刺身の基本技術
刺身の切り方作り方・初級入門編からの続きです。
今回は刺身の実用編になります。基本となる切り方のいくつかをご紹介しますので、前ページの刺身作りのポイントやコツなどを参考に、実際に作ってみてください。
(1)平作り
平作りは一番使われている刺身の引き方です。
庖丁の根元から切り込み、
刃先で右側に送って並べていくやり方です。
包丁のミネを気持ち左に傾けて切ります。
そうすると並べたとき角が美しく仕上がるからです。
(2)引き作り
身が柔らかく、右側に送る動作で身が崩れる可能性がある場合などは、サクを軽く押さえて「その場で引き切る」方法を使います。
柔らかいカツオなどの腹側のサクなどは右に送る動作で「身割れ」してしまうことがあるからです。
こうやってその場で下まで切り離し、
包丁を引き抜く様にします。
手元を持ち上げ、切っ先を使うようにします。
下の角作りと細作りも、包丁の使い方は引き作りと同じです。
(3)角作り
サクを長角の拍子木切りにして、それを小口からサイコロの様に切る刺身です。
長方形に切り出した短冊を縦から二等分か三等分に割ると宜しいでしょう。
「ぶつ切り」との違いを出す為に、大きさを揃え、切り口の鋭角が崩れない様にします。
積み盛りし、重ねて立体感を出して下さい。
(4)細作り
昆布締めにした白身や、サヨリ・キスなど薄い身の魚を刺身にする場合に適した引き方です。
身が厚い場合は2~3枚にそいで切ります。
包丁を立てるようにして細く引きます。
キス・サヨリなどのように、幅がなく細長いおろし身は斜めに引きましょう。同様に、三等分したスルメイカやヤリイカも包丁を傾けます。
イカの糸作りも同じです。
白身の盛り方は【杉盛り】です。一枚ずつ重ねながら小高く盛っていきます。
中心に皮目模様の無いテンパを、外側に模様のあるそぎ身を盛ればよいでしょう。
(5)そぎ作り
ヒラメやタイなどに適しています。弾力のある新鮮な白身はこの引き方が良いでしょう。繊維に従って包丁を入れ、弾力を残します。
薄くそいだ白身系は【重ね盛り】にしましょう。折りたたむ様にして、小高くなるようにします。
そぎ作りを厚めの刺身に切るケース。
これは【へぎ作り】とも呼ばれます。
※剥ぐという字面からみて、そぎ作りと意味は同じ。厚みの差です。
斜めにして切り下げた包丁を、切り終わりに真っ直ぐにして、表になる切り口を直線になるようにします。
左に重ね並べます。
(6)薄作り
これもそぎ作りの一種です。おこぜ、こち、ふぐ等、極めて身が締まった魚を刺身に引く場合、極端に薄く切ります。
皿の地が透けて見えるくらいに薄く切ります。
薄作りは刺身包丁のソリを使う→
この刺身は、丸い皿を回しながら花びらの様に盛るのが普通です。
従って円形の器に盛ります。丸皿に丸い輪花を盛り込んでも違和感が無いのは、刺身の端が「三角」を描くから。花弁が大きな花を模すると映えなくなります。
(7)切りかけ作り
平作り・そぎ作りのやり方で包丁を入れ、切り離さず包丁を途中で止める手法です。
皮付きのままで切る場合や、切り開いて大きくする場合などに用います。
平作りの場合は表層だけを切り込めばよいので浅く、
そぎ作りはギリギリまで切り込んで切り身が開くようにし、これを「二枚引き」「二枚包丁」などと呼びます。
サバの八重作り
一度切り目を入れ、
二度目に切り離します。
皮付きで切ると、刺身醤油を弾いてしまい醤油が身に付きづらくなってしまいます。さらに、皮が口の中でゴワゴワして違和感を感じます。
切りかけ切りにすると、その両方が解決するんですね。皮は食べやすくなり、しょう油も切り込みがあるので浸透しやくす身に馴染むのです。
手順自体は平作りと同じ。
盛り方もほぼ同じです。
※ここでは一度しか切り込みを入れていませんが、複数回切り込みを入れる場合もあります。ミリ幅の切れ目を~5本くらいですね。
(8)皮霜作り
熱湯を皮目にかけ、素早く冷水にとります。皮の模様から【松皮作り】などとも言い、湯ではなく直火で炙れば【焼き霜作り】になります。
金目鯛の湯霜作り
湯霜作りと焼霜作り→
まな板などを斜めにして沸騰湯をかけます。
(温度が低くては効果がありません)
サラシを被せると、身の霜を防ぎます。
(つまり火の通り過ぎを避けられるのです)
氷水で素早く冷まし、充分に水気をふき取ってから、切ります。
皮付きですので、切り方は上の「切りかけ作り」と同じです。
イカ刺身(初級応用)
上は基本な実用編でしたが、応用編もひとつ紹介しておきます。イカ刺身で初歩的なお造りを作ってみましょう。
三等分か二等分のサクにします。
これを『そぎ作り』で刺身にします。
五枚ほど切って、重ねながら縦に並べてください。
それをクルクル巻き込めば、
花びらが出来ます。
中央(花芯)にイクラとか煎り卵などを少量載せますと、より花らしくなります。
刺身の盛り付けは一人前一種を3か5の奇数盛りにします。しかしこれは基本ですし「式」の名残りで縁起の一種ですので、人数等の状況で数を変えても全然かまいません。
刀法を「作り」と言い、めでたい席の場合は「お造り」と書く。通常の献立には向付の欄に魚の名と作り方を表記し、隣に褄と剣を書く。
作り方
「長手」「平」「越し」「背越し」「そぎ」「細」「糸」「切掛け」「賽の目」「角」「引き」「小波」「洗い」「ぶつ」「切離」「切掛」「八重」「土佐」「大名」「叩き」「藤」「牡丹」「菊花」「鳴門」「磯部」「松皮」「蝶」「束ね」「大原女」「逆」「蛇腹」「博多」「鹿子」「ちり」「薄」「銀皮」「皮霜」「火取り」「焼き目」「湯洗い」「湯ぶり」「昆布〆」「酢〆」「檸檬〆」「山かけ」「まぶし」「おろし和え」など