裏付のある自信
自信に満ちて輝いてる人を「仕事のできる人」と言います。
そういう人間は【自信と知恵】の均衡がとれた人です。
つまり「負けん気」と「知識(経験に裏打ちされた)」を同時に持っているって事ですね。自信だけが旺盛な人間は「自信過剰」だの「空威張り」だの、果ては「馬鹿」扱いされるのがオチ。
また、どんだけ知恵があろうと負けん気を持ってなければ仕事に生かす事ができません。自分から前に出ようって気持ちが無ければ、前進など出来ないのが現実の社会ってもんです。
何を根拠に(自)らを(信)じられるのかと、そういう話ですよ。
おいらの先輩にスター級の板前がいます。
これがもう半端じゃないんですよ。
テレビなんかにも積極的に出る人なんで、細かい事を書けないのが残念ですが、もう普通じゃないくらい仕事ができるんです。
職人として神業的な技量があるってんじゃないんですよ。
ただね、その人がテコを入れた店は、すぐに売り上げが倍増するんです。
もちろん板前としての腕前は当然「まっとう」なもんですから、「ネームバリュー」なんていう「虚名」で売り上げを上げるんじゃなく、あくまで腰のすわった実質的な売り上げ増を達成させちまう、とんでもない人間です。
華があるんですよ。
オーラと言いますか、発してる精気が桁違いなんです。
従業員がだらけきってしまった店にその人が乗り込むと、あっという間に店員達の背筋がピンと伸びちゃう。まるで違う店に来た感じですよ。
そんな人材が欲しくてたまらない外食大手は、どんな高待遇でも引っ張ってこようってもんですから、引く手あまたそのもの。
普通こういう種類の人間がね、なぁなぁになった店に行っても、ほとんど結果を出せないもんなんです。自信満々でも、仕事が出来ても、怖い人であっても同じです。陰で「いやな奴」だと叩かれ、社内に不協和音が響くことになりますね。
では何でこの先輩が行くと、皆を束ねて結果を出せるのか。
簡単なんですよ。桁外れに仕事をするからです。
その会社で一番働く人間の三倍くらい仕事をする。
帰宅は一番後、朝は誰が来ても、もう出勤してるって具合。
いつ寝てるんだか分からない。
そしてもう一つ、
自信満々な人ではあるんですが、「威張らない」んですよ。
つまり【イヤミ】が無いんです。
いくら働いても、感じの好い人間でも「仕事センス」がければ、結局は周囲の評価は本物になりませんけども、先輩のセンスは桁違いときてます。
これではみんなついていくしかないですわ。
古い考えに拘らない先輩のシャープなアイデアは、たちまち従業員達が一丸になって実行にうつしてくれるってわけです。1千万の店を2千万にしてしまう秘密はそこです。
言葉にすれば簡単ですが、こんな人間などめったにいません。
仕事をしてる方なら、上に書いた仕事現場の難しさをよくご存知でもあるでしょう。一筋縄でいくようなもんじゃありませんよ、組織の仕事は。
だからこそ「スター級」だと書いたんです。カリスマですな。
他人に評価されるのが本物の「自信」
話がここで終われば漫画や小説なみってことですが、現実ですからこれで終わりません。
この人にゃ悪い面があるんですよ。あるていど目標を達成した時期に、その悪いクセが出ちまうんです。それでインターバルっていゃ聞こえはいいが、浪人というか隠遁生活になっちまうんです。
それでも実績は残してるんで、仕事が無くなるわけじゃありませんけどね。
具体的にどうこう書けませんが、要するに一箇所に定着できないタイプです。
人間は良い面ばかりで出来上がってるんじゃないって好例でもある。
こんな事を言ってはいけないのは承知してますが、先輩は多分早死にしてしまうでしょう。
身体をまったく労わらない人だからです。
生まれつきの「太く短く」人間ですな。
世間の評価が真っ二つに分かれてしまうんですな。
「凄い人」と「でたらめな人」
結果を残せなかった人は後者で十分です。
しかしおいらを含め、仕事を教わった人達は口を揃えます。
「仕事するならあの人と働きたい」
「もう一度あの人と仕事をしたい」
こんな人間が沢山いるって事実が、あの人の人生です。
仕事に対する自信ってのは、本人の口ではなく、風が語るもの
だって事になりますかね。