食通たち
数えきれない食べ物屋さん。
華やかなお客さん向けの店内の一歩裏に廻ってみますと、料理人達がふとこぼす言葉が聞こえるかも知れません。
「食通きどり」
明治という時代は、まだ階級社会の残滓が色濃く蔓延っていたからでしょうか、『食道楽』を極めた人物が多いですね。
『上流階級』というのがはっきりと存在してました。
名著、『味覚極楽 』 『美味求真』の世界。
一部ではありますが、
柳沢保恵
道重信教
溝口直亮
福原信三
伊井蓉峰
斎藤義政
山本直文
そして、食べるだけにとどまらなかった、
『美味求真』を書いた木下謙次郎
『味覚法楽』を書いた魚谷常吉
四谷丸梅女将 井上梅
そしてグルメの鬼人 北大路魯山人
魚谷と井上は少々異なりますが、この『食を極めた人達』っていうのは決まって名家、資産家の出ですね。
世に存在します『美味』を追求するには資本が必要って事。
名声を浴びながらも、庶民の観点から『質素』な料理を生涯忘れなかったのが、歴史に残る和食料理人「魚谷常吉」です。
金が際限なく浪費される『食通世界』を鋭く批判してまして、魚のアラや野菜の切りクズに美味が宿るって事を看破してました。
尊敬に値する偉人の一人でしょう。
グルメって言葉が我が国に定着して、もうどれくらいになるんでしょうか。
手当たり次第に評判の食を口に入れてみても、家庭に戻れば「かつお節」も「昆布」も無い【食通】
マスコミや名士達の方ばかりに顔を向け、庶民の料理には傲慢な態度の【料理人】
外見ばかりで中身が無いってのがグルメブームって事でしょうか?
滋味は遠のく一方の様な気がします。
魚谷常吉はどんな思いでこの状況を眺めているんでしょうねぇ。