チムグリサ
暑くなって来ましたなぁ。
気がつけば、もう盆。
祖母や父の墓前に立つと、何故か気弱な自分を見つけたりします。
少し前まではそんな事はなかった。
言葉にゃなりませんが、「向こう」と「こちら」の境界線
それがはっきりしておりましてね、「頑張らねぇと」そういう感じでした。
でも最近ね、「おいらもそろそろ・・・」
そこまで極端ではないですが(笑)
「浮世の未練」みたいなモンが薄くなっているのは確か。
あるいは、これが年をとったっていうことなんでしょうか。
政治的な話を書くと、加えてそれが国内の事ですと、そして文章が憤りに満ちていればいるほど、馬鹿になって行く気がするのは何故なんでしょうか。そしてバカと思われてしまうのは何故か。
脳から腐臭が漂い、白痴化が止め処も無い。そんな気分になってしまうのはどうしてなんでしょうかねぇ。ま、「力が足りない」っていう意味なんでしょうな。つまり頭が悪いってことです。そろそろ木偶の真似事はやめる頃合いなのかも知れません。
沖縄の板前仲間
かなり前のことですが、助仕事の最中に客として来ていた板前と友達になりました。沖縄県での出来事です。
年の頃がちょうど同じくらいでね、おいらは晒し場でお客さんの相手をしてたんですが、すぐに「ご同業」だと分かりました。あの頃の料理人の私服ってのは独特の雰囲気があって大体は分かるんですよ。料理人でない人からは「何の職業だかよく分からない」という格好なので我々には分かるんです(笑)
手伝っていた店ってのは、おいらを関東から呼び寄せるくらいですから、暇な店ではないし、沖縄の事情を考えれば街場の店でもない。
つまり「それなりの料金を貰う安くはない店」です。まぁ、普通のサラリーマンが度々食べに来るような処ではないってことです。
金持ちには見えない若い男が、カウンターに座っている。
それだけで見当がつくもんです。
「どちらの板さんですか」
笑顔でそう訊ねてみました。
一瞬困った顔。
返事をするまえに小さな声で「あいー」だか「えー」だったか(笑)
「****の***で琉球料理を作ってます」
「へぇ~凄いですね。一流店だ」
那覇の中心部である牧志や久茂地界隈ではなく、58号線の向こう側。波の上方面に広がる区域(松山、久米、辻辺り)に在る有名なお店。
そんな感じで世間話に。
和食にとても関心がある。だが内地に出たことがない。
もちろん自分の店でも和食は作るが、メインは琉球料理。なのでこういう日本料理を出す店に来て勉強をしている。そういう事を教えてくれました。
典型的なウチナー顔で、かなり濃い。
ま、イカツイってことです。シーサーみたいなツラ(笑)
おそらく普段は方言でばかり話しているんでしょう、おいらみたいなナイチャーとこんな感じで話すことはあまりないからか、話し方がかなり変。
「ボクが」と言ってみたり、「ワタシは」と言い出したり(笑)
無理して「ヤマトグチ」にしてるのが丸分かり。
それでも「目」を見りゃ人柄が分かる。
かなり「いい奴」だと判断しました。
つまり気に入ったというわけ。
一ヶ月も経たぬうちに、飲み歩く仲になりました。
年齢は向こうが少しだけ上だが飲めばタメ口。
殆ど同級生感覚。
泡盛が2~3本空になる頃には文句の言い合い。
おいらは冗談が好き。
なのでシーサーヅラをおちょくる。
「顔中マユだらけじゃねぇかオメェ」
でも人柄が良いのでなかなか怒らない。
なのでさらに際どいツッコミを連発。
たまらずシーサーは、
「エー」
「シナすんど」
「ヤナワラバー!」
さらに「フラー」とくれば、
おいらは、
「なにがふら~でぃ!」
「やかましい、このボンクラ鬼瓦」(笑)
数カ月後に沖縄から離れる時には、
絶品のアバサー汁やイラブー汁。賄いに最高のアンダンスーやハンチュミ。
そんな沖縄料理の作り方を覚えておりました。
もちろんシーサー君が教えてくれたからです。
おいらの方も八寸を少々。それにイラブチャーやミーバイを「日本料理らしく捌いて造りにする切り方」などを教えてやりました。
帰る日。
「たまたま仕事が休みだったから」
とかなんとか言って、空港まで送ってくれました。
そんな「たまたま」なんぞある訳がない。
優しい男です。
