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嫌われ板長

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板長、店長、調理長になったら

板前さん世界の階級って奴は少し分かりにくいかも知れません。

現役の板前でさえよく分かっていないという事実が背景にあります。

つまり本人達ですら自分が何であるのか理解出来ない曖昧な立場でもって働いているので、外部からだとまったく分からないのは当然なのです。

なぜか。

板前のタイトル

簡単に言えば、階級というモンを拵えるほど大きくて格式のある店が少ないから。一般の会社のように「平社員-主任-係長-課長-部長-」といった役職を定めるほどの組織力があるかって事になりましょうね。会社としての資本力、経営規模ですな。

店というのは個人経営。
少々大きくなったとてたいして変わりはしません。
株式を公開して企業に転身するというのは例外でしかない。

それよりも近年は「上から飲まれる」というケースが多いですよね。
個人が下から立ち上がるよりも、既存の大きな企業がタコの足のように様々な業界に手を伸ばして傘下にしていくというパターンです。飲食業も例外ではないわけで、むしろ企業傘下でなきゃ生き残るのが難しいという感じで推移してきました。

それでもって板前の業界は2つの別の世界に分かれてしまった。

1)職人の仕事が出来る昔ながらの板場で働く板
2)企業の従業員として利潤優先の歯車という立場の板

今の日本、1の環境で働ける板前はごく僅かなもので少数派。
大半の者は2の立場でしょう。まあ企業といえども色々あるので、ちゃんとした仕事をやらせるところもありましょうがね。

板前の階級やら立場ってのは、「経営側」から板前をどう見るか。どうみているのか。それ次第でしょうな。

はっきり言いますと「現場責任者」がいればそれでいいんです。
会社としてはね。

それは昔から変わりません。
旅籠の親父であろうと料亭の旦那であろうと同じ。昔は「親方」に任せていたし、今は料理長に責任を負わせているだけです。

この「親方」という存在。
これへの認識の変化が板前世界の変遷そのものでしょう。

記念すべきブログ1発目の魚山人デビュー記事から引用しますと

板前の定義
板前(本板、花板、立板、親方、料理長)
一店に一人

順位は上から
① 板前
② 次板(脇板、二番)
③ 煮方
④ 焼き方
⑤ 揚げ場
⑥ 洗い方(魚、肉の下処理)
⑦ 追い廻し(雑用全般)
になる

となっております。

これは「標準化」したものであり、会社の役職のような「決まり」ではありません。2番を花板としてる店もあれば、料理長が花板だったりとかね。

「立板」「向板」「脇板」「盛り方」「洗い方」こうした階級がある場合もある。つまり「追い回し」と「煮方」以外のタイトルは各店各様なのです。

なぜ曖昧さがあるのか。
それは「親方次第」だったからです。

昔の板場の親方と現在の料理長は大きく違います。そもそも今は「親方」という存在は消えました。現在「親方」というのは店の経営者を指します。昔は親方=料理長であり、板場の頭で全てを差配する立場だったのです。

「頭=親方」なので、部下の板さんは親方が店をあがると全員やめる。
つまりその板場で働く者は事実上親方の部下なのですよ。店ではなくね。

なので部下たちのポジション、つまり板前の階級を決めるのは親方だったのです。親方の考え方ひとつであり、だからポジションの呼称も色々なんです。

※こうした名称は「役」ではなく、職人になるまでの「階梯」だと考えるのが正しいと思います。煮方以上が職人であり、その上の「板前」が一人前だという訳です。一人前の板前を「鍋」と言ったりします。「もう一本立ちできる」という意味です。

ですけども、これはまあ昔の話です。
今はあれですな。
若い板前を育てる気持ちを持ってる店ほど階級を細かく定めている傾向があり、そうではないお店は「店長」というものを決めて板前のことはあまり気にしないという感じでしょう。

特に「調理長」というポジションを作らずに店長・次長と呼称させているところには要注意ですかね。そんなところはまず板前を使い捨ての駒くらいにしか考えておらんでしょうな。「煮方も追い回しもないよ。タイムカードはきちんと押してね。残業代は出さないけど」ってモン。

企業の規模によって違いますが、料理長は「課長」で二番が「係長」っていう感じでしょうかね。料理長を課長級か、それとも部長級にしてるかによって、その会社がこの部署をどう考えているか判断できます。 「本部社員」とやらが増加傾向の昨今は役職は下に降ろさず、現場は「それ以下」である場合が増えている様子ですけどね。「現場作業員扱い」ってところでしょう。

