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板前と経営、時代の変化

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板前の独立

どこぞの小料理屋でのこと。
カウンターに腰掛て、女将が菜切り庖丁で野菜を切っているところなんぞをボンヤリと眺めておりましたところ、5名ほどの元気のいい若い連中が入ってきてテーブルに陣取りました。

乾杯が終わるやいなや、たちまち仕事の話に夢中。
中の一人が「店をあがる」という事らしく、どうやらどこかの板前連中。

大声で色々と面白い話をしております。
まぁ普通の勤め人と同じですわな。上司の悪口とかそんなもん。
可愛いもんですよ。

おいらの耳がロバになるのは売上とか客単価に関する話題の部分。
この都市で店を営業してるもんにとって、客単価を言うのは店名を名乗るのに近いものがあります。

店の名前は出てきてないけれど、連中の話を5分も聞いていたら、どこの店か見当つきました。

「7~8千円だね」「うちは2万円くらいかな」って聞えてくれば、「ああ○○の●●さん所かな」って感じでなんとなく分かるんですよ。

鮨を売る店、和食を売る店、その数は多いが客単を聞けば絞り込める程度の多さといっても構わないでしょう。

もちろんレストランやら食堂やら居酒屋などを含めるとさすがに分からなくなります。あくまでも和の専門店に限定した話ですけどね。

板前同士が他店の噂をする時は、忙しくてやりがいのある店か、とか、給料はどうだとか、親方はどんな人間かとか、あるいはどうにもならないロクデモナイ店だとか、まあその辺が話題になるもんですけども、板前としてではなく、経営者として気になるのはやはり売上と客単価です。簡単に言えば「台所事情」ですな、よそ様の。

独立

板前ってのは独立してナンボ。
この世界に入った者は誰でも1度は必ず店を構える事を考えます。
日本の真ん中であればなおの事この地で一旗挙げたくもなります。

だがこの地であればこそ料理人を阻む壁も高い。
極めて稀な「物件が自己所有」という幸運な例外を除いて、普通はメンタマが飛び出る保証金と、月々の重い家賃を背負うという現実。

他の所ならこの保証金だけで内装費と当面の運営資金を賄ってお釣が出るってもんです。さらに魚介をメインに高騰するばかりの原材料費。なんでもかんでも「東京なら高値で当たり前」って事でしょうかね。

数千万の金を板前にポンと貸してくれる世の中じゃありません。
コツコツ貯金したところで頭金にもならんでしょう。

金持ちのボンしか果たせぬ夢なのか。
しかし、現実にはこれらの難題をクリアして店を構えている板前が沢山いるんですよ。名の通った銀座の親方衆でさえ最初は金の無い雇われ板から出発した人が大半。

東京で店を軌道に乗せる方法は一つしかありません。
「その地域のニーズにあった店を作る」です。

自分のやりたい店、つまり「自分のニーズ」ではありません。
あくまでもその地域。一から十まで立地なんです。

では「自分のやりたいスタイルの店」を開けないのか?
そんな事はありません、そのスタイルに合った地域に行って店を開けばいいだけです。

しかし時代の潮目は深刻な淵を見せています。
なにしろ銀座ですら「安売り店」に押される始末。

世界はこれから緊縮財政に向かわざるを得ない状況で、絶好調の中国やブラジル、インドといった国ですらやがてこの流れに追随するかも知れませんね。なんせ世界の経済は密接に繋がっておりますし、底の無いウツワなど存在しないからです。

当然ながら日本も出費を減らし増税する運命から逃れるのは不可能。外国人を受け入れる事が出来ない国民性から考えて、活性化による税の増収は期待できないし、このままのペースではいつか必ず財政は破綻します。

増税と歳出削減は避けられない訳ですが、この課題を難しくしてるのはズバリ行政改革でしょうな。順序として公務員の大幅削減や賃金カットから入らねば緊縮財政もへったくれもないんですが、それがこの国では果てしなく難しい。

政府が「行政改革」を言い始めてもう何十年経過したんでしょうか。まるで絵に描いた餅。改革など幻の絵空事ですな。この国の政治家は本気で行政改革に取り組む気持ちがない。

期待の新政権は歳出を最大規模にし、一律支給の子供手当というセンス。なぜ少子化が止まらないのかその根本的な原因に触れる気はなし。

一方で現実は動かない。
財政はまったなし。まず取りやすいとこから税金を取るしかない。それが煙草の値上げだし、これはれいによって消費税値上げの前触れでしょう。「国民の健康を考えて」とはいかにも苦しいセリフです。次は消費税。