去年の大震災の時ね、シーサーから電話がきました。
「どうなってるのー」
「大丈夫ね?」
「ありがとう。おいらは大丈夫」
「でも福島の原発がちょいとね」
「しばらくこっちに来たらいいさー」
「いや、そうもいかないよ。やることが一杯だし」
そうして暫く放射能のことなどを説明しました。
おそらくフクイチ周辺の人達は故郷を失うだろうと。
最後に彼はこう言いました。
「ちむぐるさんど」
おいらは色々な事で頭の中が一杯だったので、その時はそのまま流してこの電話の件は「記憶」としてのみ残し、旧友からのありがたい連絡として片付けておりました。
被災地の方々への気遣い、心配、励まし。
そうしたワードで日本中が染まった一年。
しまいには「がんばろうニッポン」という呪文まで出る始末。
はっきり言ってね、災難の直撃くらった人達に言う言葉じゃない。
なにが「がんばろう」だって話ですよ。ふざけている。
心配や同情や「頑張れ」が通用すんのは生活の基盤がある人にだけ。
すべてを失った方々に対して言うべき言葉ではありません。
そう感じたのは、復興策が虚無的なものだと分かり始めたころ。
「言葉より動け」「策を明確に出して安心させろ」
行政府の動きをみると、そう感じざるをえなかった。
では、もし現地の方に声をかけるとすれば、どんな言葉がよいのか。
考えてみると、そんな日本語が見当たらない。
このとき突然思い出したんです。
彼が言った「ちむぐるさんど」という言の葉を。
チムグリサとは「肝苦さ」と書き、心配だという意味です。
しかしね、ただの「心配」とは次元が違う。
さらに政治家や有名人が言う「胸が痛い」とも重みが違う。
心配とか頑張れとか、胸が痛むという語に偽善の臭気がするのはね、「対等」ではないからです。簡単に言えば「上から目線」
どうしても相手を見下ろすニュアンスになるし、「安全な場所からのスピーチ」にしかならないのです。これってのは「相手」への配慮でなく、「自分」の位置確認なのですよ。
ところがチムグリサという言葉には上も下もない。
まったくの「対等」
つまり「自分の事としてとらえている」という意味なのです。
沖縄人が心底優しいと感じ入る非常に深い言葉。
これは沖縄を知らない人にはまず理解できんことです。
「それって”胸が痛い”と同じ意味じゃん」
そう感じるだけでしょう。
だが彼の地の人々の実際の暮らしに触れた事のある人には分かる。
裏の意味などはない、まったくの本音でそう言うのです。
文章にはあるていど書き手の「性質」が出ます。
ネット上のBlogであっても同じことでしょう。
おいらはかなり「厳しい」ことを書いております。
意識的にそうしてる場合もありますが、やはり気質でしょう。
まぁどこかしら「かったくるしい」ところがあるのかも知れません。
だから時々沖縄に行くのです。
沖縄の空気に触れてしまえば、たちまち正反対になれる。
ナンクルナイサの「テーゲー主義」です。
これを嫌う日本人は多い。
その理由はテーゲーを「いい加減」「ルーズ」だと解釈するから。
そうではない事を説明するには本一冊分の文章が必要。
今は次の例だけを示しておくだけにしときます。
日本はバリバリの合理主義で働き蜂のように仕事して経済大国になり、世界トップクラスの資産を築き、お金持ちになった。
しかし全国の病院や、リタイヤ組の末路をみるがいい。
「幸せ」を堪能している国民の「真の姿」を、つぶさにね。
経済大国の住民なのに、哀れさが漂うほど心に余裕のない人々。
一方で、頑なに独自文化を捨て去らない「沖縄国」はどうか。
ガツガツした仕事人間になる気などサラサラ無い。
だから日本最悪の「貧乏県」。失業率は倍。
しかし「貧乏臭い暗さ」など微塵もない。
その逆です。
幸せ度はおそらく倍。あるいは三倍。
福島のナオさんは、
そろそろ奥さんの故郷である沖縄に行っているのでしょうか。
きっと「幸せのお裾分け」をしてもらってから戻ると思います。
おいらも秋には行くとします。
「チムグリサ」と言ってくれた、優しい男に会いに。
ん-
お疲れ様です爺。
【今】だから?
沖縄
コメに困るゎ…
俺な
沖縄シラネ…
昭和の時代
沖縄の鳶職サンが近所に多数いた…
ふ-ん
勉強になりました!
