癌・老化・認知症と栄養
アンチエイジングという言葉を近年よく耳にしますが、昔はあまりそういう類の話が注目を浴びることはなかったような気がします。もっとも、古代から延々と「不老不死」が人類の願望だったのは確かですけどね。
老化のシステムが科学的に解明されつつある事と、再生医学などの進化が相まって、「手が届きそうな感じ」という期待が現実味をおびてきた。そいうふうに「思わされている」からではないでしょうか。まあ、「ムードだけが先走っている」という様相ですね。
老化を早める物質などの研究が盛んですし、そういう物質を人為的に不活性化させたマウスの実験レベルでは、寿命を延ばすことに成功した例もあるようです。
ですけどね、「夢は夢、願望は願望」にすぎませんよ。
ネズミの寿命が延びたからといって、それですぐにヒトが200歳まで生きられるようになるわけでもないでしょう。
今を生きる我々普通人にとってみれば、「テロメア」だの「テロメラーゼ」だのは、どうでもいい関係のない言葉でしかありません。
そんなことよりも、「90歳くらいまで病気をせず健康でいられたら」という思いの方が、より現実的な問題になりましょう。現段階では「それ以上」を願っても、現実味というものがまったくありません。絵空事に近いと言えましょう。
どうあってもヒトは老いていくし、老化にともなって重篤な疾病のリスクも高まっていきます。細胞も弱まりガンのリスクが、血管の老化で心臓疾患・脳血管障害のリスクが、それは避けられないのです。
【健康寿命】の方が大切あり、現段階でわかっている健康寿命を延ばすキーワードは3つ。
・【抗酸化】 フリーラジカルへの抵抗 ・【抗糖化】 血糖による糖化反応を減らす ・【抗高エネルギー】 過剰なエネルギー摂取が上の酸化・糖化を加速させている |
この3つの逆をしていることが、ガンのリスクを増大させ、同時に「体内老化」を加速させているのです。
「見かけ」だけ若々しくても意味はありません。
カラダ内部が健康であってこその長生きです。
老化と癌
ガン予防と老化防止
老化を防止してガン発症リスクを減らす栄養素 ・DHA・EPA (脂肪でありエネルギーが高いので、該当食品は1食100g以下にする) ・ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸 ・セレン ・発酵食品 ・食物繊維 ・ガンや老化防止が期待できる成分 スルフォラファン、カテキン、クルクミン+ピペリン、ククルビタシン、リコピン、アスタキサンチン、ヘスペリジン、レスベラトロール、ジンゲロール 、ナスニン、カルコン、ケルセチン、シアニジン、ゴマリグナン、グルタチオン、シニグリン、テアフラビン、アリイン・アリシン、イソフラボン、アリルイソチオシアネート、イソチオシアネート、カンファー、カルノシン酸、フィチン酸、ウルソル酸、クエン酸 ※発ガン性物質ができる組み合わせなどに注意してください |
ガンの予防とアンチエイジングは、ほぼ同じです。
「どうして老いるのか」「なぜガンになるのか」
この2つの疑問に対する答えはまだ見つかっていません。
様々な説があり、信ぴょう性が高い説もいくつかありますが、根本的な解明は程遠いといってよい現状です。簡単にいえば「まったく分からない」ということです。
だだ、分かっていることも幾つかあります。
それらを総合すると、老化もガンも、その鍵は細胞が握っているということです。まぁ当然といえば当然な話かも知れませんが。
ガンも老化も、「酸化」によってリスクが増し、「糖化」が酸化を加速させる。これは確かなようです。
活性酸素というのは、体内の代謝と不可分の存在ですけども、これが過剰になると他の分子、とくにDNAを損傷させてしまうやっかいな性質を持っています。このことで細胞が老化し、さらにガン化する可能性を高めます。
また、高血糖の人は寿命が短くなることが分かっており、老化現象を加速させることも分かっています。加えて、血糖は糖化反応により活性酸素と同じように酸化を進行させてしまいます。
老化や癌だけでなく、ありとあらゆる病気に活性酸素は関わっています。「悪化させる」という関わり方です。
「活性」という言葉が鍵かも知れません。
ロウソクの炎やマッチの火は、激しく燃えるとそれだけ寿命が短くなります。とくに酸素が関与すると大きな炎になります。
いくつかの重要な研究で、摂取カロリーを抑制するとマウスの寿命が長くなるという結果が出ています。
高カロリーが「カラダの炎を激しく」させるとともに、活性酸素を増加させ、それが結果として酸化を早めている。
あえて比喩すれば、「太く生きると短く」「細く生きると長く」ということになりましょう。
こうしたことを総合しますと、【抑制は不可欠】ということになりましょう。長生きはまあ兎も角として、病院にしばりつけられるハメにだけはなりたくない。
結局、あるていどの【摂生】は必要だということですね。 大昔からの言い伝えが真実だったのでしょう。