上司の仕事は嫌われること

さて、板前稼業に限ったことではありませんが、責任者が替わると業績が悪化するという現象がよくみられます。営業成績、つまり売上が下がってしまう。

板長なり料理長なり、今はまぁ店長でしょうかね。
せっかく店責になったのに売上が悪くなる。

その逆のパターンもありますが、これは少ないでしょう。
そんだけの力がある人間ってのはそんなに沢山いませんのでね。

普通は下がってしまいますな。
なぜかというと「把握するまである程度の時間がかかる」からです。

そしてここが肝心、
「たとえ店を把握しても部下を動かしきれない」

その理由は個々の性質によりますので一概には言えません。
だが、はっきりしてるのは「部下に好かれようとしてしまう」ケースの多さ。

これは駄目ですな。

部下の機嫌取りをする上司に従う者はおりません。

チームを結束させるものは甘さではなく厳しさなんです。
太鼓持ちみたいに機嫌取りをして一時的に人気を得たとしても、そんなもん長続きはしませんな。すぐに溶け始めてユルユルになるんです。結束も弱くなりバラバラになって行くでしょう。

人間って奴はね、「緊張感」がないと能力を発揮できないのです。
そのテンションを保つのが責任者の仕事なんですよ。

厳しくすると煙たがられます。
うるさいと疎ましがられるもんですよ。
だが職場にはそういう人間が必要なのです。

「それでは嫌われ者になる」
そうではありません。嫌われるのは「口だけ」だからです。
「口ほどに動けば」部下はついてきます。厳しくてもね。

せっかく板前の長になった。
それを不動にしてさらに先に進めるかどうか。
それが決まるのはね、
「この場所」を遊ばせてしまうか、それとも・・・

板長
板長

お疲れ様です。

親父、おやっさん、板長、等々。色々な呼び名がありますが、自分には、そう呼べる存在がいません。

自分がこの世界に足を入れた最初の店は、それこそ店長、次長、マネージャーと呼ばれる方々のいる店でした。

その中で育った自分は、所謂昔ながらの板前世界に憧れを持ちながら、日々の仕事に追われていました。

修行とか、そんなものではなく、仕事。
追い回しとか、そんなポジションではなく、とにかくなんでもやりました。
入社二ヶ月目には焼き物焼いて、五ヶ月目には刺身引いて…。

老舗料亭や寿司店に進んだ友人には羨ましがられましたが、自分の中では悶々とした日々を、忙しさに紛らわしていました。

そんな折に、実家の蕎麦屋から帰れコールがかかり、その店を上がり、実家へ。

なにも身に付いていない自分に気付くには、そう時間は掛かりませんでした。


そんなこんなで十七年、今に至ります。

紆余曲折を経て、今に至ります。

親方がいない自分ですが、今は、板前です。

この仕事に誇りを持ってます。

Posted by ジンタ at 2011年10月15日 01:58


ジンタさん。

>親方がいない自分ですが、今は、板前です。
>この仕事に誇りを持ってます。

それでいいんですよ。


おいらの親方がよく言ってました
「俺を親方だと思うんじゃねえ。甘ったれんな」
とんでもねぇクソジジイでしたが、
依存心を断ち独立心や向上心を失わせたくなかったのでしょう。
まぁ、墓参りだけは欠かさぬ様にしております。

Posted by 魚山人 at 2011年10月15日 07:09


お疲れ様です。

嫌われ板長のタイトルにひかれ、何回も読み返して、自問自答していました。

僕は好かれようと好かれようと後輩にしていました。

どんな人間関係でも嫌い合うってのは、最悪で、そういう人間関係を経験した事もあり、後輩に対して甘かったと思います。 それが最大の失敗でした。

少し怒ると口をきかなくなります。

なめてます完全に。

けど、これは僕の責任だと思います。

今回の記事でよーく分かりました。




話はそれますが、兵庫県に三木市という、刃物が有名な町があるんですが、ある刃物製作所にてモリブデン鋼の和牛刀を買いました。 ご厚意で一本、包丁を頂いたんですが、その包丁、魚山人さんも、鯔次郎さんも見たことない包丁だと思います。

なんせ、そこでしか作ってないんで(^_^;)

また色々、試してから投稿します。 ご期待ください。。。。。

Posted by カンパチ at 2011年10月15日 14:17


カンパチさん。

「嫌われる」といっても、人間には「個性」ってもんがあるんで難しい。
どう嫌われるか微妙な問題(笑)

まぁ、嫌われるというのは少しオーバーで、【「しめる」事ができる】で結構でしょう。
若いモンってのはね、ぬるま湯の環境では、まともな仕事ができる人間にはなりません。ケツを叩く先輩が必要なんですよ。