Posted by 鯔次郎 at 2012年07月16日 20:53
鯔ちゃん、ありがとう。
正直、コメを付けたくない記事だろうね。
そいつはよく分かっているよ。
だが、アンタはどうやら「仕事」を怠けるのが嫌いなタチ。
つまりおいらが以前に言った「従業員だから」という言葉を忘れてない。
律儀な男だ。だから礼を言う。
沖縄を手放しで誉める気はない。
「沖縄ブーム」とやらに乗る気持ちもサラサラ無い。
向こうの人間になる気もないし、絶対になれはしない。
沖縄を「初体験」する本土人の反応にはパターンがある。
1・「おおらかさ」と「人情の濃さ」に驚き、気に入ってしまう
2・ルーズさや、約束を守れぬいい加減さに辟易して嫌いになる
では、どちらの反応が正しいのか。
どちらも正しいのだよ。
何故ならヨソモノが沖縄に入りこめば、必ず1・と2・を両方経験するからだ。
沖縄の「おおらかさ」は度を越している。
あそこで生まれて育った人間にしか、あの感覚は身につかない。
日本の他の地域とは完全に別の世界なのですよ。
だから本土の人間が向こうに行けばひどいカルチャーショックを受ける。それはつまり、「シマ生まれ育ち組」も本土に出れば強烈な違和感を持つという事なのだ。日本のせわしなさ、人間のつながりの希薄さ、情の薄さ、細かすぎる規則、がんじがらめの仕事中心生活に馴染めない者が大勢出てしまう。
彼等はね、「横のつながり」がないと生きるのが難しいのだ。
子供の頃からそういう社会で育っているのだから。
(内地で生まれた沖縄2世は本土人と同じで、感覚も我々と同じ)
「完全なる文化の違い」
それが「すれ違い」を招くのは当然なのだよ。
互いに「相手の土地に溶け込めない」という結果になる。
多くの日本人の感覚ではこうなる。
「文化の違いはあるだろう。だが、ルールは守れ」
もっともな意見であり、多分鯔ちゃんもこれに与する。
しかし違うんだね。
何が違うのか、それを説明するのが非常に難しいんだ。
向こうに住んでみないと分かりようがない。
だがヘタに移住はしない方がよい。
特に几帳面な性格の人はやめたほうがよい。
精神を病んで入院するハメになるからだ。
おおらかで優しく情がある。それは間違いない。
しかし良い面ばかりではない。
公務員になりたがる学生はここより多く、官尊民卑の傾向が非常に強く、意外にとても保守的な面がある。背景には封建的な「家制度」が広がっている。そして仕事面では必ず苦労させられるハメになる。大事な仕事をしてる最中でも「逃亡する」からね。
でもね、おいらが思うに沖縄に「日本のルール」をあてはめるのは無理。
別の国であり、違う世界だと考えたほうがよいと思う。
【沖縄には沖縄のルールがある】ってことだ。
日本から独立して、法体系や憲法まで変えてしまうのがベストだろうね。
異常な健康ブームに禁煙世界。
日本は今明らかに窮屈でガチガチに縛られる【全体主義】へと向かっている。
「メタボにならぬように」と心配して下さる、ありがたい厚労省。
気持ちが悪すぎるね。
そのうち子供の「しつけ」まで国が規制を始めるだろう。
他人との違いを許さぬ社会へと加速しているのだね。
ようするに「個性」が消えていくってことだ。
役人さん達は完全に牧場の「ひつじ」を見る目線だね。
国民は本物の「家畜」に成り果てるに違いない。
その対極にいるのが「沖縄文化」
この意味は重要だし、気づき始めてる人々も多い。
沖縄は「絶対に」日本と完全同化していけない。
たとえ日本から独立してでも今の「テーゲー主義」を守るべきなのだ。
Posted by 魚山人 at 2012年07月17日 00:45
こんにちは皆さん・・
沖縄は来月に行って来ますので、帰ったらご報告申し上げます。
魚山人様は何年位沖縄に滞在されたのですか??
あまりにも詳しく、かつ的確に捉えてますね・・その洞察力にはびっくりです。
その辺りが職人としての資質なのかもしれませんね・・
でも、このコメじゃ普通の人は半分くらいしか理解できないんじゃありませんか??
