食べ物屋のプラスα
独立して自分の店を持ちたい。
飲食店を采配することで己の力を試してみたい。
リアル(店の主人として)でも、WEB上(板前サイトのオーナーとして)も、一番耳にする話がこれになります。
二つのまったく異なる世界ですが、同じ内容の相談を受ける。
当初はまったく予想していなかった事です。
インターネットは煩雑な日常生活における『情報取得補助具』として大変優れており、それを認めざるを得ないからイイ歳をしてPCを覚えました。
しかし「便利過ぎる」代償として、「ものごとの本質」や「真の知識」は得ることが出来ない。つまりバーチャルであって実生活とは遠いってことです。
また遠くなければいけません。
「真に学ぶべきものは現実世界にて取得するのが正しい」
それはブログに手をつける前からの持論です。
したがって過度の「教えたい誘惑」を押さえ込み、自分のサイトから注意深く排除し、全般的に「入り口・きっかけ」に押し止める構成にしているつもりです。
でもWebで得た情報をもとにして現実へフィードバックさせればいいのでは?
そういう考え方は承知しておりますが、おいらは賛同しない。
だからこそ「持論」なのです。
いかなるヒントを得ても、それを生かす「努力」は結局本人次第。
過剰な情報というのは努力への道を閉ざす。
アイテムはアイテムに過ぎず、自分の肉体と混同してはならない。
まぁ、そういった意味ですかね。
話を戻しましょう。
組織である会社に勤める煩わしさは、想像を絶するほどでしょうな。
給料をもらうのは半端じゃなく大変だってことです。
小さくても店を持ち、『一国一城の主』になりたい。
胃が痛くなる人間関係から開放されるし、自己を確立できる。
そんなに儲からなくても食べていければそれでいい。
『脱サラ』って言葉がいつ頃から使われだしたのかは知りません。
けども、もう随分長い間この手の話を見聞せぬ事はありません。
食べ物商売と言っても、アルバイトが客に商品を提供したり、素人でもFCに入れば数ヶ月の「修行」で独立可能。
その程度のもの。
だから店を構えてもなんとかやって行けるだろう。
あまりにも甘い考え方としか言い様がないですな。
長年プロとして調理業務を続けて来た料理人さえも、独立後に店を潰さずやっていける者は半数以下なのです。
確かに店を開く事自体は難しくはない。
問題は3年後、5年後、10年後も、その店が存続してるかどうか。
その確率は現状をみると悲惨なものなんですよ。
何故そうなるのか。
見通しが甘く、事業計画が穴だらけだったから?
それもありますが、原因は別にあります。
『店の運営や料理とは関係ないもの。だが客が来る何か』
それが無いからなのです。
それが無いと10年の道のりを越えられません。
「それ」とはいったい何でしょうか?
店主の個性?
おもてなしの細やかさ?
店の立地条件が好転?
料理が向上し美味さが浸透した?
それとも「運」?
実はね、わかりません。
はっきりとは言えないのです。
上記の例は運も含めて商売の基本事項であり、個人料理店の長期運営に不可欠のものなので全部必要。
確かなのはこれら以外の『プラスα』が要るって事です。
個人飲食店経営のプラスアルファ
相場は波を打つごとく変化します。
上げの波に乗っかった途端に下げて谷底に向かう、下げの波に乗れば急に上昇する。
要するに人の思惑とは反対のカーブを描くものです。
それは相場というものが、「人間の思惑」で動くものだからです。
理論的に考えて、相場で利益を得れる者は八割方いない。
演繹してみれば、商売の秘訣。つまりプラスαですが、
それは「思惑ではないもの」じゃないでしょうか。
漠然とはしてますけども、「波に乗らないこと」だと思います。
つまり波に呑まれて消えぬこと。
人はいかなる目的で「外食」をするのか?
どんな時に、どんな料理を食べたくなるのか?