Posted by 魚山人 at 2011年10月16日 00:11


こんばんは

東京に来てからというものの、今までとは生活時間帯が若干変わってしまいましたが、良い勉強をさせてもらっていますよ。

正論っていうのは諸刃の剣ですよね。自分自身に問いかける分には角が立たないけれど、相手に突きつけてしまうと逃げ場がなくなる。

そうするとね。正論を言えば言うほど窮屈になるんです。そして、一緒に仕事をするのが楽しくなくなり、心が避けてしまう。その人のことを。

うちにも一人そんなバイトの女の子がいます。それで、同じバイトの子から避けられてしまう。

若いですねー、お互い。

10年前の自分を見ているようで嬉しくなってきます。

僕ですか?僕に対してもおんなじ風な感じですよ。20そこそこのバイトの子から、正論をきつい口調で言われる。でもね、良いんですよ。それで。

いずれ海外に出たら、文化は違う、風土は違う、言ってることが通じない人たちと一緒に仕事しなきゃならない。そんな人と仕事をすることに比べりゃ、こんな事は問題にもならない。むしろ、その問題を問題とさえ思わない。そんな彼ら彼女たちが、良い人生を送る少し成長の時間を過ごせるようにしてあげるだけです。

なぜなら、僕にはね、やらなきゃならないことがあるから。

いずれ東京を離れるでしょう。でもね、その前にみんなに伝えたいのは、箸一本からでもトップの人間の気の通った店にしなさいということだけです。

時代が変われば嗜好も変わります。

でも、テーブルに置いてある調味料セットにまで気が通っている店が作れたなら、お客さんに必要とされる店を作れるはずだと。

高いものでなくて良い、でも、気が通っているのかどうかは大事。

厚みのある、気が通っている男になってください、と伝えたい。ね、カンパチさん

Posted by ゆうじ at 2011年10月16日 02:23


おつかれです、ゆうじさん。

おっしゃる通りでね、確かに窮屈にもなるし、空気がモヤモヤしますな。
書き忘れましたが(あるいは言外には書いてますが)ね、

『正論を言うには【実力】が必要』
これは絶対です。

他人が驚くほどのスキルを持っているか
持ってなくても他人の3倍仕事をするか

これではじめて「嫌われる意味」が生じると言えましょう。

その20歳の女の子にそれがあるかどうかですな。
なければ先々切ない結果になるでしょう。



東京の風
楽しまれておるようですな。
流石に「富豆のゆうじ」。
なによりです。

Posted by 魚山人 at 2011年10月16日 04:41


どうも俺ゎ板前が縦に繋がりギスギスした緊張感のある店でゎ 飯食う気にも酒飲む気にもなれネェ。

お疲れ様です。


『爺の好きな店』のことを書いてる訳ジャネェから こんなコメゎ余計なんだろうが。

『親方=板長』
これゎ鮨の世界ジャ主流だゎな。

あくまでも爺の記事を読んだ上での感想なんすが 『雇われ板長』もしくゎ『店長』の人間性しだいだよね。その下に就いたヤツらから嫌われるかどうか?ゎさ。

板長
店長
ようするに長な訳。
んじゃ 現場で働く(仕事内容ゎ知ったこっちゃネェが)連中が どんな思いで働いてっか。ッツーことを把握出来てんのか? と言いたくなる。
それが解らぬ板(ジャネェ長だ)ゎ失格。
んで 従業員ばかりに目が行き『お客様』を見れネェ長ゎ最低。

銭をいただくッツー感覚が麻痺してる。
ついでに言うと銭払う側が馬鹿。

だから『ユッケ』が 御覧の通り(笑)

親方の性格やヤリカタを変えちまうクレェの気概のある男!
コメントしれ。ここに。

俺ゎ『信用』された。
親方にだ。
シャリに使う『酢』。
俺に任された。
15年という月日が生み出した信用だ。

あとひとつ。
魚山人に『従業員』と言われた『自信』もある。

あくまでも従業員だが
こんな糞メンドクセェ爺に
『雇われ』た。
そんな野郎からの発信だ!

ツカ本。
せっかく買って貰った本。
読む時間を下さい。

残業代ゎいらネェから!

