ハシの持ち方
いつの頃からか分かりませんが、日本の若者達の間で、機能的でない仕草が「カワイイ」なんて風潮が誕生してますね。
事の起こりは何なのかちょいと不明ですが、わざと「ボケ」た方が「ウケ」が良いって事で、漫画や芸能の世界からの影響でもあるんですか。この20年くらいですっかり定着した感がありますわ。
それはいいんですがね、我が子がまともな箸の持ち方を出来ない不器用さを「カワイイ」などと人前で言うお母さんがいますが、こりぁ一体なんなんでしょうかねぇ。先の「ボケ・カワイイ」世代が親になっている、そういう事なんすかね。
箸の正しい持ち方
忌み箸
突き箸・刺し箸、握り箸 から始まり、
揃え箸 、違い箸、 拝み箸、 すかし箸 、せせり箸、 刺し箸、 持ち箸、 受け箸、空箸、込み箸、 直箸、移り箸、 渡し箸、噛み箸、 掻き箸、 咥え箸、 横箸 、もぎ箸、 探り箸、 寄せ箸、 叩き箸、 重ね箸、迷い箸、受け箸、指し箸、
揚げ句は仏箸と来たもんです。
こんな持ち方はもう日常、普通の光景になってますがね。「嫌い箸」 「忌み箸」つて云いまして、おばあちゃん世代の日本人にゃ許されない持ち方だったんです。
特に多いのが、握り箸とペン箸。箸の機能が全く使えない、機能美の逆を行く動作です。
箸の正しい持ち方は簡単
一方を固定し、もう一方を作用させるだけです
仕事の世界に入れば(大人になって社会に出れば)、其処では全て機能的な動きが求められるはずです。結局、矯正に苦労するハメになるのは子供ですね。まずは正しい箸の持ち方を教えるべきだと思います。
常識的行為が出来ないのは決して「カワイイ」とは言えず、本当の美しさは機能的な動作の中にあります。
和食の作法(箸のさばき)
箸の持ち方
箸と和食
和食の盛り付け・基本は箸使い
真菜箸でつかめぬ人生や【身】を持ち崩すのみ
料理用の鉄の盛り箸、あれを真菜箸(マナバシ)と言います。
「盛りばし」で通っちゃってるんで、この呼び方を知らねぇ板前が結構いたりします。
マナってのは「真のおかず」という意味です。
真のおかずってのは魚のこってす。
魚は「酒菜」と書き、「酒のつまみ」で「おかず」
その一番上等が「魚」でして、だから真の菜、マナです。
つまり真菜ってのは魚で、真菜箸は魚専用の箸なんですね。
ちなみに魚以外のおかず(野菜等植物性)を、粗末な物ってことで「蔬菜」(そさい)と言います。
俎板(マナイタ)って言葉もそこから来てます。
奈良、平安時代からの食事形式「本膳料理」では、まな板は真菜を盛る器だったんですよ。
魚を乗っけて客の前でさばく食器だったんですね。
今じゃ料理専用ですが。現代ではテーブルサービスに名残りを見ることが出来ます。
真菜箸も高級品がありまして、チタン製黒檀柄で、口金は銀や金なんて真菜箸があったり、
まな板も、国産だと、木曽桧で安価な物でも50万ほど、希少な一枚板なんてきたひにゃ、とてもここで値段を言えないくらいですわ。
ところで、話は変わるんですがね、おいらは「変な板前」呼ばわりされてました。
なんでかっていいますと、博打を打たないからですわ。
なんでバクチしなきゃ変なんでぃばかやろめぃって思ってましたが、怖い先輩板前にそんな事言えるわきゃありませんな、とてもじゃねぇ。
そんくらい板前ってのはバクチ好き。
おいらは何十年もこの業界を見てきましたが、厨房もしくは休憩場に競馬新聞が無かったって経験がありませんや。
そしてね、それで身を持ち崩した板前を、嫌になるくらい知ってます。
せっかく苦労して出した店や、親の代からの店をバクチの借金で押さえられる者、女房に逃げられる者、そこらで金を借りまくり、職場に居られなくなる者。
あざやかな包丁さばきで、おいらが昔憧れてたある板前なんか、●●川でホームレスです。どれだけ腕が良かった事か・・・・
五年ほど前に、その人のとこに酒を差し入れた事がありました。
「俺の人生だ、これでいいんだよ」
そんなセリフを吐いてましたが、冗談じゃねぇってんだ。
女房子供の事を想ぁねぇワケが無ぇでしょうに。
でも思ったんですよ、
「この人、もし復帰出来ても、いずれまた博打やるな」って。
ここまで落ちる人だから、あそこまでバクチに熱くなるんですよ。
この人の長所だったものが、逆にアダになって人生を棒に振っちまった。
おいらはそう感じました。人ってなぁ哀しいですね。
甘ダイやマナがつお等の西京焼きを、真菜バシではさんで盛り込む瞬間とかに、ふっと想うんです。
細く固く鋭く冷たい金属のハシで、崩れやすい魚の身を上手につかむのはむずかしい、慎重にそしてある意味では大胆にハシを使わないと、魚の身が壊れちまう。
人生も同じ事です。
上手につかまなきゃ、
「身を持ち崩し」ます