煮物のコツ

  

和食の煮物

煮物作り方のコツ

煮物は、加熱させた煮汁の対流で材料を美味しく変化させる料理。素材の選び方と煮る方法の判断、食材によって異なる下ごしらえ、調味のタイミング、仕上げのタイミング、どこをとっても「料理カン」が必要な仕事であり、そのカンを養う長い経験が不可欠です。したがって煮物を作る板前は「煮方」といって、調理長に次ぐベテランが担当します。

1)材料の準備

堅いものは下煮、アクのあるものはアク抜き、葉野菜はあおって色出しと色止め、魚介類は振り塩や霜降り、肉類は血抜きや筋切り、その他様々な方法で【煮る前にひと手間かける事】が煮物の成否を分けます。

【だし】も昆布とかつお節削りを使って、しっかりと引いておきます。惣菜向けの煮物は二番や簡易だし(あるていど時間をかけて煮出したもの)が向いているケースが多くなります。

2)道具立て

作る煮物の量によって鍋を選び、落し蓋、紙蓋などを決める。鍋は大き過ぎず、小さ過ぎず、材料が重ならないサイズが基本。

3)煮物のアタリ(調味)

調味料の順番は「さ、し、す、せ、そ」と云われます。
「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」ですね。

これは調味料の分子量の大小から材料への浸透度合いを考えた場合、正しいと思います。ただし、材料の芯まで味を含ませたい根菜類の煮物などに向いた調味方であり、味を短時間で絡ませたい煮魚などには向きません。含ませる場合でも、いっぺんに砂糖を加えてしまうと他の味が浸透しませんので、調味料は数回に分けて徐々に加えるのが効果的です。 材料の鮮度や持ち味によって濃さを微調整しましょう。

4)煮物の火加減

通常の場合、煮汁が煮立つまでは強火、沸騰したら火を弱くして、コトコトと表面が泡立つ加減を保ちます。淡泊な材料は短時間でサッと煮上げ、クセのあるものは少し時間をかけます(たとえばサバの味噌煮など)

一般的な煮物の加熱時間

葉野菜=1~5分
煮魚=10分程度
芋類=15分~20分
根菜=20~30分
穀物=20分~
豆類=1時間~

煮物の種類

和食の煮物を完全に分類するのは不可能に近いものがあります。手法別、調味別に分けたとしても、どちらの側にも属する重複した料理が非常に多くて、明確な線を引ける煮物はほんの僅かです。

煮る方法がかぶってしまい、カテゴリーが曖昧をこえて錯綜し、「何の料理である」と断言できないものすら御座います。

また、和食は煮物と汁物の区別がつきにくい場合もあります。
椀物とは

しかし、それではあまりに曖昧模糊として全体像がつかめません。なので思いきって3系統に分けることにしました。

どの系統に加えればいいのか微妙な煮物もございますが、「目的は何か」によって多少強引に仕分けました。矛盾点はありますが、手法よりも「素材をどう煮上げたいのか」で区別しています。

※以下の区分の仕方はあくまでも「魚山人の判断」ですので、そこをお間違いのなきように願いします。

「煮びたし」とは大量の薄味の汁で主に川魚を煮る手法。野菜の場合は「浸し」の手法で色を残すやり方をします。ここでは「素材の色を出す煮物」を煮浸し系とします。

含め煮とは、たっぷりの煮汁(うす味)にて時間をかけて味を含ませる煮方。 ここでは「材料の持ち味を引き出す煮方」を含め煮系と致します。

ごった煮

沢煮やけんちん煮の様に、雑多な材料を1つの鍋で煮る煮物。別鍋仕立ての炊き合わせや吹き寄せが料理屋向けであるのに対し、家庭向けの煮方です。

直煮(直炊き)

下茹でなしで直接煮汁で材料を煮る。
アクの出ない野菜などに限ります。

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