刺身の切り方
刺身の切り方を、初めて刺身を作る方にもできるだけ分かりやすいように、動画を使って説明致します。
刺身を切る準備
●刺身用のサク(短冊形に切り出したマグロなど)や、節(丸魚を五枚におろしたもの)を用意できましたら、それをいったん乾いた清潔な布巾やキッチンタオルなどで包んでおきます。
※刺身用のサクとは
刺身 作り方、切り方、盛り付け方--盛り付け方までの流れ→
●刺身を切る時のまな板は乾いている状態に。
濡れていてはいけません。(まな板の清潔度に疑問がある場合は、使う1時間~30分前に台所用殺菌剤などで洗い、乾かしておくとよいでしょう)
まな板の右側に、濡らして堅く絞った清潔なサラシ(布巾など)を畳んで置いておきましょう。
刺身は、その魚の状態にもよりますが3~5切れ切るたびに包丁を拭いてやる必要があります。下の動画ではそのシーンが映っていませんが、丁寧なお造りを作る際には必要な事です。また、まな板が魚汁で汚れたりしたら即座に拭きとって綺麗にします。そういう用途ですので、とにかく清潔な布巾を使うようにしましょう。新品か、お古なら殺菌漂白してあるものを
●よく切れる刺身包丁を用意し、まな板の上の方に切っ先を左、柄を右にして置いておきます。
●サク(または節)を、まな板手前から3~5センチ上に置きます。
まな板の下側の縁とピタリと合致するように真っ直ぐ横一直線になるようにしましょう。理想としては包丁の柄(持ち手)がまな板にかぶらない位置(下から3センチ上)が良いです。下の動画ではかなり上にサクを置いていますけども、これは撮影の都合などによるものですので、ここに書いた事を優先して下さい。
刺身の切り方 三種
刺身の切り方にもかなり種類がありますが、ここでは「家庭で刺身を切る場合」を想定した3種類の切り方を紹介します。
ほとんどの刺身は平作りでOKです。白身の魚とか、身の壊れやすい魚などでしたらそぎ作りを。
逆に身が固くて締りのあるタイとかヒラメのお造りなどにも必須の切り方です。そぎ作りは、切断面を広く出来るのが特徴で、寿司用のネタを切る時などもこの切り方を使います。
切掛け作りは少し変わった切り方ですが、これは主に皮付きのままで食べる刺身に使う手法です。どちらかといえばプロ向きの切り方なんですが、「家庭での刺身切り」でこれを紹介するのは【サバの八重造り】に使う切り方だからです。
シメサバがお好きな方はかなり多く、ですから一般の魚屋・スーパーの鮮魚コーナーなどでも〆サバは売られています。こうしたものが必ずしも切られているとは限らず、片身がそのままで売られているケースも多いですよね。そして、できれば切られていない物を買ったほうが良いのです。それを家で食べる直前に切るのが理想ですね。
ここではカツオを使って切掛け切りを紹介しておりますが、サバ等の刺身もやり方はまったく同じですし、カツオの方が大きいので分かりやすいと思い、カツオを使っています。
①平作りの切り方
これは平作りに限らず全ての刺身に共通していることですが、刺身包丁は根本の方(アゴ近く)から尖端(切っ先近く)をフルに使って「引き切り」します。
これをもっと具体的に言いますと、「握り手である右の人差し指の位置」から切り込みを開始し、「包丁先のカーブした部分の終わりごろの位置」で切り離すということです。
包丁の持ち方は基本的に「対象と直角」になるようにしますが、これはサクの形で変化します。節の場合は完全な長方形をしているわけではありませんので、直角のまま切っていると、全体を同じサイズの刺身にすることが出来ません。したがって一般的に包丁先を右側に押し込んだ斜めに持つようにします。
マグロなどのサクは綺麗な短冊形(長方形)をしているケースが多いですから、その場合は包丁を真っ直ぐに(直角)に持って切ります。
平作りのポイント
動画をよく見て頂きますと分かると思いますが、真上から見た包丁のミネ(背)がやや左の方に傾いております。
これが右に刺身を送っても崩れずに行儀よく並んでいる理由です。そして、盛りつけた時に「角が立って美しくみえる」理由でもあります。
②そぎ作りの切り方
そぎ作りは応用範囲の広い切り方で、「へぎ造り」と言います。
そぎ作りを薄くした場合は「薄作り」で、もっと薄く切れば「ふぐ作り」になります。
そぎ作りと薄作り→
寿司ネタを切り出す場合は、切り離す少し前に包丁を起こして真っ直ぐにし、直線に切り離します。
これを「小刃返し」と言います。
寿司ネタの切りつけ→
とくに難しく考える必要はなく、「これはちょっと平作りでは切りにくいな」と思った場合に、この切り方をするとよろしいでしょう。
そぎ作りのポイント
通常は切り離した形のまま右側に並べておき、
(左側に自然に倒し、ドミノ倒しのように並べる)
包丁を使い3切か5切を器に盛ります。
並べた形のまま盛り込むか、節・サクの形状によっては「180度回したり、上下を返したりする場合もあります。この場合は箸を使って盛込みます。
刺身の角を出す切り方→
③切かけ作りの切り方
「切かけ作り」は皮付き刺身用の切り方です。
いったん切り込みを入れてから切り離すという手法。
「切かけ作り」は「サバの八重作り」などがよく知られるケースですね。
これは刺身の皮が「醤油を弾かないように」そして「口に入れたときに違和感なく噛みやすくする為に」こうするのです。皮があると醤油が付くにくくなりますし、食べた時に皮がゴワゴワして柔らかな肉の感触が台無しになるのを少しでも防ごうという訳です。
通常の場合、切り込みは一本だけですが、例外的に3~5本の切り込みを入れて切り離すケースもあります。小骨が多い魚の「小骨を殺す場合」、「皮が極めて食べにくい魚の皮を殺す場合」「美しく見せたい場合(太刀魚銀皮造りなど)」
切り方そのものは平作りとまったく同じです。違いは切れ目だけといってよいでしょう。
刺身の幅の中央あたりに切り込みを入れ
次の包丁で切り落とす
切り離して、右に送る
カツオのタタキの場合は、必ずしも切掛け切りにする必要はありません。皮目をしっかりと焦がしていれば、口にあたる事はないですからね。この切り方は「皮付きの刺身を食べやすくする手法」ですので、皮が焼き切れていればそれでいいのです。ですから通常は上の「平作り」でかまいませんよ。
皮がしっかり焼けていなかったり、はじめから焼かない「皮付き刺身(銀皮造り)」の場合はこの切り方が必須になります。
刺身切りの練習
「どうもうまく切れない」
そういう方は少しだけ練習してみるのもいいでしょう。
なにしろ昨今は刺身用の魚も安くはありませんからね。
あらかじめ切り方の感覚をある程度つかんでおけば、本番の刺身をムダにする失敗もないでしょう。
自分は見習いの板前に、刺身切りをコンニャクで練習させることが多いです。蒟蒻は感触や形などが刺身の練習用に最適だと思います。
失敗してぐちゃぐちゃになったとしてもコンニャクは煮炊き用ですし、「まかない」で食べるようにすればいいだけですからね。
本番と同じように乾いた布巾などで巻いておき余計な水分などを除いておく。
平作り刺身の練習
そぎ作り刺身の練習