で湯が白く濁り、そのあとエビが浮いてきます。浮かぶのは火が通った合図なので、すかさず取り出しましょう。
●エビの身は非常に火が入りやすく(これがカラから茹でる理由の一つ)、加熱しすぎると身が固くなり持ち味を失います。
●したがって取り出すときも時間をかけず一気に取り出さないと「茹ですぎ」になってしまいます。
●上のような理由で、網杓子などで取り出すよりも、鍋ごとつかんでザルに全部をあける方が良いです。
盆ざるなどで自然に冷ました方が、海老のプリプリ感が残るのでおすすめですが、冷めるまで時間がかかります。料理作業の段取り上、待てない場合が多いもの。ですからザルにあけたらそのまま流水で冷やす方法が一般的。流水急冷はえびのアクをきれいに取れるので、衛生的という側面もありますよ。(若干腐りにくくもなる)
長く水につけてはエビの旨味が流出しますので、あら熱がとれたら(手でにぎっていられる熱さになる)、すぐに水を切りましょう。
殻を剥く必要がある場合はその後で剥きます。
寿司エビの仕込み方
茹で方は同じですが、寿司海老の場合は真っ直ぐ仕上げるため竹串を打ってから茹でます。
身を避けて背ワタにそって打つか、腹側に打ちます
塩ゆでし、ふわりと浮いてきたら取り出します
串を抜き
殻を剥きましょう
形を整え
腹から開く
薄くした酢水の中で残った汚れなどを落とし、ザルなどに並べれば完成。エビはアクがあるので丁寧に洗いましょう。
※ボイルエビを【蒸しエビ】と呼ぶ場合もありますが、同じものです。
※塩を入れるときに酢を入れるやり方もありますが、「開き」が終わった後に塩水で洗い、その後で酢水で軽く洗ったほうが良いです。
※ザルにとった後流水で急激に冷ますやり方が多く、これは仕事の段取りからやむ得ないことでしょう。しかし自然に冷めるのを待って水を使わない方が美味に仕上がります。余計な水を吸わないし、身が痩せないからです。
車えびのさばき方
にぎり鮨に使うエビにも種類がありますけもど、やはり味覚、色ともに最高なのは車えびです。甘みが違いますね。江戸前の天ぷらとか祝膳の焼き物にも使います。
寿司に使う車えびはマキエビサイズになります。
コマキ→サイマキ→マキ→(10㎝前後)
クルマエビ(大車)→(20㎝~)
あがった(死んだ)エビは急速に頭部から悪くなり、首がグラグラして頭が簡単に取れてしまいます。ボイルしても色が悪く身質も良くない。なので、生きたマキを使いましょう。
活き車海老(オドリ)を使って、寿司海老の仕込みを簡単に説明します。
車海老の仕込み方
(1)串打ち
頭を付けたまま料理する時は竹串などで背ワタを抜きます
竹の丸串を打ちます。
背ワタにそって打つやり方と、
腹に打つやり方があります。
車は有頭なんで腹打ちの方が適していますが、ボイルした時に曲がらぬ様に、背をそらせ筋をのばしましょう。身をできるだけ傷つけない様に刺します。
いずれの場合でも尾のケンの下に串を出します。
串を打ったらよく水洗いしましょう。エビはアクが強いので、汚れがあると色よく仕上がりません。
(2)ボイル
湯を沸騰させて塩を少し入れ、茹でます。
出来るだけ大量の水を使い、時間的には3~5分、エビがふわりと浮いて来たら火が通っています。そのタイミングで火からおろします。茹で過ぎは絶対にいけません。
鍋ごとザルにあけて冷水に移して冷まします。
その後水切りし、て完全に冷めてから串を回す様にして抜きます。
(温かなうちに一度串を回しておくと抜きやすくなりますが、抜いてしまうとエビが曲がってしまいます)
(3)剥き
ヒゲを取り去りましょう。
次に折るようにして頭を取りますけども、頭の肉も残すように先端に力を入れて折るようにしましょう。コツは首の付け根から頭の殻に人差し指を突っ込む感じにする。こうすれば頭部がひっ付くのを防ぎキレイに剥けます。
これは普通に首から折ったもの。頭部を残さないやり方。
無駄が出やすいので目の下あたりから庖丁で斜めにカットしてもいいでしょう。
頭部を少し残すやり方
下段の握った画像で確かめてください
次に殻を「グル剥き」します。尾を取らぬよう注意して全部剥きます。尾の近くの殻はケンを外すと剥けますのでその方が安心でしょう。
剥き終えたら尾先のカーブを直線に整えます。
(4)開き
腹から開いて背ワタを取ります。
その後薄い塩水で洗い、きれいにします。
(5)握り
クルマエビを握ります。
エビはギョク等と同じく臭いの移りやすいネタですから、生臭い手で握ってはいけません。
尾の方は握り込まないようにして下さい。
完成。
どうぞお召し上がりください。
美味ですよ。
中央が頭付き、下が頭部を残したもの、上が通常に頭を落としたもの。
※エビの鮨は尾がお客さん向きになるように置きます。勿論「一挙動、一口」で食べられる様に配慮した江戸前寿司ならではのつけかたです。
活車海老(活車・おどり)
水槽等から取り出した生きた車エビを、その場で頭と殻を取り、開いて使います。
活けの状態で殻を剥く場合、車エビは非常に殻が剥きづらいです。
「レモン汁」をふりかけると滑らなくなり、剥きやすくなりますよ。
尾の先だけ湯につけると綺麗ですね
あとは普通に握りや刺身にして出します。
下のように頭も食べられますよ。
エビの頭の食べ方
上の活車を頼むと、板前が頭を素揚げにしたものを出してくれます。
これは生きた車エビの頭をもいで、それをそのままさっと揚げたもの。
余計な事かも知れませんが、知らない人もいるかもしれませんので。これの食べ方を。
トゲトゲした昆虫みたいな姿に、どうしていいか困る方もいるはず。
このままポンと口に入れますと、ご覧のような頭のツノが口に中に刺さる可能性が。
両手の指先で上下をつまみ、ヘルメットでも脱ぐ感じで、パカッ。
外殻だけ『脱皮』させてから食べます。
塩やレモン汁などで召し上がってください。