ちらし寿司の作り方
簡単に作れるちらし寿司
ちらし寿司は見た目が華やか、のせるもの次第で豪華な感じになります。なので「作るの面倒そう」とか「作るの難しそう」とか思ってませんか。実はメチャクチャ簡単なんですよ。
「すし飯」さえあればあっという間に出来ます。具は冷蔵庫にあるものだけで大丈夫ですし、刺身がなければ「五目ちらし」にすればOK。なぜかと言いますと、ちらし寿司には決まった形式が無いからです。
極端な言い方をすれば【食べられるものなら何でも】寿司めしに載せるだけ。と言ってもいいくらい。
ちらし寿司は「作り方」ではなく「盛り付け方」であるとも言えます。盛り付けのセンス(とくに配色のセンス)がこの料理のポイントになるからです。
ちらしのコツは料理の五色【しょうおうしゃくびゃくこく(青黄赤白黒)】のバランスです。
暗色を下に隠し、明るい色を表面に出す。卵焼きの黄色、赤色のもの、緑(青)のものを最後に盛って仕上げるのですね。
では具体的に五目ちらしと海鮮ちらしで説明していきましょう。
五目ちらしの作り方
(1)煮物
椎茸、干瓢、高野豆腐、油揚げ、筍、穴子、煮イカ
(2)茹でたもの
エビ、タコ
(2)酢の物
締めさば、レンコン(酢バス)、季節の甘酢漬け
(3)彩り
オボロ、卵焼き、きぬさや、木の芽、かまぼこ
もちろんですが、これを全部用意する必要はありません。「それらしき食べ物」でいいのです。
ただ、ちらし寿司らしくするために「煮シイタケのスライス」か「煮かんぴょう」、「錦糸卵(薄焼きを細く切ったもの)」、「木の芽」か「絹さや」、この三種だけは欲しいとこです。
あと、赤色のもの、「ボイル海老」か「イクラ」。(タラコや明太子で代用可)
紹介する五目ちらしは、手近にあるものを寄せ集めて作ったものです。器は重箱を使っていますし、可能であれば漆器(塗りもの)が良いのですが、絶対ということではありませんよ。お皿や丼などでも十分ちらし寿司は作れます。ようは盛り付け次第なのですから。
五目ちらし 盛り方
① すし飯とゴマ
すし飯を詰めて上にゴマや海苔などを散らす。
② 煮物を散らす
まず濃い味の煮物(暗色)を散らします
次に少し薄色の煮物を(ここでは煮穴子)
③ 明るい色を重ねて空間を埋める
桜でんぶなど明るい色の物を散らす
表層は錦糸卵(薄焼き卵を刻んだもの)を
卵焼きの黄色は、最後に散らす主役を引き立てるためのキャンパスですね。
④ メインの食材を散らす
今回の主役はシメサバ代わりのコハダ
そしてボイルしたエビ
⑤ 仕上げのあしらい
イクラと
緑(青)は木の芽や絹さやの代わりに西洋ハーブ
彩り(いろどり)をあしらう時は、「散らす」ではなく「配置する」という感じです。
出来ました
これに花レンコンなどを合間に差し挟むように加えると良かったのですが、たまたま切らしていて残念。これに加える場合はカットして半月にしたレンコンが良いですね。
花レンコン梅酢などで紅色にすれば、海老やイクラなどの代わりの「赤」にもなりますね。
吸い物の作り方、シメサバの作り方、コハダのさばき方、エビのさばき方、卵焼きの作り方
酢バス(酢れんこん)、かんぴょう、しいたけ、アナゴの味付けなど→和食の合わせ調味料一覧
生ちらし寿司の作り方
上で紹介した「五目ちらし」は、正確には「ばらずし」になります。そして今から紹介する「海鮮江戸前ちらし」が、昔は「ちらし五目ずし」と呼ばれていたものです。そのへんのややこしさは最後に説明しますが、とりあえず「関東生ちらし」「海鮮ちらし」とかそういう感じだと思ってください。
このちらしは生モノがメインになります。刺身ですね。
脇に少量の煮物、添えにキュウリや卵焼き、ガリなど。
作り方
このちらしもやはり盛り付け方がメイン。主役のネタを引き立てるようにさえ盛れば良く、あとは作る人の感覚次第だといってよいでしょう。
玉子焼きもキュウリもお好きなように切ってください。
玉子焼き
きゅうり
ちらしの器は一般的に角か丸の塗り(蓋付き)を使います。
もちろん、丼鉢でもかまいません。
・すしめしを詰めて海苔を敷く
・刺身を切る
刺身の切り方→
※何の刺身でもかまいませんがマグロとイカはあった方がいいです
マグロの位置を決め
マダイを隣に
イカに
コハダも加え
出来上がり
これにガリなどをのせてやれば完成です。
たまたまあったネタを使って何も考えることなく盛りました。まったく「行き当たりばったり」です。商品ではないので次に盛る時は別なモノになると思います。ちらしとはそういうものなんですよ。
決まりは特にないのです。ある物を上手に使って作ってみましょう。
キュウリや卵焼きの簡単な飾り切り |
煮アナゴの作り方 |
ガリの作り方 |
