香辛料と和食
歴史では、千年という単位で古代からたびたび『シルクロード』や『海のシルクロード』が浮上します。
確かに『繊維』(布地)の道であり、『玉』(宝飾品や陶器など)の道であったのは事実でしょう。東西交易ですね。
しかしさらに重要な物の道でもありました。
それは『香辛料』です。
特に、肉が主食の西洋文明にとって、無くてはならない物が【胡椒】でした。
ローマ時代までの西洋にとって香辛料といえば、【ハーブ系スパイス】がほとんどで、東洋の【スパイシースパイス】は幻に近いほど貴重なものだったようです。価値としては金や宝石ですな。
やがてキリスト教の世になると、異教との争いの過程で、アラビア人やペルシャ人から東洋のスパイスがもたらされ、ヨーロッパに広まっていきます。
用途が分かってくると、【スパイシースパイス】がいかに貴重なものかも広まって来る。肉の貯蔵も含めて、スパイスなくしては食生活が成り立たなくなるほどでした。その代表がインドのコショウってわけです。
13世紀にマルコ・ポーロの『東方見聞録』を読んだ西洋の人々が考えたのは、何も中近東の人に高い金を払って入手しなくても、直接手に入れればよいとう事です。それほど大量に使う様にもなっていたんですね。
コロンブスやマゼランが目指したものは『新天地』よりも、【金】と、そして【香辛料】だったってわけなんです。その後は各国入り乱れての『植民地争奪戦』結果数百年で、西洋は望みの品を完全に手中にしたというのが歴史です。
香辛料の重要な特徴をあげますと、
臭みを消し食材の旨味を引き立てる。
強い殺菌力で食材を保存できる。
そしてこれが肝心ですが、
萎えた食欲を増進させる。
みなさんはクーラーの使いすぎで体調がおかしくなった経験はありませんか。
おいらはしょっちゅうあります。
特に夜、暑くて寝苦しいってんでついエアコンをつけてしまいますと、翌日必ず身体がおかしくなります。これは『かくべき汗をかかなかった』からといってもいいでしょう。
汗をかくってのは、考えているよりもずっと大事なことなんですよ。
汗をかくと気持ちが悪いってのが現代人ですが、
汗をかく事の大事な意味のひとつに「体温を下げる」というのがあります。
早い話、スパイスは汗をかかせてくれる効果もあり、暑い気候の人達の「暑さしのぎ」の意味を持つって事です。
日本で香辛料が広まったのは大変遅く、大戦後。
古くから(古事記時代)から存在は知られていたようですが、広まる事はありませんでした。おそらく日本の気候風土、日本人の食指向にそれほど合わなかったからでしょう。
薬味や『かやく』として、ハーブ系もスパイシー系も特に分けられてません。
主たるものはワサビ、ショウガ、サンショウ、唐辛子など。
【香辛料】という言葉自体が、カレーやエスニック、イタリア料理などが広まるにつけ、ここ半世紀で広まったと言えるでしょう。
実は和食と香辛料は大変微妙な関係でして、「こんなもんは和食で使えねぇ」って板前も多い。
かと思えば、それこそ西洋料理なみに使う板前もいたりする。
これは非常に難しい問題でもありまして、簡単にどうこう言えません。
どこにかに線を引かなきゃいけないとも思います。
なしくずしに放置しては、大袈裟にいうと和食が消える可能性だってあるからですね。だからといって頑固に新しい可能性を拒否しても進歩がない。
時代の推移をもう少し見守っていこうと思います。