天ぷらとかき揚げ
天ぷらを上手に揚げて美味しい料理にするためには、「火をしっかり入れる料理なので保存できる」という固定観念を捨てることです。
揚げ物全般に言えますが、特に天ぷらは寿司よりもさらに作りたてが命です。ある意味で刺身よりも鮮度が大事になります。理由は衣が吸った油にあります。空気に触れる事で、変化しちゃうんですよ、悪いモンに。酸化ですね。
新鮮でなきゃダメ。ですから江戸前すしと同じように、天ぷら専門店でもカウンターで揚げたてを出すのですよ。
これが分かりますと、「衣の加減」「火の加減」の意味が理解出るようになり、作る段階で美味いテンプラのイメージができ、上手な天ぷら作りが出来るようになります。
天ぷらのコツなど
慣れない方に、天ぷらがカラッと揚らない原因を。
① 衣が粘っている
② 油の温度が低い(もしくは途中で低下させた)
③ タネに火が通っていない(これも温度コントロールの問題)
この三点に注意すればカラリと揚るって訳です。
衣を粘らせない
冷やした水をボールにいれ、そこに振るった粉を入れる(粉が先では駄目です)太めの箸で切る様にざっくりとまぜる(泡立て器は駄目)
ダマができるくらいの粗混ぜでよい。かき混ぜないこと。
揚げる温度
天ぷらは180度を維持します(材料で加減が必要)。揚げ物をするとき、材料を沢山入れすぎると、急激に温度が下がるのを忘れてはいけません。
衣を入れてみて、油量の1/3くらいのところで浮いてくれば180度。かき揚げ/天ぷらの適温。底ちかくまで行けばカラ揚げの適温。
※天ぷら油の温度は材料で違うので加減が必要です
天ぷらの揚げ方→
これはエビの天ぷら
大車の天ぷらですが、天ぷらには小型クルマエビ(サイマキ)の方が良いです 。海老の天ぷらは下ごしらえが大事で、筋を切って真っ直ぐにしておき、尾の水分は取っておきます。
衣をつけた箸の先で突っつきながら一周させて整えながら揚げます。活き海老は衣を薄くして軽く揚げ、冷凍海老はその逆にします。
料理好きのお客様からよく聞かされる話に「どうしても家では天ぷらがうまく揚がらない」というものがございます。
実を言いますと粉や油の良し悪しなどはあまり問題ではありません。ご家庭で天ぷらがうまく揚がらない最大の理由は油の量にあります。
ご家庭ではあまりにも油の量が少ない。天ぷら鍋のサイズはそう大きくなくても構いませんが、「深さ」のある厚めの鍋を使い、油をたっぷり使用してみて下さい。使い終えた油は漉して冷ましておきますと最後まで残さず使えます。光りなどを遮り酸化をしない工夫をします。
かき揚げのコツ
かき揚げが巧く揚げれれば、揚げ物上手になります。
揚げ物は「油の温度」と「ころも」がポイントになるって事は上に書きました。それと同じくらい大事なのは揚げ種の選別と下ごしらえなんですが、そのセンスを身につけるにはかき揚げが一番だと思います。
揚げ種の選別
例えばミツバや春菊は例外として、ホウレン草や白菜などの葉モノは向きませんし、赤身の魚は使いません。取り合わせでは香りの強いもの同士を合わせると、両方の香りを失ってしまうので避けます(ネギとミツバ等)。また、牛蒡や芋類は単品揚げではよいのですが、他の材料と合わせるのはよくありません。逆に相性の良い代表がミツバとエビや貝柱やイカ。
彩りにも配慮が必要です。
最低でも、赤、青(緑)、白の三色を組み合わせましょう。
下ごしらえ
下ごしらえで最も重要なのが、材料の水分を抜いておくという事。油と水の仲の悪さは周知ですが、それをカバーするために「衣」を使います。ですが完全にカバー出来るわけではありません。
薄塩や数滴の醤油をあてて、水気をできるだけ抜きます。それでも水分は残りますので、粉を付けたあと材料を重ねたり、時間を置くと、種から水分が出て衣を湿らせます。
湿った衣ではカラっと揚がりません。だから粉をしたら即座に揚げなければならない訳です。ただし干物ではありませんので、水分を抜き過ぎてはいけません。旨味や食感、つまり材料の持ち味を消しては意味がないですから。要は加減です。
揚げ方
よく見かけるのがハンバーグやコロッケの様なボテっとした肥満型のかき揚げですが、あれは揚げ方のせいですね。いっぺんにドバって種を入れてしまうからです。
お玉などで少量の揚げだねを、揚げ鍋に散らす感じで入れます。散らしたものをすぐに箸でまとめれば良いのです。ところどころに隙間が空いているのが、かき揚げってモンです。
・かき揚げの揚げ方(一例)
まず粉を具にまぶします。
ここに衣を加えて、手早く油に入れます。鍋の隅を利用するとよいでしょう。
天ぷらの彩り
素麺
春雨
素麺や春雨を揚げたもので【綾白髪】と言います。
天ぷら盛りの飾り揚げというか脇役ですね。
変わり揚げ
揚げ物に慣れて来ましたら、今度は目先の変わった揚げ物を試してみるとよいでしょう。衣にゴマを纏わせたりする「変わり揚げ」です。
◆磯部揚げ
衣に青ノリを。代用として青ジソもある。
シソを細かく切ってつければ、{ひすい揚げ」
◆黄身揚げ
小麦粉と片栗粉を同割りで合わせ、黄身を加える。
◆立田揚げ
いわゆる「唐揚げ」とほぼ同じ。
◆新引き揚げ
各色の新挽粉(もち米の粉・道明寺)を衣に。
◆落花生揚げ
ピーナツを砕いたものを衣に。
◆丹波揚げ
生栗を削ったものを衣に。
◆利久揚げ
各種のゴマを衣に。
◆湯葉揚げ
乾燥湯葉を粉にして衣に。
以上は和食でよく使う変わり揚げの一部ですが、他にもアイデア次第でいくらでも出来ます。色々試してみて下さい。
天ぷらの油
昔は白絞油やコメ油が多かったのですが現在は白絞油をさらに精製したサラダ油が全盛です。サラダ油に胡麻油を加えて天ぷら油とする処が多いようです。
天ぷら専門店では胡麻油だけで揚げる店もあり、その場合は香りを押さえた太白胡麻油を使用します。太白100%は少し高くつきますが明らかに違いが出ます。