AGEs(エイジス advanced glycation end products) AGEsは、タンパク質が糖化(メイラード反応)することで生じる化合物です。終末糖化産物、後期糖化生成物、糖化最終産物などとも呼ばれます。 数十種類のAGEsが発見されていますが、いずれもヒトの体内で活性酸素に匹敵するマイナスの作用をしています。 アルツハイマー病、加齢黄斑、皮膚老化、筋委縮、動脈硬化、関節リウマチ、歯周病、骨粗しょう症、骨化症、などの老化と関係する疾患と深く関係しており、また、インスリン抵抗性、糖尿病性合併症、脂肪肝炎、神経変性疾患などあらゆる疾患とも関与しています。加えて糖化反応によりフリーラジカルも発生し、酸化を促してガンのリスクも高めます。 食品に含まれているAGEの90%は消化器官により分解されますが、10%は体内に残るとされています。 これを体内に増やさない方法は、糖の過剰摂取・たんぱく食品のコゲに気をつけることですが、改善策は【肥満防止対策】とほとんど同じであり、活性酸素対策と同じく禁煙なども推奨されます。調理法では、蒸し料理、電子レンジの多用などをおすすめします。 適度な運動を続け、糖質を制限し(グリセミック指数の低いものを摂取)、食物繊維を多く摂り、ジャンクフードを避けるなど、メタボリックシンドロームの予防とまったく同じと言ってよいでしょう。AGEsを抑制する物質なども見つかっていて、白ワインなどに含まれています。 |
Dementia
認知症予防
認知症・もの忘れを予防する栄養 ・DHA ●脳の健康に欠かせないビタミン ☆記憶力を向上させるビタミン パントテン酸 ナイアシン ☆気分の落ち込みを防ぎ元気になるビタミン ビタミンB1 ビタミンB6 ビタミンB12 葉酸 ビタミンC ※ホモシステイン(アミノ酸)が増えるのも認知症のリスクを高めます。葉酸やビタミンB群で抑制しましょう。 ●脳の健康に欠かせないミネラル ・カルシウム・マグネシウム・マンガン イライラや不安をおさえる ・亜鉛 不足すると心のバランスが乱れる ●認知症予防に関連する成分 ポリフェノール類、レスベラトロール、テアフラビン ★その他 ・グルタミン酸 グルタミン酸は脳内に存在し、記憶力などの役にたっています。しかし、多すぎると神経細胞の毒になり興奮作用が顕著になって最悪の場合死に至ります。化学調味料のグルタミン酸ナトリウムを摂り過ぎると良くないと言われるのはその為です。 自然のグルタミン酸は穀物製品や種実類に豊富です。 ダイズ、ゴマ、ライ麦、全粒小麦粉、ナッツ、ヒマワリの種などで摂取できます ・イチョウ葉エキス 数千年前からイチョウ葉には記憶を良くする効果があると云われてきました。自然療法先進国のドイツやフランスではかなり研究が進んでいます ※ハンガリーで開発された、ツルニチニチソウから抽出したサプリメント「カビントン」は記憶力の改善に一定の評価があります。(日本では頭痛改善薬として販売されましたが、2001年に撤収しています) ※イチョウ葉エキス ・PC(フォスファチジルコリン) アセチルコリンの不足が記憶力低下要因のひとつ。しかしアセチルコリンはなかなか脳に到達できません PCは、アセチルコリンを脳に送ることができる成分です 納豆などのダイズ製品、卵に含まれています ・PS(フォスファチジルセリン) 記憶力改善に効果があるとされる ・DMAE(ジメチルアミノエタノール) イワシに含まれる成分で、「脳に届くアセチルコリン」を作り出す ・ピログルタミン酸 アセチルコリンの増加や安定に役立つアミノ酸 |
ヒトの脳は、硬い頭蓋骨、その下の硬膜、クモ膜、軟膜と幾重にもガードされています。クモ膜と軟膜の間は脳脊髄液に満たされ、脳はその液体に浮いた状態になっています。液体が外部のショックを吸収している構造ですね。
大脳は左右2つの半球に別れ、脳梁が2つの半球を繋いでいる。左脳は主に理論的な、右脳は直感的・創造的な思考機能を担当。脳梁を通して右脳と左脳は密接に連絡しあっています。
脳にはニューロンという神経細胞があり、ニューロン同士がシナプスで繋がって複雑な回路を構成しています。神経細胞が他の細胞と違うのは、再生しないという点。死滅していくだけなのです。
減っていくだけならば、加齢とともに思考能力が低下していく一方なので、誰もが50歳にもなれば呆けてしまう筈なのですが、そうならないのは、「頭を使うことで」脳を鍛えることが可能だからです。
神経細胞も勿論大事ですが、重要なのはシナプスの構造(ネットワーク)なのです。そのネットワーク上に記憶を始めとした大切な情報が保存されていて、このネットワークは頭をつかう事によって、より強固にできるのです。
シナプス間の情報伝達を大いに助けているのが「DHA」であり、だから「DHAは頭を良くする栄養」と言われています。 この反対に、伝達機能を邪魔する物質もあり、その最たるものは「糖」です。「砂糖は頭に良い」どころか、「砂糖は頭を悪くする」という学者が多いのですよ。
様々な研究から、グリセミック指数の高い食品を過剰にとっていると、集中力、記憶力、創造力、理性などが低下するのは明らかで、左脳機能も右脳機能も確実に悪化させるのです。認知症も高血糖と関係しているのは間違いないでしょう。