先日ゎ糞ォヤジをほったらかしにして先に寝ちまった暴挙。許して

Posted by 鯔次郎 at 2011年10月17日 01:22


お疲れ様です。そしてはじめまして。

魚山人さんのサイトとブログ、いつも読ませていただいています。

勉強になることばかりで、いつも読み終えたあとで心の中で魚山人さんに「ありがとうございます」と言っております。

親方にこれからいろいろと勉強させてもらおうと思っていた矢先に他界されてしまい、急に店を半分任されるような形になってからまだ日も浅いですが、魚山人さんのブログを励みに頑張っております。

海外の小さな和食屋という事もあり、正直申しましてこちらのブログやサイトに出てくるような高い水準での仕事は必要とされないことが多いです。

それでも包丁の研ぎ方や磨き方、刺身の引き方、立ち位置や心構えなどなど、自分の職場で出来る限りのことは、魚山人さんのブログ、サイトを見ては試し、試しては見てで自分なりに活用させていただいております。

私にはこのブログの常連様方のように知識も経験もなく、コメントできるようなことはありませんが、いつも見させていただいているお礼と、そして今後ともよろしくお願い致しますの意味を込めて書き込みさせていただきました。

他界した親方にいつも見張られているという緊張感を保ち、魚山人さんのブログとサイトを参考にさせていただきながら日々精進いたします。

いつも本当にありがとうございます。

Posted by もじた at 2011年10月17日 03:48


もじたさん。
勘弁して下さい、オヤジを泣かすのは(笑)
おいらは鬼悪魔の様でもありますが、同時に泣き虫です(/_;)




【筋】

それを海外で守り続けて下さいm(__)m
日本からはもう殆ど消えました。



「気持ち」をありがとう。そして、「和」を頼みます。

Posted by 魚山人 at 2011年10月17日 14:28


魚山人様おつかれさまでございます。

訳ありまして、仮店長のような立場になりました。実力とゆうより、人手不足が根底にあります。
やることの多さ、とゆうより人とモノの管理の維持、従業員のモチベーションなど、僕には正直できません。長時間労働、人が集まらない、そして辞めていく、悪循環にもほどがあります。こんなとこ近いうちに辞めようと思っていますが、今は辞めるにも辞められない立場です。

なにか根本的に間違っているからなんでしょうが、社長自らうちはブラック企業だからと言い出す始末。なにがなんだかわかりませんが、自分のバカ正直さを逆手にとられてまだ働いております。
自分の体を壊さず、かつ職場を円滑に廻すにはどうしたらいいかなんてことも、不真面目ながらも考えている、ほんとにおバカな自分です。
答えを聞きたいですが、質問はしません。
ただ、最近更新がないので、少しだけさみしかったので、お便り出しました。
忙しいところすいません。m(_ _)m

Posted by まっつん at 2015年02月25日 00:28


お久しぶりですな、まっつんさん。

世界も、そして日本もね、「劣化」が加速しておりますよ。
だれもが目先の利益に汲々とし、刹那的に生きようとする。

他を押し退け、弱者を喰い物にする。事情を知らない者を騙すような姑息な商売に走る。それがスタンダードになりつつある。

当然ながら人心は荒廃して行くし、他者への思いやりも消える。

右を見ても左を見ても、そういう風潮が蔓延しています。
もちろん食いもんの業界も同じです。

まっつんさんの様な悩みもね、下手に慰めるより本当の事を言わせてもらいますと、「どこに行っても似たり寄ったり。どの店に移っても同じようなモン」ですわな、今は。


しかしね、「世の中が悪いからどうしようもない」とか、そういう気持ちを持ってはいけない。「何もかも社会が悪い」と考えるようになっちまったらそれで終わりです。

世の中は世の中、自分は自分。
強い意志で切り分けなきゃいけないし、甘えちゃいけない。

この腐りきった世の中にね、
ほんの僅かなスペースでもいいから、
【自分の思うようになる空間】を作んなきゃいけない。

自分の意志を曲げたくないなら、そう生きるしかありません。
それなら、正しいと信じている事を即座に仕事に反映させられる。

巨大な組織で歯車の一部になっていると、それは無理です。
だから大企業や役人関連組織などは歪んでしまうのですよ。

「周りがそうだから自分も合わせなきゃいけない」
それは確かにそうですが、どこまで合わせるかの問題になりますね。
自分の良心を圧殺し、周囲にどこまでも合わせて最後は自分自身からも腐った臭いがするようになるまで「同化」するか。

それとも・・・・


しかしまぁ、
この社会のどこかに自分の空間を創造するってのは、
口で言うほど簡単な事ではない。

簡単ではないけど、どうにか力技で成し遂げて欲しい。
頑張ってもらいたい。
まっつんさんを始め、今の若い衆に対して願っているのはその辺です。

Posted by 魚山人 at 2015年02月26日 09:56

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