大きなドジョウを狙って団体さんや接待族ばかりを相手の商売を続けておりますと、この想像力が枯渇してやがてゼロになって行きます。
腕におぼえのプロ料理人が独立して失敗する原因の元です。
素の個人が「行って食べたいお店」だと思わぬような店ならね、いったいぜんたい何の為に店を作ったというのか。
それを忘れてしまう。
大きな厨房で多人数の料理ばかりを作っていた日々がそういう感覚を麻痺させるのですよ。
料理人でも素人さんでも失敗する最大の原因は『中途半端』
儲けたいのか、自分の料理に特化したいのか。
そのどちらでもないからすぐにコケてしまう。
儲けたいのならばそれはそれでよい。
それならばヘタに料理を覚えないことです。
料理に関しては素人のままの方がよい。
中途半端に料理に拘ったら、儲ける店など作れません。
ソロバンの世界で、料理は数字だと割り切ることが成功を呼ぶ。
料理で客を呼べる店にしたい。
ならばお客の期待を裏切り続ければよい。
客が期待するのは「あの店のいつもの味」です。
それは安心感などとは違うのですよ。
「型」にはまったという事です。
お客に捕まってしまってはいけません。
常に未知数でなければ料理で客を呼べないのです。
客に安心感などを与えてはいけない。
変幻自在なのが料理なんです。
お客が戸惑うくらいで丁度よい。
この両者の中間あたりを右往左往してるのならば、個人店を末永く維持していくのはとても難しいと思います。
時代は常に変化します。
時として停滞もするがやがて急変するものです。
そんなモンに合わせようとしても無駄なんですよ。
何故か「波に乗り遅れてはいけない」という信仰が根強い国ですけどもね、そんなもんは大きな間違いです。我々はサーファーではない。
引き寄せればいいんですよ。
自分の力でね。
それが「生きてる」って事ではないでしょうか。
こんにちは、魚山人さん。
今回の記事には考えさせられました。私も15年位個人営業をしております。その間に理解したことは、まさしく魚山人さんの仰るとうりだと思います。
勿論、料理大前提ですが、基本は接客、店のイメージ(主人を含む)等々、まぁ全てですね。期待を裏切る、いい言葉です。しかし基本を外さず。難しいです、楽しいです。私は魚山人さんの様なプロフェッショナルでは、ありません。それを補う為に、妻、その友人などに流行っている物ではなく、なにを今食べたいか?等をよく聞きます。自分が売りたいもの、もちろんあります。しかし、売れるもの、これは別物です。いつも基本を有難う御座います。少し真面目になってしまいました(^^;。
Posted by 藤井茂男 at 2010年06月30日 18:52
はじめまして、魚山人様。
数年前にお料理の事で調べ物をしていて、偶然貴サイトにたどり着き、以降なにかと参考にさせていただいております。
私は大阪の某所でオーナーバーテンダーとしてバーを経営し、この八月で10年を迎えます39歳です。 その道で長らく修行をつんだワケでもなく、いわゆる脱サラですね。それなりの準備をして独立を果たしたつもりでしたが、それでも幾多の紆余曲折がありました。
開業のために借金もしましたし、その間に二人の子宝にも恵まれ、今では小学校と幼稚園に通っております。ほとんど休む間もなく働いてきた10年でした。
また、たくさんの人と出会い、スタッフやお客様にも恵まれ、仲間も増えました。そして今思うことは、これでいいのだろうか?です。 私はギャンブルもしませんし、浪費もしません。家族とスタッフの生活を支えるので精一杯で、自分の趣味に使う時間もお金もありません。 借金は完済しましたが、僅かな貯金すらままならない状況です。いわゆる景気のいい時期や儲かった時期というのが10年続けてもないのです。
ある尊敬する社長様にあるとき言われた言葉があります。『お前はかなり変わっとるな。お前は今しんどいやろ?でもな、いいからお前はそのまま行け。』・・・いまだに真意はわかりませんが、その方も昨年ご病気で亡くなられました。・・・
私の財産は人であるのは紛れもない事実です。しかしながら、商売である以上もうちょっと儲けたい。もうちょっと楽がしたい。家族やスタッフに良い思いもさせてやりたいという自分もいます。なんとかなるさ。とがんばるのですが、思うようにいきません。 かといって銭ゲバに走る気にはどうしてもなれないのです。いったい私は解決策を見つけられないまま次の10年を歩むのでしょうか?
