皮ごと食べる刺身の作り方・湯霜作りと焼霜作り

  

【皮霜作り】と金目鯛のさばき方

金目鯛の皮霜作り



皮ごと刺身にする手法に「皮霜作り」と「銀皮作り」があります。

皮霜は主に「皮目を炙って霜をふる焼霜作り」と「皮目を湯引いて霜をふる湯霜作り」の2種類。

銀皮作りは、極めて皮が薄い特殊な魚のみに用いる切り方で、タチウオやカツオなど魚種も限定され、通常はあまり使わない手法です。カツオは過剰演出であり別に皮つきで切る必要はないのですが、タチウオを刺身にするには必須の方法だと言えるでしょう(タチの皮を無理に引くと身が非常に「ショボく」なるからです)

銀皮作りとは~魚の皮を上手に引く(1)【銀をつける】

銀皮作りも皮霜作りも、1、「皮が美しい魚」。2、「皮目に旨味がある魚」であるということが条件です。

正直に言いますと、ほぼ1の理由のみで作ることが多いですね。早い話「キレイに見せたい演出」というわけです。典型的な例が「鯛の姿造り」で、これは皮霜作りにすると「かっこよく」なります。要するに見栄えがすると。

なぜなら、皮霜を作る機会が多い「マダイ」「キンメダイ」などは皮を引いても十分に美味しく食べられるし、食感も含めますとむしろその方が(皮が無いほうが)食べやすくて美味いとも思えるからです。いかに皮を加熱して食べやすくしても、やはり口の中でゴワゴワする感触は消えませんので。

皮を引いても美味しいキンメの刺身

金目鯛・黒ムツの皮を綺麗に引く 【銀を付けて皮を引く】

焼霜の場合は、直火で炎を当てタンパク質その他を変性させることで独特の薫香が出ます。典型的なのは「カツオのたたき」、それに「鮭皮の炙り」ですね。これらは演出目的ではなく、「本当にその方が美味くなる例」だと思います。この手法だと皮がほぼ消滅してしまうので、口に入れた時の違和感はほとんど無いですね。

まあ演出上の理由にせよ「皮つき刺身」は美しくもあるし、人によっては「この方が美味い」と感じもしますし、料理のバリエーションも広がりますので、やり方を覚えておくようにしましょう。

では皮霜二種「湯霜作り」「焼霜作り」を紹介します。

金目鯛の湯霜作り

安定して獲れると同時に、姿形も味もなかなか上等。そんな有り難い魚が、キンメダイです。

関東の主産地である相模湾じゃ、マダイの代用品として祝儀に欠かせません。その割には安価でして、優秀な魚です。寒くなって来ますと、一層脂がのり、美味しくなります。クセのない白身は、刺身でも旨く、どんな料理にしても美味い。

見分け方も簡単。
金目の名前通り、目玉が黄金色で全体的に光って澄んでるのが新鮮です。

キンメの最大の特徴は鮮やかな赤色

料理にするにもこの鮮やかな皮目をそのまま出してやりたくなります。刺身や握り寿司でもそれは同じです。そこで皮霜作りです。この系統の皮は湯引きにします。炙ると綺麗な皮が台無しになりますので。

つまり湯霜は「できるだけ皮を原型で見せたい」ときに使う方法なのです。色や模様を残せますからね。

金目鯛を三枚におろします。

捌き方・おろし方はスズキと同じです

スズキのさばき方

これを湯霜作りにしましょう。美しい赤の皮目を引き立ててもくれますので。


【皮霜作り】刺身・お造りの基本技術8種

一度切り目を入れ、二度目に切り離す『切り掛け作り』で刺身を引きます。

【切りかけ作り】刺身・お造りの基本技術8種

焼き霜作り

「焼霜作り」と呼べるのは本来なら「カツオのたたき」くらいです。

他は「水で急冷」する過程がありませんので、正確には「炙り刺身」「炙り作り」、もしくはたんに「炙り」というべきもの。

しかし両方とも「皮目を霜にする」わけで、湯と炎の違いでしかありませんし、煩雑になりますので、すべて焼霜作りとして紹介しています。

サーモンの焼き霜作り

鮭はともかく皮が旨い魚です。それだけで酒の肴になるくらいですからね。


鮭茶漬けの作り方

【肴】ヒレ酒とブリ皮炙り

皮だけをバーナーで「炙り」にしたのが、鮭の焼き霜作り。

魚を焼き霜にする時は、湯霜と違ってサクの段階で火を入れるのではなく、刺身に切ってから加熱します(カツオたたきは例外)。そうしないと刺身に切るときに皮がグズグズになります。

まず皮付きで刺身を引き

皮をよく炙って冷まします。

氷の上で炙っているのは、身の焼き過ぎを防ぐと同時に早く冷めるからです。

こういう感じになります。

太刀魚とイサキの焼き霜作り

ある種の刺身を岩塩で食べると旨味が増します。「ある種の」ってのは、『身自体に甘みがある』食材です。甘さをより強く引き立てて舌に伝える為に、少量の塩を隠し味にするのは昔からある調味法でもあります。小豆煮などが典型。魚介で言えば、イカ類の中では甲イカよりもヤリイカが塩が合う。ヤリの身がもともと甘いからです。

要するに何でもかんでも「塩の方が旨い」って事ではありません。山葵醤油が良い物もあれば、生姜醤油の方が合う物もある。マグロやカツオに代表される「青背の赤身」類は、独特の酸味を有するタンパク質で、生食の場合、山葵より生姜の方が美味しく食べれます。

一方、身が固く締まった鯛やヒラメといった「白身魚」類は、身に甘さを持っている種が多く、それらは少量の塩が甘さを引き出してくれます。

太刀魚やカマス、それにイサキ。この三種に共通してるのは、「皮とその境目が美味」って事。皮を引いて刺身にするのは勿体ない魚です。(タチの場合元々引けませんが)

それで皮付きで刺身にしたいのですが、「湯引き」よりも「炙り」の方がより美味しくいただけます。その時に「岩塩おろし」を少量使うと、見事に魚の旨味を引き出してくれます。この場合は醤油よりもレモンの汁などがよいと思います。

身が丸まったりしない様、また食べやすい様に、皮目に包丁を数条入れておきます。(写真はイサキ)

刺身を切り、その上に少量のおろし岩塩を乗せます。

先ほど説明しましたように、湯引きの場合は後から刺身を引いてもよいのですが、焼き霜の場合先に刺身を引いてから焼きます。(皮が崩れ易く、身が汚れますので)

下に氷を敷く事で、刺身の涼味を保てるし、必要以上の加熱を防げます。

カセツトコンロ用の簡易ボンベに付けるバーナーで充分ですが、それが無い場合は、食卓にカセットコンロを出しておき、炙りながら食べるなんて方法も可能です。冬の鍋の時期には好都合。