切りつけとサク
すしネタの切りつけや、刺身の切り方などについて思いついたことをチラホラ書きます。どちらかと言うと専門的なことなので、あまりピンとこんでしょうが、皆様よく食べられると思いますので、刺身作りなどの参考程度にはなるかもしれません。
刺身柵と寿司柵・手ザクと長ザク
これはハマチの節ですが、だいぶ大きめです。
このままだと寿司ダネにするにも刺身にするにも大きすぎます。
それでこの様に上部分を水平にヘギます。
これをテンパをハネルと言います。
そうして切りつけると、刺身でも寿司ネタでも良いサイズになるし、切りつけロスも減りますし、見た目もよくなるって寸法で。
サクの順目と逆目
ところで刺身やネタの切りつけは必ず筋目と交差するように包丁しなきゃいけません。
これは原則です。
しかし例外もあるって事を憶えときましょう。
例えばビンチョウやメジなどの魚は、非常に身が柔い場合があります。
そしてこのように筋目がほどけかかってるサク。
こういったのをそのまま交差して切るとね、バラバラになっちまいます。
それでどうするかっていうと、
こういうふうに、筋にそって切るんです。
順目切り
これを順目に包丁する、順目に切る、と言います。
寿司ネタの切りつけ方
寿司ダネの切り出しなんですが、これはサクから切り出します。
サクは二種類。
長ザクと、
ちょうど寿司のひとたけ(ネタの長さ)に良いサイズの手ザク
これは職人の指四本分が目安です。
手ザクはこのように切りつけます。
小刃返し
問題は切り離す部分ですね。直前に斜めになっていた包丁を直角になるように垂直に立てます。これを、包丁をかえす、包丁を効かせる、はねる、角をとる・つける、などと言います。
返しをきかすとこういうふうに屋根ができます。
長ザクの場合
血合いぎしの中トロ
これをしないで握ってある寿司もよく見ますが、やはり返しがあったほうが美しい。
寿司を盛り付けるときに、角を向こうにして流す(並べる)職人もいますが、おいらは角を手前に見せた盛り方が正しいと考えています。美味しそうで綺麗な面をお客に向けて出す、が、日本料理の機微だからです。
※返しをきかす=小刃返し(こばがえし)
すーっと切り込んで最後の切り離す瞬間だけ「立てる」ような感じにする。包丁刃の先端(刃線・刃道コンマ数ミリ)を小刃といい、包丁全体を傾けるのではなく、その小刃部分だけを利かせるので小刃返しと言われます。
サクの切りつけ
サクの切り付けをもう少し詳しく説明します。
まずサーモンを使っての手ザクの切り方をみましょう。
鮭という魚は生で食べるには色々問題があります。寄生虫の事だけではなく、身質の軟弱さとか。ですから刺身に、あるいは握りにするときは、塩と酢で締めて使う方法をとる店が多いです。締めるといっても、サイズの違いもありますから、シメサバの様な食感にはならず、ほとんど生魚の味覚を保つことができます。
手ザクの切りつけ
手ザクのサーモンを切りつけます。中心の綻びは小骨を抜いた跡で、サーモンは小骨が長く大きいので抜くのはかなり大変ですが、必ず抜かなければいけません。
皮つきで切ってますけども、皮目の色、脂、食感を損なわない様に、お客に出す直前まで、皮はつけたままにしておくのが一般のタチ店(回転やレストラン形式以外のカウンターメインの寿司屋)では普通です。
サク全部を切ってしまうときは、先に皮を引いてから切った方が良いです。
川魚特有の寄生虫の問題と、肉質の脆弱さの問題を回避して、生刺身を味わう為の他の方法が完全凍結で、中心まで凍った状態で24時間以上おきます。通常は漁船内や漁港、業者の凍結設備で凍らせてますから問題ありません。このサイズの魚を家庭の冷凍庫で中心まで凍結させるのは無理ですからね。(マイナス50度が必要)
締めないで刺身にするには、完全に解凍しない方がよいです。要するに半解凍状態、これが北海道でいうルイベですね。半凍りの刺身は独特の味覚で口当たりも良いですし、それが嫌なら少し時間をおけば生状態になる。刺身を引く時に非常に扱いやすくもなります。
下は11月頃から最盛を迎える『鮭児(ケイジ)』を切ってるところです。
これは締めてありません。ルイベ状態が少し解けたくらいの感じです。
長ザクの切りつけ方
マグロやカジキのサクは、寿司ネタ用、刺身用がありまして、刺身用のサクは「高さ」を倍くらいにし、これは出来るだけ隅々の角をきっちりつけた長方形にします。
しかし刺身用のサクから寿司ネタを切り出す事も、現場ではよくある話です。平作り用、あるいは寿司ネタ用の低い長ザクからネタを引く場合、包丁を斜めにして切るんですが、最初の一切れが問題になります。
よく見かけるのは始めの一切れを三角状に切り落とし、二切れ目からネタにしていくやり方。多くの板前がこの切り方をしますが、これでは一切れめがロスになります。いわゆる「手クズ・切りクズ」になります。
大トロなどは一切れがかなりの値段しますから、馬鹿になりません。包丁をうまくきかせれば、長方形の角とはいえ最初の一切れからネタになります。
下の画像の様な切りつけ方をすると無駄が出ません。
①
最初に角を切り落とすのではなく、角度を大きくとって標準サイズのネタに切り出す
②
包丁の角度をかえつつ全てのネタを標準(最初の一切れ)と同じサイズに切っていく
最後の一切れも大きく残すことでネタとして使えますから、サク全部を無駄なく使えます。
長サクや節からネタを切り出すとき同じサイズに切るには、下のページも参考にしてください
魚の切り方→