立場上弱音をはくわけにもいかず、相談する相手もみつかりません。大変失礼とは存じますが、この場を借りて、愚痴ってしまった次第です。
とりとめもない文章になってしまいましたが、魚山人様にはお体お気をつけくださいませ。今後も、楽しみに拝読させていただきます。 いきなりのコメント失礼いたしました。 敬具
Posted by バーマン at 2010年06月30日 21:27
こんばんは、藤井さん。
本当に裏切ったらお客はゼロになりますけどね(笑)
まぁその辺をこのブログの読者さんなら勘違いはしないと思いまして。
【緊張感のある微妙な綱引き】
客と店の主人はそれによって結ばれるとおいらは考えています。
この「糸」を切ってしまった時から、お店は傾いていくのでしょう。
Posted by 魚山人 at 2010年06月30日 22:20
こんばんは、バーマンさん。
開店20年を目指す事ができる。
それが答だと思いますよ。
やってきた事が間違いではなかったって意味になりましょう。
そっけない言い方で失礼だとは存じますが、「銭ゲバに走る気」がなければ、今までの方針を貫かれてはどうでしょうか。
10年もたずに挫折していく人々に比べれば、家族を養いなんとか生活していける状況というのは由とすべきだという考え方もできます。
世に「たなボタ」など存在しません。
(例外的な《宝くじ1等当選人間の類》を混同するのは無意味)
他人よりも『ゼニゲバ』にならねば、お金は儲からないと思いますよ。
「儲かるシステム作り」はそう容易いものではありません。
少なくとも「本気」で取り組まねば無理でしょうね。
しかしね、忘れてはいけない法則があります。
「忘れていると寄って来るが、追えば逃げていく」
それがお金というものの本質であり、世の法則です。
コメントありがとうございました。
頑張ってくださいね。
Posted by 魚山人 at 2010年06月30日 22:21
「教えたい誘惑」
を殺してる爺blog。
それなのに
スッゲーことを教えてくれんのもまた 爺blog。
レシピなんてもんゎ 料理を愛情で こさえる人にゎ邪魔極まりないもんだもんね
俺さ 給料袋ゎ開けずに まんまカミサンに渡すんだけど
どうやら四苦八苦みたいよ我が家の家計ゎ…
貯金なんて 有り得ネェらしいし(泣)
幼稚園をバッチが卒園すんのを待って 長男を塾にやっと行かせることができた。
銭がかかることかかること(┰_┰)
独立なんて夢のまた夢。
あ゛こりゃ愚痴だな…
ッカシね
俺らみたいな連中ゎ
こういう記事に救われますよ。本当に。
いつかChanceが来ることを信じて 日々を送る。
自ら攻め入ることゎ力不足でも 何かを信じやってくしかネェし…
爺の言う「プラスα」ってヤツゎ読者様方が 行きつけにしてる店に あります。
我が店にも爺んとこにも
あるんだろうね
お疲れ様っした!
爺の記事読んで栄養補給しましたよ!
ただね-
納得いかネェのが「株価」
最近ゎネット取引が頻繁と聞くが 「株価」ゎバーチャルでゎ困るでしょよ。企業をキチント判別できて なりの投資をすんのが株!