しかしね、こんな小手先のその場しのぎで好景気になるのを待っていても無駄ってもんですよ。行政を徹底して改革しなきゃ財政改革などできっこない。だが反対に徹底して「抵抗」されるでしょうな。国が潰れる寸前まで。

これらの事から考えて、人々の財布の紐は当分の間ゆるまないと思います。昔のように支払いの心配などせず飲食店で飲み食いするお客は減少するのみで増加することはない。

結果的に「何か特別な理由」がなきゃ、料理屋でそれ相当の金を使う気になれないという傾向が強まっていくでしょう。

意味するところは板前を待ち受ける棘の道。
路頭に迷う料理人が今よりもさらに増える事になります。

経営者が考えるべき事は「何か特別な理由」の具現化。
どんな方法で自分の店をそう持っていくのか。

時代は本格的に変化しようとしています。
これまでの考え方、セオリーがまったく通じない世の中へ向かって。

逆転の発想として、だからこそあえて昔ながらで変化しないというやり方もあるでしょうし、世が本格的な緊縮になろうと、今頃から安売りに参戦しても意味はないって考え方もありでしょう。

はっきりしてるのは、店を経営する人間が「何も考えない」ですむ世の中は確実に終わるだろうって事ですね。

おいら自身はと言いますと、考えは一貫しています。

「時代の変化と無縁の場所にいたい」

それを最後まで貫けたらそれで満足です。
これも一種のワガママになりましょうね。

ですが、我儘を通せぬなら苦労して板前になった意味がないと思うんです。

自分は50代半ばのネットビジネスやっているものです。
確かに、本質とか目的や将来が見えなくなった嫌な時代になりました。
政治が悪いから、一般庶民にも夢の無い暗闇が続くので、昨今の変な事件が多発するのでしょうね。

自分自身は変わって行く(成長と言う意味で)は重要だとは思いますが、成長の無い他責の要因で変わらざらないことは相当悔しい事だと思います。
その人の生活観や経済力にも左右されることですが、自分の道を貫くと言う姿勢を見せると言うことが先人としての役割ではないかと思います。

偉そうに言っても、魚山人さんのような筋が通った生き方はできないかもしれませんが、自分なりに拘って生きて行きたいと思いました。

Posted by mika at 2010年10月24日 19:20


こんばんは、 mika さん。

簡単、便利さを追い求めて来た我々の社会、その結果として「生きる事そのもの」は非常に難しくなるという結果になってる気がします。

もっと言えば「生きる事の意味」でしょうかね。
今の人達はモチベを保つのが難しいのではないでしょうか。

人間性が希釈化してしまったからでしょうな。


今は筋の通し方も単純ではありません。
もはや「一本気」で渡れる世の中じゃない。
「浮いて」しまって毎日を普通に生きられません。

人々は複雑になりすぎてます。
その複雑怪奇さに単純な人間は飲み込まれてしまう。
あるいは土足で踏まれちまう。

そんなもんとは距離を取るしか術がありません。
もしくはその複雑さを勉強し、自分のものにする。
飲まれたり、迷ったりしない為にです。


飄々と生きる。
それがおいらの望みです。

Posted by 魚山人 at 2010年10月25日 00:56


お疲れ様です。

親方ゎ常連様や商売の『いろは』を問いに来た若い奴らにゃ
『こいつにも当然独立してもらう』←と言うが
資金面ゎどうすんすか?
(笑)無理。

でもな
夢ゎ持ってネェと モチベが続かないのが事実。
朝から晩まで拘束長いのがこの仕事。

俺も多少なり交通事故的期待ゎしてるが そんなモンあっちゃならネェのが世の中。

いつぞや女将サンにね
『鯔チャンが継いでね!この店』←なんて言われたが
二つ返事で『嫌だ』って即答した。

継ぐんなら親父(父親)の店を継ぐ気で修業に入るってのよ! 俺ゎ父親から『この店ゎ俺のモン ぉ前ゎぉ前の道を勝手にしろ!』って言われた身。

晴れて自由な身さ!


#3と#4の包丁
爺の思惑通りかな?

有り難いよネェ
こんな時代にさ
立派な包丁ジャネェか!

俺が あえて錆浮かした包丁画像を送信しようか悩むぜ(笑)

板前ゎ独立して初めて一人前。

俺ゎ半人前の身に 子らが三人なんちゅう輩。

政治を批難する前に生活維持すんのが役目!