ちらしの材料は手巻し寿司と同じようなものが多いです。ご参考に
手巻き寿司の材料など
ちらし寿司とは~「五目ちらし」と「ばらずし」
「ちらし寿司」という料理名
「ちらしずし」は誰でも知っております。だが「五目ちらし」・「生ちらし」・「ばらちらし」などの違いは少しモヤモヤしてわかりにくいですね。これらのちらし寿司の何がどう違うのかを正確に言うのはけっこう難しい。
関東(と寿司屋さん)では、普通に生タネをのせたものが「ちらし」です。しかし料理書などで「ちらし寿司」を探すと、必ずというくらい「五目ふうちらし」のレシピが載っていますね。
でも、すし屋さんでちらしを頼むと当然のように「生ちらし」というかまるで海鮮丼のような料理が出てきます。
いったいどれが本当の「ちらし寿司」なんでしょうか。
これは「どれが本当の」とかいう事ではなく、みんなちらし寿司なんです。整理して説明しましょう。
ちらし寿司は江戸前寿司が発展する前から、日本全国に郷土料理として存在していました。地方によっていろいろなちらしがあったし、今もあるのです。
ちらしにも関東風と関西風があります。関西風ちらしは、すし飯に煮物を中心にした具を混ぜ込んだもので、これを「ばらずし」と呼んでいました。郷土料理として多数ある各地のちらしも「ばらずし系」が多いです。
一方の関東風ちらしは、すし飯の上に具を飾るように散らした「ちらし五目ずし」です。これは「吹き寄せちらし」とも言われます。
江戸前ずしでも最初の頃は(ちらし五目ずしと呼ばれていた時代)、ちらしの具に煮物やオボロなど火を入れたものを使い、生のタネは使っていません。
つまり関西風と関東風は「すし飯に具を混ぜるか、上にのせるか」の違いしかなかったわけです。
ところが時代が移り、江戸前寿司が生ネタ中心になります。昔風の「火を入れたネタ」は徐々に姿を消し、刺身ネタがメインの寿司屋ばかりになりました。
こうなると、ちらし寿司も五目ダネ(煮物系)は名前のみになり、刺身をアピールする「海鮮すし丼」のようになるのも必然だったでしょう。そのほうが見た目が豪華になりますから客にアピールしやすいし、わざわざ手間の掛かる煮物ネタを揃える必要もありませんし。
ようするに「ちらし五目ずし」と呼ばれていた料理は姿を消し、寿司屋が売りたい(売り物にしやすい)「海鮮生ちらし」を売るようになって現在に至る、とういうわけです。
なにしろ全国の寿司店がコレをちらし寿司として売りますから、ちらしは海鮮丼風のものというイメージが広まるのも当然といえば当然。昔の関東風というか江戸前の「ちらし五目ずし」は消え去る流れに。
この結果面白い現象が起きました。「五目ちらし」の名称が「ばらずし」にとって代わり、本来はばらずしであるものが五目ずしと呼ばれるようになったのです。「ばらちらし」という呼び方よりも「五目ちらし」の方が語呂が良いという理由もあったでしょう。
今では寿司屋が売っている生ちらしを「ちらし寿司」、主に家庭などで作る混ぜ込み系ちらしを「五目ちらし」と呼ぶ「住み分け・呼び分け」が出来たようです。
現在の東京においては(全国的にそうですが)、刺身など生ネタが彩りよく並べてあるものが「ちらし寿司」であり、そうではないもの(例えば穴子を混ぜ込んだものとか、生ネタが入っていないもの)を主に「お土産用ちらし」に分けてるのが普通です。
各地の名物(例えば岡山のばらずしや長崎の大村ずし)などは独自の名称で販売。五目系(ばらずし系統)は外食からは消えつつあります。「五目ちらし」というカテゴリは「家庭のちらし」になってきているという事ですね。
ちらし五目ずし『吹き寄せちらし』
「すし飯の上に具を散らすもの」が「ちらし五目ずし」です。作り方は江戸前寿司の伝統的な仕事を施したネタを使います。
生ネタではなく、「煮〆」してあるネタです。
煮物は
干瓢、椎茸、穴子、蛤、烏賊、
他に
酢バス、ギョク、オボロ、エビ、酢蛸
しめ鯖、小鰭、白身の昆布〆
こうしたネタを「吹き寄せ」たのが江戸前の「ちらし五目ずし」生ものは無いのでサビもしょう油もなし。
ちらしの原型は米飯の存在とほぼ同じくらいの歴史があるはずなので、こういう料理の起源を考えるのは無意味に近いことです。「延喜式」の時代にはそれらしい料理が存在していた様ですし、当然その遙か昔からそういう食べ方があった筈です。多様化を遂げたのは応仁の乱以降の時代と、酢が一般的になった江戸時代からになると思います。現代の形に近くなったは明治でしょう。
今からはどんどんネタの種類も増えて、海外の食品も多用されるようになるでしょう。【食べられる物を寿司めしの上にのせるか混ぜるかした料理】そうなって行くかも知れませんね。もともとちらし寿司はそういう料理なのですから。