俺のコメゎバーチャルでも構わネェが 経済界がバーチャルでゎネェ…
こんな時代を経験できるなんて ある意味ラッキーなのかもな俺ゎ
Posted by 鯔次郎† at 2010年07月01日 01:57
おつかれま、鯔さん。
株価ね。
為替取引も新たに加わったが、株取引ってのはもう「実体経済」とは何も関係が無いんですよ。
予測の為の予測になっていて、株の発行元である企業を研究したりするのは時代遅れで意味が無いという状態。
金利が上がれば株価が下り、という常識すら通じない。
逆に低金利にしてれば設備投資が増えGDPが増えるって常識も通じなくなったし、ケインズ経済学の「不況には財政支出増大」も空振り。
株価が上れば円安になり、輸出企業の株価を連鎖的に押し上げるという事態さえも今は微妙だ。すぐに外資がなだれ込み、円は上昇するに決まってる。
最近話題なのが「1秒以下」の時間で株取引するシステム。
そんなもんはもう実業とは完全に無関係としか言えませんな。
はっきりしてるのはね、「もう経済学は通用しない」ってこと。
減税しても駄目だし、増税でも駄目。
政府の消費税10%は馬鹿げたお題目だ。
実施されれば日本は自殺者が確実に増えます。
「欧州は日本よりずっと高い消費税だ」
そう役人側は言いますが、肝心な部分を説明してない。
イギリスなどは今度20%にもなるがね、食品に関してはゼロです。
他国も色々な免除で弱者をカバーしている。
そもそも社会保障そのものが日本のように幼稚ではない。
所得制限のない「子供手当て」もバカだが、
消費税は完全な貧困者狙い撃ちでしょうな。結果的に。
そもそもねぇ、
「無駄使い撲滅」はどうなっているのか。
天下り役人の跋扈は放置したまま「増税」が通りますかっての。
自民党と同じゃねえか、ふざけんなっ。
日本の債務残高は対GDPの約200%。これは危機といわれる欧州のほぼ倍。今すぐ破綻してもおかしくない数字。
経済成長は見込めないし、人口は減るで、救いようがない。
少しばかり増税したところでまったく無駄です。
不況から抜ける方法。
それは「計画的インフレ」しかないでしょうね。
このままデフレと円高が続けば日本は窒息します。
もちろん大幅な構造改革が不可欠。
そもそも参議院など必要はない。無駄遣いの典型。
なくしても困る国民はいない。
そういう思い切った手を打って行かねば日本は将来主権を失う可能性すらあります。
チャンスは必ず来ます。
ただし見逃さない「目」を維持していれば、ですが。
頑張るしかないよ、鯔さん。
Posted by 魚山人 at 2010年07月01日 06:20
魚山人様。 早々の御返答ありがとうございます。 やはりそうでしょうね。私はうまれてこの方 儲け や ラッキー とはほど遠い人生を歩んでいるように思います(笑)
地道にコツコツ あせらずゆっくり 結果がでるには時間がかかる。 そう信じてやって参りました。今ここにいることが結果なのでしょうね。
よくよく考えてみれば、周りの同年代は私の事を羨ましく思うようです。(内情はたいへんですが 笑)
わたしは元々証券マンでした。お客が喜ぶのは儲かったときだけ。下がれば文句。飛び込み営業で名刺を破られたり、水をかけられたりもしました。あがったの下がったので一喜一憂、実際にはほとんど見ることすらない株券の売買は通帳の数字が動くだけ。まったく餓鬼、魑魅魍魎の世界です。こんなものは人間じゃない。 せめて心から人が喜ぶモノを売りたい。そう願って飛び込んだのがこの飲食業という世界で、煌くカクテルであり、お料理だったのです。実際に初めて自分がつくったお酒やお料理を口にした瞬間のお客様がよろこぶ顔はいまでも忘れられません。
厨房でガッツポーズをしたのを今でも覚えていますよ。(笑)
初志貫徹。実際には柔軟に変わっていかなければなりませんが、はじめの頃を思い出し、次の10年をがんばりたいと思います。
長々と私事を書き連ね、申し訳ありません。魚山人様と皆様の今後のご健勝を祈っております。
Posted by バーマン at 2010年07月01日 21:08
バーマンさん。
元専門家とは知らず、お金に関しヨタの説教。
恥ずかしく思います(笑)
旨いカクテル。お客さんの喜ぶ顔。
きっと20年目には、それが「何かの形」を取りましょう。
お互いに頑張っていきましょう。
Posted by 魚山人 at 2010年07月01日 22:45