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認知症は、レビー小体病や脳血管性認知症など色々タイプがありますが、アルツハイマー型認知症がよく知られるところです。認知症の代名詞と言ってよいくらいです。
記憶力・見当識・判断力が低下していき、最終的には完全に自失してしまいます。そうなれば植物人間と同じです。それでも進行しますからいずれ脳機能は破壊される。つまり死ぬわけです。
この病気が他の老人病と違うのは、「周囲に迷惑をかける」という点です。徘徊、妄想、幻覚、暴言・暴力などの異常行動をし、その行動を記憶していないのですから、周囲の負担は想像を越えるものがあるでしょう。
絶対になりたくない病気の代表ではないでしょうか。
しかし、残念ながらこの病気は増加を続けていて、おそらく今後も増え続けるでしょう。
原因はまだはっきりせず、様々な説がでていますけども、筆者は「食習慣」がもっとも大きな原因だと思っています。アルツハイマー病というのは、糖尿病と強い関連があり、糖尿病は「飽食の病」だからです。
現代社会の「食べ物のありかた」は異常としかいいようがないにも関わらず、科学界やマスコミも、そして公権力も「見ないふり」というのが基本スタンスです。地球温暖化がいくら心配されようと、誰も本気で止める気がないのと似ています。
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trans fat トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸と同じく、体内で良くない作用をすることが知られている不飽和脂肪酸です。 飽和脂肪酸と同じくらい悪玉コレステロールを増加させ、ついでに善玉コレステロールを減らす。これによって虚血性心疾患の原因になります。(オランダの研究で明らかになった) アメリカのハーバード大学も1970年代から研究を続け、トランス脂肪酸を摂っていると、場合によっては50%も心臓病になる確率が高まると結論づけています。 トランス脂肪酸というのは自然界にも存在しますが、問題になっているのは人間が作り出した人工トランス脂肪酸の方です。 リノール酸など常温で液体の不飽和脂肪酸に、水素を添加して固形の油脂を製造するとき出来る副産物がそうです。 なぜ水素を添加するのかというと、マーガリン・ファットスプレッドやショートニングを作るためです。マーガリンというのはバターの代用に、よりコストをおさえて安く製造販売するのを目的に生み出されたものです。ショートニングも同じ理由です。 人工的な副産物ですからタダのように安い。なので、コストを優先する巨大飲食産業で好んで使われています。 マーガリンやショートニングを使った加工食品はもとより、マヨネーズ、ポテトチップス、フレンチフライ、チキンナゲッツ、菓子パン、ケーキ、クラッカー、ドーナッツ、ミルクビスケット、各種フライ、キリがないくらいです。 ところが前述のように各国の研究によって【狂った脂肪酸】であることが確実になりました。WHOの再三の警告もあり、各国はトランス脂肪酸を厳しく規制するようになりました。 しかし、「添加物超大国」である日本国だけは特に規制をしていません。 お役人によれば「日本のトランス脂肪酸平均摂取量は日本独自の食文化もあって外国より少ないから」だそうです。 厚労省というところは、とにかく消費者のことはまったく考えていない事が分かりますね。 日本独自の食文化どころか、今や若者を中心に西洋を上回るほどの「ジャンクフードの食文化」になっている現実は完全に無視というわけです。日本マクドナルドなどの存在を知らないとでもいうのでしょうか。 ところで、このトランス脂肪酸は、心臓疾患だけではなく、脳に大きな影響を与えて認知症のリスクになることも分かっています。 食べ物から摂取したトランス脂肪酸は、一応「脂肪酸」ですので割と簡単に脳にもぐり込みます。 脳の思考回路では、DHAが非常に重要な仕事をしていますが、トランス脂肪酸はこのDHAの作業を邪魔して思考プロセスを混乱させるのです。 DHAだけでなく、γリノレン酸やプロスタグランジンの妨害もします。サウスカロライナ医科大学によると、こうした妨害によって「脳が重大なダメージを受けているのは確実」だそうです。 今や、アメリカや欧州では「トランス脂肪酸により心臓病とアルツハイマー病が増加している」というのは常識です。 とうとう飲食産業大手も自主規制を始め、トランス脂肪酸から距離を置くと発表する企業が増えています。しかし、日本の企業はまだまだ鈍く、そういう発表をした企業は極めて少数。 あれだけ低コストの「あぶら」はなかなか手放せないのでしょうね。日本国内では批判の声も少ないし、使える間は使い続けるつもりでいるのでしょう。 健康寿命を願うのでしたら、ファストフードとは適切な距離をおいた方がよいと思いますよ。 |