ヤナワラバーなんて分かる方少ないでしょう?さしもの鯔さんも突っ込みどころがないような・・
そこはともかく、去る30数年前家内を貰い受けるべく気合を入れて沖縄に初上陸した事を思い出しました。数日間滞在しましたが、カルチャーショックを受けて戻ってまいりました。
あ~仕事サボって書き込んでたのですが客人が・・すみません続きは後日。
Posted by ナオ at 2012年07月17日 15:53
こんにちは、ナオさん。
出張みたいなもんでしたから、せいぜい数カ月の滞在ですよ。当時は景気も悪くなかったので、雨後の筍みたいにリゾートが出来、我々も度々指導に訪れたという具合です。しかし80年代から毎年欠かさず訪問しており、向こうに知り合いが多いのです。
本文で書いているのは当時を背景にした意見でしてね、今は微妙ですな。
かなりな程度日本に同化してしまったと感じています。
沖縄独自のテーゲー主義やユイマルールなどの「文化」が日本一の低所得と失業率を「救っていた」と思うんです。が、日本と似てきたことで「文化」が年々薄くなっている。地元のメディアも県政も「悪い県民性を捨ててもっと本土に学べ」という論調で「日本化」を煽る。
その日本が傾いたらどうなるかって話です。
同化政策を受け入れる(あるいは安全保障名目の基地負担)代償として政府から「ご褒美」をもらっていた。「公共工事」などの形でね。
それが甘えとなり、他の産業が育つのを邪魔してしまった。
で日本経済は底なしの泥沼スパイラルに突入。
国はもう「大盤振る舞い」ができる状況ではない。
沖縄がそのあおりをモロに受けるのは目に見えております。
だが「日本化」しすぎてしまい、もう「独自文化」も助けにならない。横のつながりが希薄になり、まるで高度成長期の「家庭崩壊」にも似た「冷たい社会」になりつつある。
その直撃をくらうのは、「のんびり」でも「貧乏」でもなんとなくテキトーに働いたり働かなかったりして生きてこられた沖縄の男達。
もはや「ユクって」いる場合でない。
だが、女性と違い、気迫や根性が出ない。
それが数字になって出てるようです。
急激な自殺率の増加(男性)、などですな。
理由は「経済的な事情」が断トツ。
日本と同じですなこれじゃ。
なんでもかんでも【経済効率】
金がすべてってわけです。
ただでさえ貧しい県。
なので「日本病」に感染してしまえば悲惨な結果を招くは必然。
役人たちにはそれが分からんのでしょうかなぁ。
画一化してしまう危険性を。
文化を破壊するのはバカな施策だって事を。
希望はひとつだけ。
沖縄の「女」です。
太陽みたいに明るく、世界でもトップクラスと断言できる働き者。
その正反対であり、いわば「ヒモ的性質」を持つ沖縄男どもに差別されながらも、絶対にくじけぬ素晴らしい根性を持つ沖縄女性。
沖縄男は、彼女たちの得難さを認識し、今まで彼女たちを苦しめて平然としていた過去を猛烈に反省し、このような「宝物」を守るためにも、真剣に気合を入れて仕事に励む他はないでしょうね。
沖縄女性を妻にしたナオさんは「幸せ者」というべきでしょう(^_^
Posted by 魚山人 at 2012年07月17日 18:50
しっかし…
まいったm(__)m
「従業員」としての義務ゎ確かに果たしたが
なんであんな粗末なコメで
俺の考え方まで見抜けんだか…
おっしゃる通りだ。
職場に沖縄女います!
母親みたいな歳の方。
神経質で優しい方だ。
爺の言いたい感覚。
理解出来るつもりでいますよ。俺。
ギスギスでダラダラが表裏一体の日本にゎ あそこのバランスから学ぶべき。
程度の低い法律なんざ逆に治安を悪くする。
お疲れ様です爺。
さすが親方だよ。
ナオサン!忙しそうでなによりm(__)m。
Posted by 鯔次郎 at 2012年07月17日 22:06
私も同年代の奥様が、その娘さんを、遠い嫁ぎ先で亡くされた事が在り、pc上でのコメントにとても困った事が在ります。
「心からご同情申し上げ、お心落としの過ぎない様にお願い申し上げます。」
と申し上げた記憶があるますが、不運とは出来るだけ遠ざかりたいですね。
Posted by sin at 2012年07月19日 04:46
sinさん、こんにちは。
言の葉って奴はとても難しいものですね。
すぐに、「言の端」や「言の刃」になってしまいます。
おいらもね、このBlogのコメント欄で何度もソレをやっております。
Posted by 魚山人 at 2012年07月19日 06:19
はじめまして。
マグロの切り方と美味しい食べ方を検索していて
こちらへ辿り着いた海外在住の者です。
チムグリサという文字を目にして読み進むうちに(この人、沖縄の人だ)と感じましたが、勘違いでした。でも、魚山人さんは沖縄出身の私より沖縄を理解している方だなと思いました。
HP、素人にもわかりやすく、とても参考になります。
また、寄らせて頂きます。
有難うございました。
Posted by やーるー at 2012年09月28日 17:49
こんにちは、やーるーさん。
沖縄はいいところです。
色々とありますが、それでもやはり良いところですよ。
海外におられるそうで。
大変なことも多いと存じます。
しかし、「住めば都」の心意気です。
ウチナンチューの意地で頑張ってください。
Posted by 魚山人 at 2012年09月29日 05:01