この記事 恩に着る。

Posted by 鯔次郎 at 2010年10月25日 01:51


お疲れ様、鯔さん。

この記事をどう読むかだろうね。
「世の中ますますパッとしねぇ。こりゃ無理だ」
そう思うか、
「まてよ、こりゃ逆に俺達ゼニの無い者にとってはチャンスの時代じゃないか」
そう気付くかだ。

クソバブルの様な時代を好景気と考え、あの再来を望むのか。
理屈に合わなねぇ馬鹿な土地高騰がなくなり、地代が安定した今の時代こそ時機到来と考え腰をそえるか。

どちらにしろ最後は本人のセンス次第だろうね。


それはそうと鯔さんの父上と一度酒を酌み交わしたかったねぇ。
いいお父さんじゃねぇか。
父上から頂戴した庖丁も結構あるはずだ、そいつを投稿しておくれ。

Posted by 魚山人 at 2010年10月25日 13:28


お疲れ様です。

[この記事 恩に着る。]
と前回コメントの最後に記させて貰った。
爺の本記事スタンスゎいつもそうなんだが 風潮みてぇなモンゎばっさりヤッて 含みゎ愛情ある記事を書く。
俺にも そろそろ やりたい型みたいなモンが 頭ん中にちらほら具現化してきた。

決してバブリーなモンでゎなくむしろ江戸前仕事としちゃジレッたくなるくれぇの店かな…
そりゃ当然 糞セワシネェ日々を毎日送るのが理想だけどね

とか言う話とゎ別に
先日 今回世話になった包丁屋サンを捕まえ長電話。
俺のワガママもいい加減にしろっッテな感じなんだが 先方ゎ景気の話しを切り出してきた。 包丁屋サンいわく
『今までに無かった信じられない現象が起きてます。 京都の老舗が板前をキリ出しまして…』

大阪ゎ言うに違わず不景気の煽りをモロに。何となく理解すんが まさか京都の老舗がリストラ…

独身者なんかゎ海外進出までする輩が結構いるらしい
この包丁屋サンとゎ友達になりてぇ位親切な方。いつか長男坊つれて会社見学を日帰りでしてみようかとすら思わせる。


爺の本記事や返事コメを
『うっぜぇジジイだな』
なんて感じる輩ゎ悪いこと言わネェから転職したほうが身のタメだな。どの道切られっからよ。
そんな時代に入ったね。


爺。俺の親父な
爺と酒酌み交わすことなくて正解だぜ(笑)
おそらく『朝までコース』だろうから(笑)
でも ありがとうございます。親父も さぞや喜んでんべよ。俺の脳裏に親父が帰って来た(笑)

残念なんだが親父の包丁を投稿できませんm(__)m
何故か…
オフクロが今だ現役で テメェの喰い分程度の商いを致しております。その指先にゎ親父の超鷲っ鼻筋引き。
俺に譲られたんならともかく 親父の包丁ゎ現役。
そんなモンを投稿する訳にゎいきませんのでm(__)m

【阪骨包丁】への爺コメ。
やっぱワガママ言って正解だ!爺の補足コメで『ふくらみ』が増した!ありがとうございました!
俺んこと褒め過ぎだけどな(笑)

俺な
爺みてぇに一日を36時間にしてた方にゎ憧れるんスが
俺ゎとにかく『半歩』でいいから粘りながら核心を待つ生き方も『あり』と考えるタイプなの。だから爺blogゎ衝撃だったし 爺の生き方ゎまさに衝撃的!
だから爺blogにゃ懲りずにコメできんだよ!
俺に一本筋があるんジャネェのよ 爺の懐が深いから俺ゎ甘えてるだけッス。

今後もヨロシクです。

Posted by 鯔次郎 at 2010年10月27日 01:59


お疲れ様です


飄々と生きる…
読者さんに魚山人さんがお返事された言葉 このブログを通して 自分勝手ではありますが 魚山人さんの生き方の芯であると以前から感じていました。

複雑なのは モノや社会だけではなく、それを作り出している人間そのものだと。目を背け自分だけは 腐っても鯛でいたい しかし向き合わなければ生きていけないのも事実です その葛藤のやりどころがまた切ないのですが 飄々と生きる 複雑ならば勉強して自分の立ち位置を睨むためにもすべてを飲み込み、何度でも前を向く。とても糧になる言葉です(^O^)

きっと魚山人さんの料理や経営以外にもお客さんを惹き付けているものがあるんだと思います 日本の真ん中で長くお客さんに愛される店。老舗なんだと。
自分は来年の夏に店をあがりますが、 この地域は空き店舗が不景気の煽りでけっこう有りました。地域活性化ということで市や町が、個人が独立する際に援助やサポートをする制度があります この流れで一時期は若い世代の人もちゃんとしたビジョンがあれば審査次第で独立を果たす者もけっこういました。日本料理 蕎麦屋、フレンチ イタリアン ビストロ 洋食 寿司屋 ラーメン屋 焼肉屋 居酒屋 飲み屋 バー すべてが先に書いた支援を受けたわけではありませんが二年前はかなり新店舗が目立ちました しかし今は当時の三割しか残っていません 残りの七割は空き物件になりチラホラまた新しい店が… そんな状況ですね

街場の魅力も解りますし 日本料理の単価が他の飲食店とは違うのもわかりますが この街場のニーズには 日本料理は厳しいと言わざるをえません。 蕎麦屋や焼肉屋 フランチャイズの居酒屋 一部のビストロ この変はなんとかやっているという感じです

お任せ一本 一万円コース その日のアラカルト 酒は豊富で立地も接客も主人の性格も悪くない しかし 1年持たない店が多々ありました。 この地域で 色々経験してきましたが やる前から諦めたらそこで終わり ならば自分がお客さんに合わせる その中で 自分の我が儘も織り込む 初めから背伸びして店やっても 苦しくなりますし 伸びしろの期待も込めて 八分目からのスタートがいいのかなと思っています
やはり他店との段取りの違いとお客さんを差別しない入りやすい和食であって 仕事は妥協せず 手間隙はお代に乗せず 原価率は五十% ここが今ギリギリ考えれる事です そして街場ではやらない方向ですね いまある蓄えと借り入れで街場で遣りたい気持ちも強かったですが 独立すと言うことは 引退するまでお客様に尽くす事 腰を据えてこれからのお客様の事を考えると自然がある所で人間が安らぐことができる場所から始めようと…
そうなれば店舗付き住宅も視野に入ってきますし古民家も手入れ次第ではいいかと。 何ヵ所か土地や物件を観てきましたがガットフィーリングが納得しません(笑)

一世一代の買い物したくても、お金の問題もありますし まだまだ色んな可能性もあるのでしょうから 慌てず コツコツ行くだけです

しかしこの地域は鰻屋だけは化け物なみの売り上げを持ってるとこがあります。 知り合いに聞きましたところ不景気で多少は落ちてきたけど ネットも絡めていて 社員にも還元しているそうです
人は集まるこの地域 自分の考えでは なんとか食べてく位はできると。雇用も厳しいみたいですし 生きてくために独立する 儲け儲けに走るとスベル そこの温度差だと思います 自分のスタートラインは。

良い記事を読ませて頂きました 勉強になりましたm(__)m

Posted by たいら at 2010年10月27日 06:40


鯔さん。

あそこは堺でも特に板前の立場に立って庖丁を作ってくれる庖丁屋。
近くにあるユニバサールスタジオ行くよりも子供の記憶に残るってもんだ(^^)

Posted by 魚山人 at 2010年10月27日 15:10


お疲れ様、たいらさん。

日本の行楽地は昔繁栄を極めた時期もあったが、その事が逆に今の人々にとってはマイナスイメージとなり、この20年というもの寂れる一方です。

「あの時の夢をもう1度」
そんな考えで今度は景気の良い中国人団体さんを引っ張ろうと必死の様子ですがね、こりゃ民主党が(自民も同じ)今やってる馬鹿な政策と同じ発想と言わざるをえない。

時代が読めぬにも程がある。

もう「イケイケドンドン」の時代は終わっていると気付くべき。
どんなカリスマが歌を発表しても数百万枚売れる時代じゃないってことで、それはウタダやアユでもう終わってる。今後は無い。
多様化して希釈になった日本人を群で引き寄せる方法はないんです。
時代は逆行しない。

むしろこちらの方が正常だと思うし、こういう時代だからこそ「本当の仕事」が光るんですよ。「群」など求めねばよい。


たいらさんの所は行楽地という環境だけでなく他の要素がある。
そこらへんを考慮しながらじっくりと案を練っている最中だと思います。
ともかく楽しみですよ、あなたの店は(^_^)

Posted by 魚山人 at 2010年10月27日 15:10

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